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2018年08月28日

第512回:“My infant cereal has a tremendous future.” ―「私のベビーフードにはとてつもない未来がある」(アンリ・ネスレ)

こんにちは! ジム佐伯です。
英語の名言・格言やちょっといい言葉、日常会話でよく使う表現などをご紹介しています。

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Image Copyright by Oksana Kuzmina, Used under license from Links Co., Ltd.

第512回の今日はこの言葉です。
“My infant cereal has a tremendous future.”

「私の幼児用シリアルは途方もなく大きな未来をもっている」
「私のベビーフードにはとてつもない未来がある」
という意味です。
これはドイツ出身の実業家アンリ・ネスレ(Henri Nestlé, 1814-1890)の言葉です。世界最大の食品飲料会社ネスレ(Nestlé)を創業した人物です。
この言葉には続きがあります。
“My infant cereal has a tremendous future because there is no food to compare with it.”
「私の幼児用シリアルにはとてもない未来がある。ほかに比較する食べ物がないからね」
自分の商品に対する強い自信が感じられる言葉ですね。

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アンリ・ネスレ
Photo by Unknown [Public domain], via Wikimedia Commons

アンリ・ネスレは1814年にドイツ中部の大都市フランクフルト・アム・マイン(Frankfurt am Main)に生まれます。ドイツ風にハインリッヒ と名づけられ、苗字もドイツではネストレと読まれますので、生まれた時の名前はハインリッヒ・ネストレ(Heinrich Nestle)でした。父親のヨハン・ウルリッヒ・マティアス・ネストレ(Johann Ulrich Matthias Nestle)はガラス職人をしていました。
ハインリッヒは17歳の頃から薬局で4年間の見習い修行を行い、その後スイスに移住してレマン湖(Lac Léman)の湖畔の街ローザンヌ(Lausanne)で薬品の処方と販売、化学実験の資格を取得します。25歳の頃のことです。同じレマン湖畔のヴヴェイ(Vevey)という町に引っ越したハインリッヒは、フランス語圏の環境になじむために名前をフランス風のアンリ・ネスレ(Henri Nestlé)に変更します。

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ヴヴェイの町並み
Norbert Aepli, Switzerland [GFDL or CC BY 3.0], from Wikimedia Commons

アンリ・ネスレは29歳の頃にセイヨウアブラナ(rapeseeds)の生産を始めます。菜の花に似た植物でキャノーラ油(canola oil)が採れることで知られています。キャノーラ油、美味しくて健康にもいいですよね。僕もオリーブ油と共に愛用しています。当時のスイスでは最も発展的で多用途な地場産業の一つでした。
ネスレはほかにもナッツオイルや各種の蒸留酒や酢などの生産を手がけたり、炭酸入りミネラルウォーターやレモネードの製造と販売を行ったりしますが、食糧危機などの影響でミネラルウォーターの事業をあきらめます。1957年にネスレはガス灯や肥料の事業に専念するようになります。
そして1960年、ネスレは故郷のフランクフルトでアナ・クレモンティーヌ・テレーズ・エーマン(Anna Clémentine Thérèse Ehemant)と結婚します。45歳の時のことです。

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セイヨウアブラナ
By Robinmkhan 1911 [CC BY-SA 4.0], from Wikimedia Commons

その後、ネスレは粉ミルクの開発に取り組みます。ネスレ夫妻に子供はいませんでしたが、当時は乳児死亡率が高く、一方で都市部で新鮮な牛乳は必ずしもいつも手に入るわけではありませんでした。ネスレは牛乳と穀物と砂糖を使って母乳の代用品を開発し、風味を損なう酸や、幼児が消化できないスターチなどを原材料の小麦粉から取り除きます。作り方は飲ませる前に水に溶いて煮込むだけという簡単なものです。最初ドイツ語で「キンダーメール(Kindermehl)」(子供の小麦粉)と名づけられたこの粉ミルクはたちまち人気となり、フランス語で「ファリン・ラクテ・アンリ・ネスレ(Farine Lactée Henri Nestlé)」(アンリ・ネスレの小麦粉ミルク)と名づけられてヨーロッパ中で売り出されます。1870年代までには、麦芽と牛乳と砂糖と小麦粉で作られた「ネスレズ・インファント・フード(Nestle's Infant Food)」(ネスレのベビーフード)がアメリカで1瓶50セントで発売されます。

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ネスレのベビーフードの広告ポスター(1897年)
デザイン:アルフォンス・ミュシャ
Alphonse Mucha [Public domain], via Wikimedia Commons

ちょうどこの頃、同じヴヴェイに住んでいたダニエル・ペーター(Daniel Peter)がチョコレートに牛乳を加えてまろやかさを出したミルクチョコレートの開発に取り組みます。ペーターはミルクチョコレートにカビが生えないように牛乳から水分を取り除く方法の考案に苦心しますが、友人だったネスレが開発したミルク濃縮技術の提供を受けて1875年にミルクチョコレートの開発に成功します。1879年にネスレとペーターは事業を合併し、ネスレ社(Nestlé Company)は粉ミルクやベビーフードだけでなくチョコレートを中心としたヨーロッパ最大の製菓メーカーとしての第一歩を踏み出します。
ネスレは1875年に仕事仲間に会社を売却します。61歳の時です。そしてレマン湖畔のモントルー(Montreux)という街に家族と一緒に住み、引退生活に入ります。
そして1890年、ネスレは心筋梗塞で亡くなります。85歳の頃のことです。

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ネスレのロゴ(2009年撮影)
By Dornum72 [CC BY-SA 3.0], from Wikimedia Commons

ネスレ社はその後も成長を続け、今では世界的な食品コングロマリットとなっています。
世界189か国で合計2,000以上のブランドで食品を販売し、総売上は900億ドル(約9兆円)を超え、フォーチュン社(Fortune)がまとめる「フォーチュン・グローバル500(Fortune Global 500)」では2018年現在で世界69位につけています。あのボーイング(Boeing)マイクロソフト(Microsoft)、ドイツの電機大手シーメンス(Siemens)、フランスのスーパーマーケット大手カルフール(Carrefour)、中国のスマホ大手ファーウェイ(華為、Huawei)などと同じ売上規模です。
日本では以前は英語読みの「ネッスル」と呼ばれていましたが、1994年に日本法人の社名を「ネッスル日本」から、世界的に使用しているフランス語読みの社名を使って「ネスレ日本」に変更しました。

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ヴヴェイにあるネスレ本社(手前)
By Nestlé (Aerial shot of Nestlé HQ) [CC BY 2.0], via Wikimedia Commons

“My infant cereal has a tremendous future.”
私のベビーフードにはとてつもない未来がある。

世界で初めて実用的な新生児用の粉ミルクやベビーフードを開発したネスレ。彼の製品によって多くの幼い命が救われました。
現在ネスレが販売している商品ブランドには主に以下のようなものがあります。
ネスカフェ(Nescafé)(インスタントコーヒー)
ネスプレッソ(Nespresso)(カプセル式コーヒーと専用コーヒーメーカー)
クレマトップ(Krematop)(コーヒー用液体クリーム)
コーヒーメイト(Coffee-Mate)(コーヒー用液体クリーム)
ブライト(Brite)(コーヒー用粉末クリーム)
ミロ(Miro)(ココア味の粉末麦芽飲料)(英語圏では「マイロ」と呼ばれます)
フェレロ(Ferrero)(イタリア産チョコレート菓子)
キットカット(Kit Kat)(チョコレート菓子)
エアロ(Aero)(準チョコレート菓子)
ウォンカ(Wonka)(チョコレート)(映画『チャーリーとチョコレート工場(Charlie and the Chocolate Factory)』に登場する架空の板チョコを商品化したもの)
ハーゲンダッツ(Häagen-Dazs)(高級アイスクリーム)(北米でライセンス製造・販売)
ペリエ(Perrier)(フランス産の炭酸入りミネラルウォーター)
サンペレグリノ(S.Pellegrino)(イタリア産の炭酸入りミネラルウォーター)
ヴィッテル(Vittel)(フランス産の炭酸抜きミネラルウォーター)
バクストン(Buxton)(イギリス産の炭酸抜きミネラルウォーター)
ディアパーク(Deer Park)(アメリカ産の炭酸抜きミネラルウォーター)
ポーランドスプリング(Poland Spring)(アメリカ産の炭酸抜きミネラルウォーター)
ガーバー(Gerber)(ベビーフード)
ブイトーニ(Buitoni)(イタリア産パスタなど)
マギー(Maggi)(調味料、インスタントスープ、インスタントヌードルなど)
モンプチ(Mon Petit)(キャットフード)
フリスキーズ(Friskies)(キャットフード)
ネスレは食品会社なだけに、ブランドにもおなじみのものが多いですね。とても幅広い商品が扱われており、「これもネスレだったのか!」とびっくりしちゃいます。
ネスレの言葉は本当になったのです。


【動画】“Nestlé150 - History of Nestlé in 150 years(ネスレ150 - ネスレ150年の歴史)”, by Nestle Choose Wellness, YouTube, 2016/09/29

それでは今日はこのへんで。
またお会いしましょう! ジム佐伯でした。


【動画】“The History of Nestlé(ネスレの歴史)”, by MyKindaFuture, YouTube, 2014/03/24

【関連記事】第176回:“The waterfall is most important. Mixes the chocolate.” ―「重要なのがこの滝だ。チョコを混ぜるんだ」(チャーリーとチョコレート工場), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2014年02月09日
【関連記事】第175回:“Love Can't Wait.” ―「愛は待ちきれない」(ゴディバ), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2014年02月08日
【関連記事】第174回:“Caramels are only a fad. Chocolate is a permanent thing.”―「キャラメルは一時の流行。チョコレートは永遠だ」(ミルトン・ハーシー), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2014年02月06日
【関連記事】第423回:“The aim of art is to glorify beauty.” ―「芸術の目的は美を輝かせること」(アルフォンス・ミュシャ), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2017年04月19日

【参考】Wikipedia(日本語版英語版
【参考】“Nestlé (ネスレ公式サイト)”
【参考】“ネスレ日本(公式サイト)”
【参考】“Henri Nestlé(アンリ・ネスレ)”[PDF], Nestlé
【参考】“Fortune Global 500 List 2018 (フォーチュン・グローバル500 リスト 2018年)”, Fortune

【動画】“Nestlé150 - History of Nestlé in 150 years(ネスレ150 - ネスレ150年の歴史)”, by Nestle Choose Wellness, YouTube, 2016/09/29
【動画】“The History of Nestlé(ネスレの歴史)”, by MyKindaFuture, YouTube, 2014/03/24




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posted by ジム佐伯 at 07:00 | ロンドン | Comment(0) | 実業家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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