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2018年03月17日

第507回:“Koshu’s subtleties and delicacies are definitely unique.” ―「甲州葡萄の絶妙で繊細な美味しさは類がありません」(三澤彩奈)

こんにちは! ジム佐伯です。
英語の名言・格言やちょっといい言葉、日常会話でよく使う表現などをご紹介しています。



第507回の今日はこの言葉です。
“Koshu’s subtleties and delicacies are definitely unique.”

「甲州葡萄の絶妙で繊細な美味しさは類がありません」
という意味です。
これは日本のワイン醸造家、三澤彩奈さん(Ayana Misawa, 1980-)の言葉です。
父親が経営する中央葡萄酒株式会社の取締役栽培醸造部長で、同社のワインブランド「グレイスワイン(Grace Wine)」の醸造責任者や三澤農場の栽培責任者でもあります。



三澤彩奈

三澤彩奈は1980年に山梨県の勝沼町(Katsunuma)、今の甲州市(Koshu)に生まれます。父親は1923年(大正12年)から四代続いた中央葡萄酒株式会社のオーナーで、グレイスワインというブランドのワインを作っています。
山梨県はかつて甲斐武田氏の本拠地で、江戸期には甲斐一国が幕府直轄の天領となり、勝沼には甲州街道の宿場として勝沼宿がおかれます。幕末には新選組局長だった近藤勇(Isami Kondo)が率いる旧幕府方の甲陽鎮撫隊と土佐の板垣退助(Taisuke Itagaki)が率いる新政府の征東軍が激突し、新政府軍が圧勝した甲州勝沼の戦い(慶應4年、1868年)があった土地です。

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勝沼の風景(2015年撮影)
By Aw1805 (Own work) [CC BY-SA 4.0], via Wikimedia Commons

甲府盆地の東の縁にある勝沼は、水はけのよい扇状地が広がって日当たりがよく、気候は寒暖の差が激しくて雨が少なく日照時間が長いというブドウの栽培に適した土地で、江戸時代から日本土着の甲州種のブドウが部分的に栽培されていました。
明治期に入ってからは殖産興業政策によって果樹栽培やワイン醸造業が奨励され、最先端のワイン醸造の技術を習得するために高野正誠と土屋助次郎という2人の若者が伝習生としてフランスへ派遣されます。2年後に帰国した2人は甲州種のブドウを用いて本格的なワイン生産が初められます。
最初は醸造や貯蔵の技術に問題があって不良品が流通して醸造会社が解散したりしますが、その後も勝沼ではこの試みを引き継いで試行錯誤が繰り返され、ワイン醸造業が発展します。
今では勝沼には30社以上のワイン醸造会社があり、全国生産量のおよそ25%に相当するワインを生産しています。

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勝沼にあるワイナリーの樽熟成室(2017年撮影)
By 江戸村のとくぞう (Own work) [CC BY-SA 4.0], via Wikimedia Commons

三澤彩奈はそんな勝沼のワイナリーで、甲州葡萄を使ったワインづくりに人生を賭ける祖父と父を幼い頃から見て育ちます。
甲州(Koshu)は山梨県固有の白ブドウです。しかし三澤の祖父の代では、甲州は国際品種のメルロー(Merlot)シャルドネ(Chardonnay)に比べて二流だと言われバカにされており、買ってもらえずに捨てたこともあったそうです。そんな逆境にも負けずに信念を貫く祖父と父の生き様が幼少期の心に焼き付けられたと、三澤は後に語っています。

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勝沼の甲州葡萄(2006年撮影)
By genta_hgr (Grape) [CC BY 2.0], via Wikimedia Commons

大学卒業後、三澤は2005年に単身フランスへ渡ります。25歳の頃です。明治期にフランスへ渡った2人の若者と似ていますね。三澤はボルドー大学(Bordeaux University)のワイン醸造部に入学し、フランス北部のブルゴーニュ(Bourgogne)の専門学校にも通ってフランス栽培醸造上級技術者の資格も取得します。そして大学卒業後は南アフリカ共和国のステレンボッシュ大学(University of Stellenbosch)の大学院へ進学します。
三澤は海外での日々を「目からうろこの毎日」だったと語っています。日本では大半のワイナリーが農家から買ったブドウでワインを造っていましたが、フランスでは自社の農園でブドウの栽培から行うのが当たり前です。また南アフリカでの恩師からは、新興国も伝統国もアプローチが違うだけでゴールは同じであるという教えを受け、心を動かされます。このままでは甲州はいずれ淘汰されてしまうという危機感を抱いていた三澤は、甲州ワインを一流に育てて世界に広げようと決意します。

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ボルドー大学(2006年撮影)
By Fabien1309 [CC BY-SA 2.0 FR], via Wikimedia Commons

三澤は2007年に帰国し、父親が経営する中央葡萄酒株式会社に入社します。
社長である父親からは
「地獄へようこそ」
“Welcome to Hell.”
と言われたそうです。
ワインづくりは9月から11月までの収穫時期の3か月が特に忙しく、三澤は帰宅する暇もなく蔵に寝泊まりし、睡眠時間が2〜3時間という日々が続きます。三澤は「まさか、と思ったけど本当に地獄のような毎日」だったと語っています。
繁忙期が過ぎた半年間、三澤は季節が逆である南半球へ渡って繁忙期のワイナリーで武者修行をします。
2009年にオーストラリア南東海岸にあるハンターバレー(Hunter Valley)のワイナリーで実地の訓練を始めます。この頃は「スシ」「サムライ」と呼ばれていたそうです。
チリへ渡った時には一週間で3000トンのワインを仕込んだこともあったそうです。自分のワイナリーが1年に仕込む量の10倍を超える量です。

Embed from Getty Images

ハンターバレーのワイナリーで(2012年撮影)
Photo by Kok Kai Ng / Contributor, 22 November, 2012 [Rights-managed], via Getty Images

三澤は海外で武者修行するだけでなく、自らが育てたグレイスワインを海外に広めたいという夢も追いかけます。「いらない」と言われたり、アポを無視されたりと、何度も心が折れそうになったそうです。
しかし三澤はあきらめず、丹精こめてやっと納得がいくワインを作って「キュヴェ三澤 明野甲州2013 (Cuvée Misawa Akeno Koshu 2013)」と名付け、出荷します。
そしてイギリスのワイン雑誌『デキャンタ(Decanter )』が主催する世界最大の国際ワインコンテスト「デキャンタ・ワールド・ワイン・アワード2014(Decanter World Wine Awards 2014)」に出品します。“DWWA”と略され、「最も金賞を取ることが難しい世界的アワードのひとつ」とも言われるコンテストです。
「キュヴェ三澤 明野甲州2013」は日本産ワインとして初めてDWWA2014の金賞に輝き、さらに金賞を受賞したワインの中から選ばれる特別賞「地域最高賞 (RT: Regional Trophy)」も受賞します。1万5千銘柄を超えるワインのうち424銘柄に与えられる金賞のうち、RTは126銘柄。トップ0.8%の快挙です。
審査員からは「かわいらしい白い花の香り」「酸味が良い」「余韻が長い」と好評だったそうです。


【動画】“GLOBAL WORK(グローバルワーク) 『世界人』 #22 三澤彩菜”, by globalwork sekaijin, YouTube, 2014/09/17

“Koshu’s subtleties and delicacies are definitely unique.”
甲州葡萄の絶妙で繊細な美味しさは類がありません。

グレイスワインを世界の多くの国に広めたいという夢に向かってまっすぐ進む三澤彩奈。
今やグレイスワインは甲州種だけでなく、白はシャルドネ、赤はメルローやカベルネ・ソーヴィニヨン(Cabernet Sauvignon)、カベルネ・フラン(Cabernet Franc)、プティヴェルド(Petit Verdot)という、合わせて6品種を栽培しています。
グレイスワインは2014年に続き、2015年、2016年、2017年と4年連続でDWWAの金賞を受賞します。さらに2016年にはベストアジア賞と、アジア初のプラチナ賞、2017年にもプラチナ賞を受賞します。
そして三澤は2016年現在、日本ワインとしては最多の20ヶ国にグレイスワインを輸出しています。
甲州ワインの伝道師になりたいという三澤の思いは着実に実現しつつあります。
将来については、「おばあちゃんになってもブドウ畑を駆け回っていたい」と語っているそうです。


【動画】“Jeannie Meets Ayana Misawa of Grace Winery (ジャニーがグレイスワインの三澤彩奈に会う)”, by AsianPalate, YouTube, 2014/02/16

それでは今日はこのへんで。
またお会いしましょう! ジム佐伯でした。

【関連記事】第233回:“Cheers!”―「乾杯」(日常会話), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2015年09月09日
【関連記事】第237回:“Here's looking at you, kid.”―「君の瞳に乾杯!」(『カサブランカ』), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2015年09月15日
【関連記事】第480回:“The customer is always right.” ―「お客様は神様です」(セザール・リッツ), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2017年12月03日

【参考】Wikipedia(日本語版英語版
【参考】中央葡萄酒公式サイト, http://www.grace-wine.com/
【参考】グレイスワイン ワインメーカーのブログ, by 三澤彩奈
【参考】“Interview with Ayana Misawa of Grace Winery (グレイスワイン三澤彩奈へのインタビュー)”, by Jeannie Cho Lee, Master of Wine
【参考】“Feature - Wines Made in Japan? (特集 - メイド・イン・ジャパンのワイン?)”, 在英日本大使館, 2013年3月
【参考】“私のワイン「世界で輝け」 女性醸造家、甲州で熟成”, by 小谷由美, こころがホッとする写真ニュース Vol.46, 日経電子版, 2013/12/29
【参考】“日本産ワイン初の快挙 「キュヴェ三澤」国際コンクール金賞 山梨”, 産経ニュース, 2014.7.16
【参考】“Vintners see bright future for Koshu wine (ワイン醸造者が描く甲州ワインの明るい未来)”, by Kaori Kaneko, REUTERS, The Japan Times, FEB 13, 2015
【参考】“女性醸造家の渾身のワインに世界が驚嘆した”, by 川内イオ, 東洋経済ONLINE, 2015年10月09日
【参考】“甲州ワインを世界へ送るワイン醸造家・三澤彩奈 中央葡萄酒株式会社 ミサワワイナリー 前編”, by 谷崎テトラ, 貝印 × colocal 「つくる」Journal! vol.030, 2015.12.8
【参考】“甲州ワイン、こだわりづくしの醸造 ワイン醸造家・三澤彩奈さん ミサワワイナリー 後編”, by 谷崎テトラ, 貝印 × colocal 「つくる」Journal! vol.031, 2015.12.15
【参考】“世界最大の国際ワインコンクール『デキャンター・ワールドワイン・アワード』で、山梨県産『グレイス・エクストラ・ブリュット2011』がアジア初のプラチナ賞受賞!グレイスワインの輸出先が日本最多の20ヵ国へ”, by 中央葡萄酒株式会社, PR TIMES, 2016年8月22日
【参考】“三澤彩奈(みさわあやな)は美人ワイン醸造家で日本史上初デキャンタ―・ワールド・ワイン・アワード金賞!wikiプロフィールやインスタ写真は?セブンルール”, by 中央葡萄酒株式会社, Tonboeye トンボの目のように, 2018/2/24

【動画】“GLOBAL WORK(グローバルワーク) 『世界人』 #22 三澤彩菜”, by globalwork sekaijin, YouTube, 2014/09/17
【動画】“Jeannie Meets Ayana Misawa of Grace Winery (ジャニーがグレイスワインの三澤彩奈に会う)”, by AsianPalate, YouTube, 2014/02/16




タグ:実業家 日本
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posted by ジム佐伯 at 07:00 | ロンドン ☁ | Comment(0) | 実業家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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