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2018年01月12日

第490回:“Doesn’t the east coast of South America fit precisely into the west coast of Africa?” ―「南米の東海岸はアフリカの西海岸にぴったり合うよね」(アルフレッド・ヴェゲナー)

こんにちは! ジム佐伯です。
英語の名言・格言やちょっといい言葉、日常会話でよく使う表現などをご紹介しています。



第490回の今日はこの言葉です。
“Doesn’t the east coast of South America fit precisely into the west coast of Africa?”

「南米の東海岸はアフリカの西海岸にぴったり合うよね」
という意味です。これはドイツの気象学者アルフレッド・ヴェゲナー(Alfred Wegener, 1880-1930)の言葉です。世界で初めて「大陸移動(continental drift)」という概念を提唱して大陸移動説を主張した人物として有名です。
ドイツ語読みでは「アルフレート・ヴェゲナー」と呼ばれますが、英語圏でも姓の部分はドイツ語読みで「アルフレッド・ヴェゲナー」と読まれます。
日本ではすべて英語読みでの「アルフレッド・ウェゲナー」という呼び方が一般的です。

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アルフレッド・ヴェゲナー(1910年撮影)
Bildarchiv Foto Marburg [Public domain], via Wikimedia Commons

アルフレッド・ヴェゲナーは1880年にドイツ帝国の盟主であるプロイセン王国の首都ベルリンに生まれます。父親は牧師で古代言語の教師もしています。アルフレッドは5人兄弟の末っ子で、兄弟のうち2人は子供の頃に亡くなります。アルフレッドは中等学校であるギムナジウムを主席で卒業すると、ベルリンやハイデルベルクやインスブルックで物理学や気象学や天文学を学びます。25歳の頃にベルリンのフリードリヒ・ヴィルヘルム大学(今のフンボルト大学)で天文学の博士号を取得します。その後ヴェゲナーはリンデンバーグ航空天文台で助手として働きます。この頃、兄のクルトと共に気球に乗って長期滞空の世界記録である52.5時間を達成します。
また、1906年にヴェゲナーはデンマークの探検隊に同行して2年間グリーンランドを探検し、東海岸の地図作成などを手伝います。帰還後ヴェゲナーはマールブルク大学で講師として働きます。


【追記】(2018年1月17日)
この頃、世界は極地探検の時代です。1888年、ノルウェーのフリチョフ・ナンセン(Fridtjof Nansen)が初めてグリーンランド横断に成功します。また1891年にはアメリカのロバート・ピアリ(Robert Peary)がグリーンランド北端まで到達し、グリーンランドが島であることを確認します。そして1909年、ピアリは北極点(North Pole)に到達したと主張します。さらに1911年、ノルウェーのロアール・アムンセン(Roald Amundsen)南極点(South Pole)に到達します。ヴェゲナーのグリーンランド探検も、北極点一番乗りを念頭においたものだったに違いありません。

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北極点一番乗りを主張したロバート・ピアリ
Photo by Unknown [Public domain], via Wikimedia Commons



1910年、ヴェゲナーは世界地図を見て、大西洋の両岸の地形の形が似ていること、特に南米大陸の東海岸とアフリカ大陸の西海岸がまるでパズルのように凹凸がぴったりと一致するほど似ていることに気づきます。
1911年、ヴェゲナーは恋人のエルゼ・ケッペン(Else Köppen)への手紙でこう書いています。
“Doesn’t the east coast of South America fit precisely into the west coast of Africa so as if they had been connected in the past?”
「南米の東海岸はアフリカの西海岸にぴったり合うよね。まるで昔はくっついていたみたいじゃないか」
そしてヴェゲナーは1912年にフランクフルトで開催されたドイツ地質学会に大陸移動のアイディアを発表します。

0490-atlantic_ocean-ja.png
大西洋

By CIA, translated by ja:利用者:Koba-chan (CIA World Factbook - Atlantic Ocean (picture URL)) [Public domain], via Wikimedia Commons


この年(1912年)、ヴェゲナーは再びデンマークの探検隊に同行してグリーンランド探検に出発します。隊長のヨハン・ペーター・コッホ(Johan Peter Koch)が氷河のクレバスに落ちて足を痛めて動けなくなったこともあり、ヴェゲナーとコッホは史上初めてグリーンランド奥地での越冬を行います。そして1913年の夏にコッホらはグリーランド奥地を横断し、1888年にノルウェー人のフリチョフ・ナンセン(Fridtjof Nansen)らが行った横断行の2倍の距離を走破します。

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グリーンランド越冬基地でのヴェゲナー(1912-13年撮影)
By Loewe, Fritz; Georgi, Johannes; Sorge, Ernst; Wegener, Alfred Lothar (Archive of Alfred Wegener Institute) [Public domain], via Wikimedia Commons

帰還したヴェゲナーは恋人のエルゼ・ケッペンと結婚します。エルゼの父親は恩師でもあるウラジミール・ケッペン(Wladimir Köppen)です。「ケッペンの気候区分(Köppen climate classification)」で日本でも有名な気象学者のケッペンです。

0490-koppen_world_map_(retouched_version).png
ケッペンの気候区分による世界地図
例(一部):
・濃い青:熱帯雨林気候(Tropical rainforest climate)
・濃い赤:砂漠気候  (Desert climate)
・濃い黄:地中海性気候(Mediterranean climate)
・薄い灰:ツンドラ気候(Tundra climate)
By World_Koppen_Map.png: Peel, M. C., Finlayson, B. L., and McMahon, T. A. (University of Melbourne) derivative work: Br-Sc-94 (World_Koppen_Map.png) [CC BY-SA 3.0], via Wikimedia Commons

1914年、第一次世界大戦(World War I, 1914-1918)が勃発します。歩兵予備役将校だったヴェゲナーは西部戦線のベルギーでの最前線で激戦を体験し、数ヶ月で二度負傷して軍の気象部門に転属となります。
そして1915年、ヴェゲナーは主著『大陸と海洋の起源(The Origin of Continents and Oceans, ドイツ語原題:Die Entstehung der Kontinente und Ozeane)を発表します。そして地質学や古生物学、古気候学などの資料をもとにして、恐竜がいた中生代には大西洋は存在せず、その後南北アメリカ大陸とヨーロッパ・アフリカ大陸が分かれて大西洋ができたとする「大陸移動説(Continental Drift)」を主張します。
しかし当時は移動のメカニズムがはっきりしていなかったことや、大戦のただ中でそれどころではなかったこともあり、まったく反響がありません。



大戦が終わり、1921年にヴェゲナーはハンブルク大学の上級講師となります。また1924年にオーストリアのグラーツ大学で気象学と地球物理学の教授となります。
そして1929年にデータや考察を追加した『大陸と海洋の起源』の第4版を発行します。第4版では、現在存在するすべての大陸は「パンゲア(Pangea)」という一つの巨大大陸であったこと、約2億年前に分裂して別々に移動して今の位置へ至ったことなどを主張します。なお、「パンゲア」はドイツ語読みです。英語読みでは「パンジア」となります。
しかし大陸移動の原動力が十分説明されておらず、当時の地質学者たちにヴェゲナーの大陸移動説はまたも完全に否定されます。

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『大陸と海洋の起源』第4版(1929年)より
By Inductiveload [Public domain], via Wikimedia Commons

0490-pangea_animation_03.gif
パンゲア大陸の分裂と移動
By Original upload by en:User:Tbower (USGS animation A08) [Public domain], via Wikimedia Commons

0490-alfred_wegener_ca.1924-30.jpg
晩年のヴェゲナー(1924-30年頃撮影)
Bildarchiv Foto Marburg [Public domain], via Wikimedia Commons

ヴェゲナーはその後も何度かグリーンランドを探検しますが、1930年の11月、グリーンランドで遭難したヴェゲナーは還らぬ人となります。50歳の時のことです。
ヴェゲナーの早すぎる死から30年たった1960年代、大陸移動の原動力がマントル対流であるという仮説が唱えられ、また地磁気の移動などが大陸移動説でしか説明がつかないことがわかります。さらに大陸や島の移動と大地震や火山の大噴火の発生、大山脈の形成などをまとめて説明できるプレートテクトニクス(plate tectonics)理論が提唱され、ヴェゲナーの大陸移動説は「古くて最も新しい地質学」として再評価されます。そして現在では非常に高く評価されています。小学生の国語の教科書にも説明文が採用された時期もありました。

0490-plates_tect2_ja.png
地殻を構成するプレート群
By USGS, Washiucho (Own work, translation of File:Plates_tect2_en.svg) [Public domain], via Wikimedia Commons

2015年、JAMSTECと略される海洋研究開発機構(Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology)吉田晶樹(Masaki Yoshida)浜野洋三(Yozo Hamano)は、スーパーコンピュータを用いたマントル対流のシミュレーションで超大陸パンゲアから現在の大陸の配置までの大陸移動を再現することに成功します。
シミュレーションでは2億年前にパンゲアに裂け目が生じて大西洋が徐々に大きくなり、インド亜大陸が北進してユーラシア大陸に衝突してヒマラヤ山脈が形成された経過が正確に再現されています。また日本近海のプレートの沈み込みのシミュレーションと、北海道南東沖で実際に観測した太平洋プレートの構造調査の結果が一致したことも確認されます。
この大規模シミュレーションにより、大陸移動の主な原動力がマントル対流であることが明らかになったのです。ヴェゲナーが『大陸と海洋の起源』で大陸移動説を発表してちょうど100年目の年のことです。

0490-150213_img3_w500.jpg
シミュレーション結果の一例。地球表層の大陸分布の時間変化を表す。
(a)2億年前、(b)1億5000万年前、(c)1億年前、(d)現在
【参考】“大陸移動の原動力はマントル対流を実証”, サイエンスポータル - 科学技術の最新情報, JST 科学技術振興機構, 2015年2月13日

“Doesn’t the east coast of South America fit precisely into the west coast of Africa?”
南米の東海岸はアフリカの西海岸にぴったり合うよね。

今では誰でも知っているこの事実から、大陸移動説を提唱したアルフレッド・ヴェゲナー。
ヴェゲナーがその考えを初めて伝えたのは、後に結婚する最愛の恋人エルゼでした。
しかし提唱した当時は誰もがそれを信じず、ヴェゲナーは笑い者になりました。
その後ヴェゲナーは地質や植生、化石の分布などの地道な証拠を着実に積み重ねて研究を続けました。
今では大陸が動くことを疑う者はほとんどいません。
そしてスーパーコンピュータによる大規模シミュレーションによって、21世紀になってその正しさが確認されました。
時代がやっとヴェゲナーに追いついたのだと言えましょう。


【動画】“Continental Drift 101 | National Geographic (大陸移動説 101 - ナショナル・ジオグラフィック)”, by National Geographic, YouTube, 2016/11/03

それでは今日はこのへんで。
またお会いしましょう! ジム佐伯でした。


【動画】“Continental Drift: Alfred Wegener Song by The Amoeba People (大陸移動説:アルフレッド・ヴェゲナー 歌:The Amoeba People)”, by The Amoeba People, YouTube, 2011/04/08

【関連記事】第336回:“May Norwegians show the way!” ―「ノルウェー人よ、道を示したまえ!」 (フリチョフ・ナンセン), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2016年07月04日
【関連記事】第120回:“And yet it moves.”―「それでも地球は動いている」(ガリレオ), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2013年11月03日
【関連記事】第337回:“The Pole at last!!!” ―「ついに極点だ!!!」 (ロバート・ピアリ), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2016年07月07日

【参考】Wikipedia(日本語版英語版
【参考】“Alfred Wegener’s Hypothesis on Continental Drift and Its Discussion in Petermanns Geographische Mitteilungen (1912 - 1942) (アルフレッド・ヴェゲナーの大陸移動説とペーターマンの地理的メッセージについての考察)”, by Imre Josef Demhardt, Polarforschung 75 (1), 29 – 35, 2005
【参考】“大陸移動の原動力はマントル対流を実証”, サイエンスポータル - 科学技術の最新情報, JST 科学技術振興機構, 2015年2月13日

【動画】“Continental Drift 101 | National Geographic (大陸移動説 101 - ナショナル・ジオグラフィック)”, by National Geographic, YouTube, 2016/11/03
【動画】“Continental Drift: Alfred Wegener Song by The Amoeba People (大陸移動説:アルフレッド・ヴェゲナー 歌:The Amoeba People)”, by The Amoeba People, YouTube, 2011/04/08




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posted by ジム佐伯 at 07:00 | ロンドン | Comment(0) | 科学者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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