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2017年01月06日

第396回:“Fog in Channel, Continent Isolated”―「英仏海峡に霧、大陸孤立す」(イギリスのジョーク)

こんにちは! ジム佐伯です。
英語の名言・格言やちょっといい言葉、日常会話でよく使う表現などをご紹介しています。



第396回の今日はこの言葉です。
“Fog in Channel, Continent Isolated”
「英仏海峡に霧、大陸孤立す」
という意味です。
新聞の見出しとして使われたと言われているイギリスのジョークです。
英仏海峡(English Channel)とは文字通りイギリスとフランスの間にある海峡です。「イギリス海峡」とも呼ばれます。イギリスでは単に「海峡(The Channel)」と言えば英仏海峡のことを示します。新聞の見出しでは“the”も省略されて単に“Channel”と書かれます。

0396-english_channel.png
英仏海峡
By This is part of http://www.lib.utexas.edu/maps/europe/france_pol91.jpg; claimed to be from the CIA (see http://www.lib.utexas.edu/maps/france.html) (from http://www.lib.utexas.edu/), modified by Jim Saeki on 23 December 2016 [Public domain], via Wikimedia Commons

英仏海峡の東西の長さは約560kmですから、東京 - 大阪間とほぼ同じです。西端の幅が最も広くて約160km、最も狭いのが東端のドーバー海峡(Strait of Dover)で約34kmです。条件のよい時には対岸が見え、遠泳の人気コースにもなっています。
ちなみに日本の九州と対馬の間の対馬海峡の幅はもっと広くて約200kmです。一方で本州と九州の間の関門海峡は最も狭いところの幅がわずか630mです。本州と北海道の間の津軽海峡では最も狭いところが約19km、北海道と樺太の間の宗谷海峡の幅は約42kmです。

0396-france_manche_vue_dover.jpg
フランス側からドーバー海峡を隔てて見たイギリス
By Rolf Süssbrich (Own work) [GFDL, CC-BY-SA-3.0 or CC BY-SA 2.5-2.0-1.0], via Wikimedia Commons

英仏海峡に限らずイギリスでは曇った日が多いです。
常夏のカリブ海からメキシコ湾とフロリダ沖を通って北上する暖流のメキシコ湾流(Gulf Stream)がイギリス北西の沿岸を流れているからです。北大西洋海流(North Atlantic Current)とも呼ばれます。そのおかげでイギリスは緯度が高いわりには冬でもそれほど寒くならないのですが、暖流の湿気をたっぷり含んだ偏西風が雲を作り、雨を降らします。イギリスの天気が変わりやすいのはそのためです。そして北東から寒気が流れ込んだり、北海の海が冷たかったり、放射冷却で冷え込んだりすると、湿気が水滴となって霧が発生します。
英仏海峡にもしばしば濃霧が発生し、船舶事故が何度も起きています。

0396-golfstream.jpg
メキシコ湾流
By RedAndr [GFDL or CC BY-SA 4.0-3.0-2.5-2.0-1.0], via Wikimedia Commons

ある日、英仏海峡が濃霧に覆われます。
イギリスとヨーロッパ大陸を結ぶ船舶はすべて欠航となります。
そこでイギリスの新聞は次のような見出しの記事を出したそうです。
“Fog in Channel, Continent Isolated”
「英仏海峡に霧、大陸孤立す」
次のような見出しだったとも言われます。意味はどちらも同じです。
“Fog in Channel, Continent Cut Off”
「英仏海峡に霧、大陸孤立す」
これ、面白いですよね。
普通は「イギリスが大陸から孤立してしまった」と考えるものです。
しかしイギリスは世界に冠たる大英帝国。イギリスが大陸から孤立しているのではなく、大陸がイギリスから孤立しているのだという誇りがこめられた見出しです。
また逆に、イギリス人の偏狭な島国根性がにじみ出たものだと揶揄するためのネタとして使われることもあります。

0396-mgla_fog_loenstrup_denmark_north_sea_2004_ubt.jpg
(本文とは関係ありません)
By Tsca [GFDL, CC BY 2.5, CC BY-SA 3.0], via Wikimedia Commons

この言葉、イギリスの高級紙『タイムズ(The Times)』に使われたという説もありますし、『デイリー・テレグラフ(The Daily Telegraph)』だという説もあります。また、1930年代の天気予報で使われたという説もあります。
しかし本当に新聞の見出しに使われたかどうかははっきりとわかっていません。現存する新聞記事のデータには残っていないからです。またそれ以前に使われたとしても、こんな面白い見出しならば何らかの記録や引用などが残っている筈です。しかし特にはっきりした記録は残っていません。
天気予報に至っては、新聞ではなくラジオなどで使われたのだとしたら確かめるすべはありません。
今では、この言葉はジョークであり、新聞や天気予報で使われたというのは都市伝説の一つであるというのが定説となっています。

0396-mtstmichel_avion.jpg
英仏海峡に臨んだ干潟に浮かぶモン=サン=ミシェル
By No machine-readable author provided. Fabos~commonswiki assumed (based on copyright claims). [Public domain], via Wikimedia Commons

“Fog in Channel, Continent Isolated”
英仏海峡に霧、大陸孤立す。

プライドの高いイギリス人がいかにも好みそうなジョークですよね。
昨年(2016年)6月に世界をあっと驚かせたEU離脱の国民投票結果も、ヨーロッパから距離をおいてもかまわないという気持ちが表れたものなのかもしれません。
今年からいよいよ具体的なEU離脱の動きが本格化すると言われています。
イギリス政府の動向に、今後も目を離せませんね。

0396-white_cliffs_of_dover_02.jpg
ドーバーの白い崖
By Immanuel Giel (Own work) [CC BY-SA 3.0], via Wikimedia Commons


それでは今日はこのへんで。
またお会いしましょう! ジム佐伯でした。

【関連記事】第333回:“Brexit!” ―「ブレグジット!」(イギリスのEU離脱), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2016年06月25日
【関連記事】第339回:“Brexit means Brexit and we are going to make a success of it.” ―「ブレグジットはブレグジット。私たちは成功させます。」 (テリーザ・メイ), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2016年07月13日
【関連記事】第390回:“Two countries separated by a common language.” ―「(アメリカとイギリスは)同じ言語で分けられた二つの国」(バーナード・ショー), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2016年12月19日

【参考】Wikipedia(日本語版英語版
【参考】“英国とヨーロッパ大陸”, By 鈴木繁夫, 誤解と理解, 2016/06/21
【参考】“「大陸は孤立」という見方 -”, By 廣淵升彦, View of the World, July 18, 2014




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posted by ジム佐伯 at 07:00 | ロンドン | Comment(0) | TrackBack(0) | ジョーク | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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