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2018年03月05日

第504回:“I made you a sandwich.” ―「サンドイッチを作ってあげたよ」(ジェイド・ハーマイスター)

こんにちは! ジム佐伯です。
英語の名言・格言やちょっといい言葉、日常会話でよく使う表現などをご紹介しています。


【動画】“Young Explorer Jade Hameister - Behind the News (若き探検家ジェイド・ハーマイスター)”, by Behind the News, 2016/11/09

第504回の今日はこの言葉です。
“I made you a sandwich.”

「サンドイッチを作ってあげたよ」
という意味です。
これはオーストラリアの女子高生ジェイド・ハーマイスター(Jade Hameister, 2001-)の言葉です。2001年生まれ。まだあどけなさの残る16歳の少女ですが、実は彼女は14歳の時に史上最年少でスキーで北極点に到達した冒険家です。
それでもサンドイッチを作ること自体は何の珍しいことではありません。
いったいこのサンドイッチにはどういう意味があるのでしょうか。

0504-jade_hameister.png
ジェイド・ハーマイスター(公式サイトより)
【参考】ジェイド・ハーマイスター公式サイト, http://www.jadehameister.com/

2001年、ジェイド・ハーマイスターはオーストラリアのメルボルンに生まれます。
冒険好きな父親の影響で小さい頃から冒険好きとなり、6歳の時にオーストラリア大陸の最高峰である標高2228メートルのコジオスコ山(Mount Kosciuszko)に登頂します。
2016年4月、ジェイドは北緯89度40分の場所からスキーで北極点(North Pole)を目指します。14歳の時のことです。極地探検は初めてで、スキーは少ししかやったことがなかったそうですが、砂浜で橇に見立てたタイヤを引く訓練を1年間続けたそうです。
ジェイドは自分の体重と同じぐらいの重さの橇をひきながら北極点を目指します。マイナス20℃を切る寒さや氷の壁や裂け目などに悩まされながら海氷の上をスキーで150キロ走破し、4月23日に見事に北極点に到達します。
ジェイドは北緯89度圏外からスキーで北極点に到達した史上最年少の人物となります。

北極点に到達したジェイド・ハーマイスター(2016年撮影)

2016年8月、ジェイドはメルボルンで開催されたTEDxテッド・エックスメルボルン(TEDxMelbourne)というイベントでプレゼンテーションをします。タイトルは“My journey to the North Pole and beyond(私の北極点への旅とその先)”です。
TEDテッドとはカナダのバンクーバーで毎年開催されるプレゼンテーションのイベントで、5日間にわたって70人のプレゼンターが様々なテーマで聴衆の前でプレゼンをします。そしてその模様は公式サイトやYouTubeなどで世界中に公開されます。NHKの『スーパープレゼンテーション』という番組でも紹介されています。
TEDxは運営主体は違いますが、TEDからライセンスを受けてTEDと同じコンセプトで開催されるイベントです。2009年に東京でTEDx東京(TEDxTokyo)が開催されて以降、世界各地で開催されています。


【動画】“Jade Hameister - TEDxMelbourne Speaker 2016 (ジェイド・ハーマイスター - TEDx メルボルン 発表者 2016)”, by TEDx Talks, 2016/07/24

プレゼンの冒頭でジェイドは、
“What if young women around the world were encouraged to be more rather than less?”
「もしも世界中の女性たちにとって「慎ましくあること」よりも「挑戦すること」の方が望ましい姿だったらどうなるでしょうか」
と語りかけます。
“What if ... ?”(もし〜だったらどうなるでしょう)と仮定法過去で語りかけるのは「what-ifシナリオ(what-if scenario)」と呼ばれるプレゼンテーションの常套手段です。ジェイドは今でも女性は控えめで慎ましくあるように求められているとした上で、もし女性たちが自分の可能性に向かって一歩踏み出したらどんなに素晴らしいかと語ります。そして自分が一歩踏み出した北極点への冒険を紹介します。またジェイドは北極点到達、グリーンランド横断、南極点到達という極地ポーラーハットトリック(polar hat-trick)」を達成するのが目標であると語ります。


【動画】“My journey to the North Pole and beyond | Jade Hameister | TEDxMelbourne (私の北極点への旅とその先 - ジェイド・ハーマイスター - TEDx メルボルン)”, by TEDx Talks, 2016/08/16

このプレゼンは賞賛を浴びますが、中には面白くない人もいたようです。いまだに女性差別的な考えを持つ人たちや、フェミニズムを苦々しく思っている人たちです。TEDxのプレゼンはYouTubeで世界中で見ることができますが、YouTubeにアップされたジェイドのプレゼンには好意的なコメントにまじって、ジェイドの偉業にケチをつけたり女性をからかったりするようなコメントがつけられてプチ炎上の状態となります。
“How many "Men" helped you reach the North Pole?”
「何人の男に北極点到達を手伝ってもらったんだ?」
“She was heading to the mall and ended up at the north pole.”
「彼女はショッピングモールに行こうとして北極点に着いちゃったのさ」
“and who paid and is paying for all this? Her rich parents?”
「で、誰が費用を払ったんだ? 金持ちの両親か?」
“good on you sweetie, maybe could find a successful husband and make him a sandwich”
「かわい子ちゃんよかったな、せいぜい金持ちの旦那でも捕まえてサンドイッチでも作ってあげな」
“Make me a sandwich”
「俺にサンドイッチを作ってくれよ」
“Make me a sandwich”
「いや、俺に作ってくれよ」


TEDxメルボルンでプレゼンをするジェイド(2016年撮影)

うーん、ひどい叩きっぷりですね。でも僕は彼女が叩かれるのも正直ちょっとだけわかる気がします。
14歳の女の子が北極点に到達したことは、もうそれだけで凄いことです。人々はストレートにその冒険の苦労や達成時の喜びを聞きたいのだと思います。TEDxの聴衆やYouTubeの視聴者はそれを聞くだけで満足して、素直に彼女を賞賛したでしょう。しかしジェイドはそれを社会における女性の立場や社会進出の文脈で語ります。確かにそれも正しいです。100パーセント正しいです。ただ正しいことが常に受け入れられるとは限りません。しかも彼女の主張は直球ど真ん中でストレート過ぎて、「そういう話は聞き飽きた」とうんざりする大人がいてもおかしくありません。



しかしだからといってそれは彼女を叩いてよい理由にはなりません。背伸びした若者の主張を温かい目で見守るのが大人の役目です。上から目線で叩くのはいかにも大人げありません。
まあネットで多数の良識派ではなく少数の困った人たちが暴れているのはどこの国でも同じです。日本では「荒らし」「粘着」などと呼ばれるこういう連中や行為のことは、欧米では「ネット・トロール(Net Troll)」と呼ばれます。
こういう輩には何もしないでスルー(無視)するに限ります。しかしジェイドは単に無視するだけでなく、かといってむきになって反論して火に油を注ぐわけでもなく、公式サイトやインスタのアカウントを閉鎖して逃亡するでもなく、実に素晴らしい対応を見せます。どう対応したかは後で書きます。


【動画】“TEDxスポットライト ガールパワー”, by TEDx Talks, 2016/10/04

2017年5月、ジェイドはグリーンランド(Greenland)南西部にある海岸の街カンゲルルススアーク(Kangerlussuaq)を出発し、グリーンランド横断の旅に出ます。氷点下20℃を切る寒さの中で夜を越したり、氷が融けた池やクレバスに行く手を阻まれて何度も大きな後退や回り道を余儀なくされたり、標高2850メートルの山地を横断したりしながら、ジェイドたちは27日かけてグリーンランドを横断し、東海岸に到達します。ジェイドの16歳の誕生日の前日の横断達成で、550キロを補給や支援無しで踏破します。15歳でのグリーンランド横断は女性としての最年少記録です。

グリーンランドを横断したジェイド(2017年撮影)

そして同じ年の2017年11月末、ジェイドは南極大陸の太平洋岸にあるロス棚氷たなごおり(Ross Ice Shelf)を出発して南極点(South Pole)に向かいます。ジェイドはマイナス30℃前後の寒さの中、自分の体重の2倍の重さの橇を引いて標高3000メートルを超える南極高原を通って600キロを超える距離をスキーで踏破し、37日後の2018年1月10日に南極点にあるアムンセン・スコット基地(Amundsen-Scott Station)に到達します。沿岸から南極点までスキーで無補給・無支援で到達したのはこれまで140人しかおらず、そのうち女性は20人しかいません。そしてジェイドは140人の中での史上最年少記録を更新します。
またジェイドは夢として語っていた北極点到達、グリーンランド横断、南極点到達のポーラー・ハットトリックを最年少で達成します。総移動距離は実に1300キロに及びます。

南極点に到達したジェイド(2018年撮影)

南極点に到達したジェイドは、ある写真をインスタ(Instagram)にアップします。サンドイッチを差し出している写真です。そして、
“I made you a sandwich (ham & cheese).”
「サンドイッチを作ってあげたよ(ハムとチーズのやつ)」
とコメントしたのです。
この言葉には前後があります。
“Tonight (it never gets dark this time of year) I skied back to the Pole again... to take this photo for all those men who commented “Make me a sandwich” on my TEDX Talk. I made you a sandwich (ham & cheese), now ski 37 days and 600km to the South Pole and you can eat it xx”
「今夜(といっても今頃は一晩中暗くならないけど)私はスキーでまた極点に来た... TEDxでの私のプレゼンに『俺にサンドイッチを作ってくれよ』とコメントした男たち全員にこの写真を撮ってやるために。サンドイッチを作ってあげたよ(ハムとチーズのやつ)。600キロを37日間かけてスキーで南極点まで来れたら食べてもいいよ♡」
なお、末尾の“xx”「キス(kisses)」を表します。恋人や親しい友人、家族などに親愛の情を表す時に使われますが、ここではジョークと皮肉を込めて使われています。日本語訳で使うとしたらハートマークといったところでしょうか。

南極点でサンドイッチを差し出すジェイド(2018年撮影)

“I made you a sandwich.”
サンドイッチを作ってあげたよ。

史上最年少で北極点に到達した上に、北極点、グリーンランド、南極点の極地ハットトリックを史上最年少で達成したジェイド。
YouTubeでの女性差別的なコメントに対して見事なジョークでさらりと返しました。実にきれいなカウンターパンチです。
心無いコメントに直接反応せず、かといってサイト閉鎖やアカウント削除などで逃げたりもせず、グリーンランド横断と南極点到達という文句のつけようのない偉業を重ねた上でのこのジョーク。
16歳の少女とは思えない大人の対応です。
きっと優れた危機管理能力とユーモアセンスの持ち主なのでしょう。
ジェイドの今後ますますの活躍に期待しましょう!

オーストラリア版Vogue(Vogue Austraria)の記事に載ったジェイド(2018年撮影)

それでは今日はこのへんで。
またお会いしましょう! ジム佐伯でした。

【関連記事】第142回:“The same as Sandwich!”―「サンドウィッチと同じものを!」(サンドウィッチ伯爵の友達), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2013年12月14日
【関連記事】第337回:“The Pole at last!!!” ―「ついに極点だ!!!」 (ロバート・ピアリ), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2016年07月07日
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【関連記事】第340回:“Great God! this is an awful place.” ―「神よ!ここは恐ろしい所です」 (ロバート・スコット), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2016年07月17日
【関連記事】第75回:“One pen can change the world.”―「一本のペンが世界を変えられる」(パキスタンの少女マララ), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2013年08月17日

【参考】Wikipedia(日本語版英語版
【参考】ジェイド・ハーマイスター公式サイト, http://www.jadehameister.com/
【参考】“ジェイドハマイスターのプロフィールと今後の冒険は何?”, by neverescapeanymore, nbenの気になるブログ, 2018 02.06
【参考】“16歳女子高生、南極点から「サンドイッチ」で反撃 ユーモアで差別に対抗、世界から賞賛”, by 笹山七海, The Huffington Post, 2018年02月05日

【動画】“Young Explorer Jade Hameister - Behind the News (若き探検家ジェイド・ハーマイスター)”, by Behind the News, 2016/11/09
【動画】“Jade Hameister - TEDxMelbourne Speaker 2016 (ジェイド・ハーマイスター - TEDx メルボルン 発表者 2016)”, by TEDx Talks, 2016/07/24
【動画】“My journey to the North Pole and beyond | Jade Hameister | TEDxMelbourne (私の北極点への旅とその先 - ジェイド・ハーマイスター - TEDx メルボルン)”, by TEDx Talks, 2016/08/16
【動画】“TEDxスポットライト ガールパワー”, by TEDx Talks, 2016/10/04




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posted by ジム佐伯 at 07:00 | ロンドン ☁ | Comment(0) | 冒険家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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