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皆さんお久しぶりです。最後の投稿から1年近く経とうとしています。
その後いろいろありましたが、前回お伝えしたように今フランスに在んでおります。
パリではありませんが、フランスのわりと大きな都市です。
新しい土地で生活と仕事を始めるのはいつも大変ですが、ようやく慣れてきたところです。
そろそろブログを再開しようかとか、リニューアルしようかとか考え始めたところです。
しかしご存じのように、ヨーロッパで予想を超える速さで新型コロナウイルスの感染が広がっています。
今回はいまフランスで何がおこっているかを、これまでの経過も含めてお伝えしたいと思います。
主観的な印象も入っていますが、それもリアルな情報として受け取って頂けたら幸いです。
いつものような写真や図表などは用意する時間がありませんので今回は文字がメインとなります。
フランスで最初の感染者が確認されたのは今年の1月27日です。
武漢に滞在歴のある中国系フランス人が3人発症したのです。
解熱剤を飲んで熱を下げた状態でフランスに入国したらしく、「時限爆弾だ」と批判されます。
今年の春節(中国の旧正月)は1月25日でしたので、その直後のタイミングです。
その他の武漢からの帰国者200人近くは南仏の地中海に面したリゾート地の保養施設に隔離されます。
僕はこのころ電車で見知らぬ男性からいきなり「中国人か!」と怒鳴られる恐怖体験をしました。
「日本人だ」と答えたら彼の怒りは収まりました。当時はまだ日本での感染者はわずかでした。
しかしフランス人の東洋人に対する偏見や差別感情はその後も悪化します。
2月中旬にはパリの日本食レストランにスプレーで「コロナウイルス出て行け」と落書きがされます。
僕自身はその後は怖い思いはせず、仕事でも私生活でも普通に人付き合いを続けることができました。
それでも感染者数は2月中旬までは十数人しか確認されていませんでした。
検査数が日本と同じように制限されていたからです。
しかしイタリアでの感染拡大を受け、2月下旬に検査数が大幅に拡大されます。
そして感染者数は、2月26日には18人、27日には38人、28日に58人、29日に100人と激増します。
この頃フランス政府は感染が第1期(国内発生早期)から第2期(感染拡大期)に移ったと判断します。
2月27日にフィリップ首相は全与野党の党首などを首相官邸に集め、挙国一致で事に当たる合意を得ます。
感染者数はその後も増え続け、3月6日に613人と、初めて500人を超えます。
この日フィリップ首相は、もはや第3期(蔓延期)に入るのは避けがたいと表明します。
2日後の3月8日、患者数は1126人となり、1000人の大台を突破します。
3月12日夜、マクロン大統領がテレビ演説を行い、16日からすべての学校を休校させると発表します。
休校措置は感染の拡大を抑えるためと明言し、感染拡大を遅らせて時間をかせごうと呼びかけます。
できるだけ在宅勤務を行い、また特に高齢者などリスクが高い人は外出を控えるようにとも要請します。
公共交通機関は止めませんが、できるだけ使用は控えてほしいとも呼びかけます。
数週間や数か月の間に国境を封鎖する可能性も示唆されます。
挨拶の握手やビズ(チークキス)はやめようという呼びかけもあったのはいかにもフランスらしいです。
翌日金曜の13日の職場は、月曜以降どうするかの話題でもちきりになります。
【動画】「Coronavirus Pandemic: French president Emmanuel Macron makes televised address(コロナウイルスのパンデミック:フランス大統領エマニュエル・マクロンがテレビ演説)」(英語同時通訳付き)、by FRANCE 24 English、YouTube、2020/03/12
3月14日、フィリップ首相は薬局・食料品店など以外のすべての店舗を休業させると発表します。
3月15日、休業措置が発効します。警官隊が街を巡回し、開いている店がないかをチェックします。
日曜は普段でも多くのお店が休むのですが、レストランが一店も開いていない風景は異様な雰囲気です。
人通りは激減し、普段は多くの人でにぎわう繁華街が別世界のように静まりかえります。
公共交通機関は動いています。ガラガラとは言えない程度には人が乗っています。
これまでにイタリアやスペイン、ドイツは国境を封鎖して人の行き来を制限しています。
フランスはまだそこまでしていませんが、時間の問題なのではないかと思われます。
また香港やアメリカなどはフランスからの入国を制限しています。
一方で中国やイタリア、韓国などからフランスへ帰国した児童・生徒の14日間の隔離は解除されます。
感染が蔓延したため隔離する意味がなくなったと判断されたのです。
(武漢がある湖北省からの帰国者・再入国者には引き続き実施されているようです。)
人々は意外に冷静さを保っています。
スーパーなどの食料品店は普通に開いており、マーケットの露店もいつも通り営業してます。
食料やトイレットペーパーの買い占めなどはほとんど起きていません。
消毒用のアルコールのスプレーやジェルが品切れになっている程度です。
ただパリでは買い占め騒動がおきてスーパーの棚が空になったという報道もあったようです。
(現地のテレビニュースではパニックを悪化させないためか、まったくこのような報道はされません。)
マスクは売っていません。買い占めではなく、政府がすべて管理下に置く体制に切り替わったためです。
医療関係者と感染患者に配られ、ほかの病気で必要な人は医師の診断書を元に薬局で買うことになります。
街なかでマスクをしている人はほとんどまったく見かけませんでした。
感染予防にマスクは効果がないという認識が浸透しているからです。
ただマクロン大統領の演説以降、「たまに見かける」程度にはマスク着用の人は増えています。
フランスの様子はこんなところです。お店は閉まって不便ですが、わりと平静というのが正直な印象です。
今日から会社がすべて休みになるわけではありませんが、僕は在宅勤務にして様子を見ようと思います。
今のところですが、日用品の買い占めがほとんどないのはありがたいです。
フランスの人は楽観的なのでしょうか。それとも政府をそれだけ信用しているのでしょうか。
少なくともここまで状況が悪化しても今のところパニックにはなっていない強さがあるのは確かです。
それでもこれだけ患者数が増え続け、隣国が次々に国境を封鎖しているのは正直怖いです。
しかし怖がるだけでは解決になりません。冷静に情報を収集して状況に応じて判断していこうと思います。
3月16日朝現在、フランス国内の感染者数は5423人、死亡者数は127人に達しました。
日本もいろいろと大変な状況であることをお聞きしています。
お互い気をつけましょう。でも深刻にならず、日々を楽しみながらこの危機を乗り切りましょう。
【追記】(2020年3月18日)
3月16日、マクロン大統領は「戦争状態」を宣言し、3月17日正午からの外出禁止令を出します。
食料品や薬品の購入、通院、在宅勤務できない仕事などを除き、外出を罰則付きで禁止したのです。
外出時には氏名・住所などと外出目的を書いた署名付きの書類を持参する必要があります。
これにより多くの会社が在宅勤務を始めます。日本人の中には会社命令で緊急帰国した人もいます。
街は人通りがなくなり、ゴーストタウンです。公共交通機関も今はガラガラの状態です。
商店では一時的にトイレットペーパーやパスタが売り切れましたが、今は品薄ながらも手に入ります。
いまフランスは、いや欧米は僕たちが近年経験したことがないパンデミックの真っただ中にあります。
3月18日夜現在、フランス国内の感染者数は9,043人、死亡者数は148人に達しました。
外出禁止令は4月1日まで続きます。その時には状況が改善して禁止令が解除されることを祈ります。
【追記】(2020年5月10日)
その後、フランスではその後ロックダウン(外出制限措置)は2度延長されました。
そして今日、5月10日が最終日です。明日5月11日から外出禁止令は解除されます。
しかしレストランやバー、ナイトクラブは相変わらず営業できません。
公共交通機関ではマスク着用が義務化されます。違反者には罰金が課せられます。
テレワークは引き続き推奨されており、少なくとも5月いっぱいはテレワーク継続が求められています。
僕はテレワークを続ける予定です。
一時はどうなることかと思いましたが、感染はようやくピークアウトし、希望が見えてきました。
5月10日夜現在、フランス国内の感染者数は176,970人、死亡者数は26,380人に達しました。
日本へはいつ帰れるようになるかはまだまったくわかりませんが、しばらくはフランスでがんばります。
皆さんもどうぞお気をつけてお過ごし下さい。一緒にがんばりましょう!
それでは今日はこのへんで。
またお会いしましょう! ジム佐伯でした。
【関連記事】第256回:“Keep calm and carry on.”―「冷静に続けよう」(イギリス政府)、ジム佐伯のEnglish Maxims、2015年11月08日
【参考】「COVID-19 Global Cases provided by Johns Hopkins University, CSSE https://systems.jhu.edu/(COVID-19の世界の感染状況 - 米国ジョンズ・ホプキンス大学による)」
【参考】「Infection au nouveau Coronavirus (SARS-CoV-2), COVID-19, France et Monde(新型コロナウイルスCOVID-19(SARS-CoV-2)の感染状況、フランスおよび世界)」、Santé Publique France
【参考】「これが「フランス流」、隔離先は海辺の保養施設 武漢から帰国の179人」、(c)AFP/Sébastien RICCI、発信地:カリールルエ/フランス、AFP BB News、2020年2月2日 10:35
【参考】「「コロナウイルス、出て行け」。パリ近郊の日本食レストランに差別的な落書き。現地に住む人「外出取りやめている」」、ハフポスト日本版編集部、The Huffington Post Japan、2020年02月19日 13時24分 JST
【参考】「新型コロナウイルス感染拡大にも慌てないフランスの手腕」、by 広岡裕児(在仏ジャーナリスト)、Newsweek日本版、2020年3月9日(月)13時21分
【参考】「フランス大統領、欧州の団結呼び掛け 国境封鎖も視野―新型コロナ」、パリ時事、時事ドットコムニュース、2020年03月13日15時40分
【参考】「フランス、生活必需品以外の全店休業 スペインは非常事態宣言―新型コロナ」、パリ時事、時事ドットコムニュース、2020年03月15日23時11分
【動画】「Coronavirus Pandemic: French president Emmanuel Macron makes televised address(コロナウイルスのパンデミック:フランス大統領エマニュエル・マクロンがテレビ演説)」(英語同時通訳付き)、by FRANCE 24 English、YouTube、2020/03/12
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