英語の名言・格言やちょっといい言葉、日常会話でよく使う表現などをご紹介しています。
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第390回の今日はこの言葉です。
“Two countries separated by a common language.”
「共通の言語で隔てられた二つの国」
「同じ言語で分けられた二つの国」
という意味です。
“The United States and Great Britain are two countries separated by a common language.”という言葉から来ています。
「アメリカとイギリスは同じ言語で分けられた二つの国だ」
これはアイルランド出身の劇作家で教育者や政治家、ジャーナリストでもあったジョージ・バーナード・ショー(George Bernard Shaw, 1856-1950)の言葉です。
これ、実はアメリカとイギリスが同じ英語といいながら違う言葉を話していることを皮肉ったジョークなんです。
いつ、どこで言われたのかはわかっておらず、バーナード・ショーの言葉ではないという説もあります。
しかしいかにもバーナード・ショーが言いそうな皮肉の効いた言葉だと思います。
バーナード・ショー(1915年撮影)
Photo by Unknown [Public domain], via Wikimedia Commons
英語はかつてイギリスの植民地だった80を超える国と地域(アメリカを含む)で話されていて、多くの国で公用語となっています。また公用語になっていない国でも多くの人が英語を話し、今や実質的な世界共通語となっています。
英語発祥の地イギリスで話されるのがイギリス英語(British English)です。そしてアメリカで話されるのがアメリカ英語(American English)です。もともとイギリスの言葉を「英語」というのですから、「イギリス英語」というのはおかしな表現でもありますが、今はふつうに使われています。またアメリカ英語は「米語」とも言われますが、こちらはあまり使われていませんね。
アメリカ英語は言語学的には英語の一方言です。しかし英語のネイティブ・スピーカーの中ではアメリカ人は約三分の二を占める多数派になっており、その意味でも単なる方言ではない存在感を示しています。
国別のネイティブ英語話者人口
Public domain, Link
アメリカ英語とイギリス英語、基本的には同じ英語ですからお互いに意思の疎通は問題なくできるのですが、細かいところはかなり違います。
まず、単語そのものが違います。
季節の「秋」はアメリカでは“fall”ですが、イギリスでは“autumn”です。
「エレベーター」はアメリカでは“elevator”、イギリスでは“lift”です。
「セーター」はアメリカでは“sweater”ですが、イギリスではなんと“jumper”と言います。
最後の例のように、「えっ?」と驚くような単語の違いはよくあります。
日本ではアメリカ英語が教えられていますから、僕もイギリスで暮らし始めた当初はいろいろ戸惑いました。
Image courtesy of stockimages, published on 01 May 2014 / FreeDigitalPhotos.net
また、単語のスペル(綴り)がいろいろ違います。
「中心」はアメリカでは“center”ですがイギリスでは“centre”です。
「色」はアメリカでは“color”ですがイギリスでは“colour”です。
「会話」はアメリカでは“dialog”ですがイギリスでは“dialogue”となります。
「実現する」はアメリカでは“realize”ですがイギリスでは“realise”です。
やはりアメリカ英語のスペルになじんだ日本人はイギリスでは戸惑うことがあります。
読む時は何となくわかりるのですが、メールや書類を書くときに苦労します。
By Glenlarson (Own work) [Public domain], via Wikimedia Commons
さらに発音やアクセントが違います。
例えばアメリカ英語はアクセントのない母音の前の子音の“t”をはっきり発音しません。
“better”は「ベダー」、“water”は「ワダー」となります。
“better”が「ベラー」、“water”が「ワラー」と聞こえることもあります。
しかしイギリスではふつう“t”をかなりはっきりと発音します。
“better”は「ベター」、“water”は「ウォーター」となります。“water”は“wa”の発音もまったく違いますね。
しかしこの“water”が曲者で、イギリスでは場合によっては“t”をあまり発音せずに、「ウォッア」という場合もあるそうです。もうわけがわかりません。僕はあまり背伸びせず、ふつうに「ウォーター」と言うようにしています。
Image courtesy of stockimages, published on 13 October 2013 / FreeDigitalPhotos.net
さらに、文法なども時制の使い方などで多少違います。
アメリカ英語とイギリス英語の違いについてまとめたサイトはたくさんありますので、詳しく知りたい方はご覧になってください。
それでは、なぜこのような違いができてしまったのでしょうか。
1492年にスペイン王室の支援をうけたイタリア人のクリストファー・コロンブス(Christopher Columbus)が「新大陸」を「発見」します。日本では室町時代の中期です。
その後続々と西欧人が新大陸に移住します。スペイン人やポルトガル人は中南米を中心に、イギリス人などは北米を中心に入植を進めます。
そして1776年、独立戦争を経てアメリカはイギリスから独立して独自の道を進みます。日本では江戸時代の中期から後期のあたりで将軍は全15代の中で第10代の徳川
言葉は生きています。日本語も江戸時代の言葉から相当変わってしまっています。
英語もアメリカとイギリスで独自に変わっていき、今の違いにつながっています。
アメリカ独立宣言(1776年)への署名
(1819年の絵画)
John Trumbull [Public domain or Public domain], via Wikimedia Commons
また、アメリカが独立した18世紀には英語のスペルはあまり定まっていませんでした。
当時でも地方によって方言があり、発音に応じた異なるスペルが使われていたのです。
1755年、イングランドの文学者サミュエル・ジョンソン(Samuel Johnson)が約10年かけて編纂した『英語辞書 (A Dictionary of the English Language)』を刊行します。約4万語の見出し語が収録されたものです。
ジョンソンはラテン語やフランス語やギリシャ語などの外来語がルーツの単語は、そのスペルをできるだけ保存します。そしてこれがイギリス英語のスペルの基準となります。
サミュエル・ジョンソン
(1772年の肖像画)
Joshua Reynolds [Public domain], via Wikimedia Commons
アメリカでは最初はイギリスの辞書を使っていました。しかし次第に国家意識が高まり、独自の辞書を作ろうという気運が高まります。
そしてアメリカの教育者ノア・ウェブスター(Noah Webster)が25年以上かけて新しい辞書を編纂し、『アメリカ英語辞書(An American Dictionary of English Language)』を発表します。1828年のことです。約7万語の見出し語が収録されたものです。『ウェブスター辞典(Webster's Dictionary)』とも言われます。今やウェブスターは辞書の代名詞ともなっていますよね。
ウェブスターは、自身の思想に基いてアメリカの独立的なアイデンティティーを守ろうと、アメリカ英語だけのスペルを作ります。そして必要以上に複雑なイギリス英語のスペリングのルールを簡略化し、発音にできるだけ近いスペルを辞書に掲載したのです。上でご紹介した“center”、 “color”、 “dialog”、 “realize” などです。
これ、わかりやすくてよいのですが、結局アメリカ英語とイギリス英語はスペリングルールが統一されないまま現在に至ります。ウェブスターも罪なことをしてくれたものです。
ノア・ウェブスター
(1833年の肖像画)
By James Herring (1794-1867) [Public domain], via Wikimedia Commons
その後もアメリカとイギリスは独自の発展を続け、今に至ります。
ただアメリカ英語には比較的古い英語が保存されていると言われます。例えば「秋」という意味の“fall”はイギリスでもかつて使われていました。しかしその後イギリスではフランスから“autumn”という言葉が入ってきて、新しいスタイリッシュな言葉として好んで使われ、その後定着します。
このように言語は、文化の中心ほど新しい言葉がよく使われ、そこから離れた土地ほど古い言葉が残るという傾向があります。日本でも長く文化の中心だった京都を中心として方言の語彙の分布が同心円状に広がっているという傾向があります。テレビバラエティ『探偵!ナイトスクープ』の伝説のネタ「アホ・バカ分布」でも指摘されています。本にもなっていてとても面白いですので、未読の方はぜひお読みください。
全国アホ・バカ分布考―はるかなる言葉の旅路 (新潮文庫)
一方、オーストラリアやニュージーランドが西欧人に「発見」されて入植が本格化したのは、アメリカの独立からほぼ100年後の18世紀後半から19世紀にかけてです。
このころ“autumn”という言葉は既に定着しています。またジャクソンの辞書によってイギリス式のスペルも定着しています。
もちろんその後の年月でオーストラリア英語やニュージーランド英語というべき言葉に発展しますが、アメリカ英語ほどの違いはなく、イギリス英語の一方言に留まります。
これらの経緯でアメリカ英語とイギリス英語だけがこれほどまでに違うのです。
ジェームズ・クック(James Cook)
オーストラリアやニュージーランドなどを探検した
Nathaniel Dance-Holland [Public domain], via Wikimedia Commons
今ではイギリス、オーストラリア、ニュージーランドでイギリス英語が使われています。またケニアや南アフリカ、インドやシンガポールなど、アフリカやアジアなどにある大英帝国のかつての植民地はイギリス英語を基本として使っています。
一方でアメリカとフィリピンなどのかつてのアメリカの植民地ではアメリカ英語が使われます。
カナダではスペルは基本的にイギリス英語が使われますが、発音はアメリカ英語に近いです。
また、国際社会ではヨーロッパを中心にイギリス英語がよく使われているようです。
日本では第二次大戦までは英語教育はイギリス英語を基本にして行われていましたが、戦後アメリカの統治を経てアメリカ英語での教育となります。
ジュネーブの国際連合欧州本部
by Jim Saeki, 2015
“Two countries separated by a common language.”
同じ言語で分けられた二つの国。
アメリカ英語に慣れた日本人がイギリスに来ると戸惑うことが多いです。
またヨーロッパのほかの国でも案内板などに使われている英語のスペルや単語はイギリス式のものが多いです。
しかしあまり難しく考えず、その違いを楽しんで下さい。
どちらも英語であることに変わりないのですから。
【動画】“イギリス英語vsアメリカ英語!字幕付き!// British English vs American English!〔#425〕”, by バイリンガール英会話 | Bilingirl Chika, YouTube, 2016/04/27
それでは今日はこのへんで。
またお会いしましょう! ジム佐伯でした。
【動画】“British English vs American English”, by Rachel & Jun, YouTube, 2016/10/26
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【参考】Wikipedia(日本語版,英語版)
【参考】“What is the origin of the phrase “two nations divided by a common language”?”, asked by Mark Booth, English Language & Usage, StackExchange, Jul 16 '12
【参考】“アメリカ英語とイギリス英語 その1”, JeffのEnglish Tips, 山田翻訳事務所
【参考】“イギリス英語とアメリカ英語スペルの違いによる歴史的な背景について”, by Mairi, イギリス英語を学習する為の専門サイト:ブリティッシュ英語, 30/01/2013
【参考】“イギリス英語とアメリカの英語は何故違うのでしょうか?”, by Mairi, イギリス英語を学習する為の専門サイト:ブリティッシュ英語, 04/03/2013
【参考】“autumnとfallの違いについて:autumnとfallのどちらがイギリス英語なのか?”, by Mairi, イギリス英語を学習する為の専門サイト:ブリティッシュ英語, 23/01/2014
【参考】““Water “あなたはなんて読む? - イギリス英語とアメリカ英語の違い”, by 間宵ひろみ, Dear B, 2015.03.06
【参考】“イギリス英語とアメリカ英語は何が違う?6つの違いを徹底比較”, by AYAKA KOMIYAMAさん, company Magazine, 2016年03月15日
【参考】“イギリス英語とアメリカ英語の違いまとめ”, by AYAKA こにゃんたさんさん, NAVERまとめ, 2016年03月31日
【動画】“イギリス英語vsアメリカ英語!字幕付き!// British English vs American English!〔#425〕”, by バイリンガール英会話 | Bilingirl Chika, YouTube, 2016/04/27
【動画】“British English vs American English”, by Rachel & Jun, YouTube, 2016/10/26
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