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2016年09月08日

第356回:“Russia - our sacred homeland” ―「ロシア、聖なる我らの国よ」 (『ロシア連邦国歌』)

こんにちは! ジム佐伯です。
英語の名言・格言やちょっといい言葉、日常会話でよく使う表現などをご紹介しています。



第356回の今日はこの言葉です。
“Russia - our sacred homeland”

「ロシア、聖なる我らの国よ」
という意味です。
これは『ロシア連邦国歌(State Anthem of the Russian Federation)』の歌い出しの言葉を英語に訳したものです。
“Russia - our sacred homeland,
 Russia - our beloved country.”


「ロシア、聖なる我らの国よ
 ロシア、愛しき我らの国よ」
と続きます。ロシア語の歌詞では次のようになります。
“Россия − священная наша держава,
 Россия − любимая наша страна.”

(ラシーヤ、スヴェシェーンナヤ・ナーシャ・デルジャーヴァ
 ラシーヤ、リュビーマーヤ・ナーシャ・ストラナー)

0356-flag_of_russia.jpg
Image courtesy of Supertrooper, published on 15 August 2015 / FreeDigitalPhotos.net

実はこの歌、旧ソ連が使っていた『ソビエト連邦国歌(State Anthem of the Soviet Union)』と同じメロディーが使われています。社会主義国の盟主だった旧ソ連の国歌として、壮大なスケールを感じさせるメロディーが使われています。
1917年2月、ロシア革命によってロシア帝国が倒されます。そして同年10月のウラジーミル・レーニン(Vladimir Lenin)が指導した十月革命と5年にわたるロシア内戦を経て、1922年にソビエト社会主義共和国連邦が成立します。ソビエト連邦共産党が一党独裁体制で支配する世界で初めての社会主義国家です。
ソ連は第二次世界大戦(1939-1945年)終結時に、かつてナチスドイツに制圧されていた中欧および東欧諸国を占領します。そしてその地域の国々は東ドイツも含めてソ連型の社会主義国となり、ソ連の衛星国となります。世界はアメリカが主導する西側の資本主義諸国とソ連が主導する東側の社会主義諸国の両陣営にわかれ、主義主張の対立と軍事的な緊張が高まります。「冷戦(Cold War)」の始まりです。

0356-cold_war_map_1959.png
冷戦時代の世界の様子(1959年当時, Wikipediaより)
青:北大西洋条約機構(NATO)、空色:NATO以外のアメリカ寄りの西側諸国、
ワインレッド:ワルシャワ条約機構(WTO)、ピンク:WTO以外のソ連寄りの東側諸国、
灰色:非同盟諸国、薄緑:植民地

By Sémhur [GFDL or CC BY-SA 3.0], via Wikimedia Commons

そんなソ連は建国当時、『インターナショナル(フランス語:L'Internationale)』という労働者の歌を国歌として定めていました。
この歌は1871年にフランスで一時的に政権を握ったパリ・コミューン(Paris Commune)の蜂起の直後に作られたものです。パリ・コミューンは史上初めて「プロレタリアート独裁」による自治政府を宣言します。自治政府は2ヶ月後にヴェルサイユ政府軍に鎮圧されますが、短期間で実施された様々な社会民主主義政策はその後の世界に大きな影響を与えます。
その後『インターナショナル』は世界中の言語に訳され、労働者や社会主義者の象徴的な歌となります。
1922年にソ連が成立した時も、当然のようにソ連の国歌として採用されます。


【動画】“ソビエト社会主義共和国連邦旧国歌「インターナショナル(L'Internationale/Интернационал)」”, by withmarron, YouTube, 2007/11/30

しかし1943年、第二次世界大戦のさなかにソ連は全く新しい国歌を制定することになります。
当初は一般から公募しますが、レーニンを後継した第2代の最高指導者ヨシフ・スターリン(Joseph Stalin)の気に入る作品が集まりません。結局1936年にアレクサンドル・アレクサンドロフ(Alexander Alexandrov)が作曲した『ボリシェヴィキ党歌』のメロディーを流用し、児童文学作家セルゲイ・ミハルコフ(Sergei Mikhalkov)の詩を改作して新国歌が制定されます。
勇壮なメロディーと共産主義の勝利を謳った歌詞が特徴です。


【動画】“ソビエト社会主義共和国連邦 国歌「ソビエト連邦国歌(祖国は我らのために)」(Государственный гимн СССР)日本語訳/National Anthem of Soviet Union”, by World National Anthems, YouTube, 2015/10/13

この旧ソ連国歌、勇壮ながらも哀調を帯びたメロディーでなかなかの名曲だと思います。
アメリカなどから「悪の帝国(Evil Empire)」と批判され、厳しい秘密主義による情報統制と大量の核ミサイルを所有する強大な軍事力から、不気味で怖いイメージを持たれていたソ連のイメージにもぴったりでした。
冷戦時代に作られたソ連やロシア人が悪役の映画でも、国歌演奏によりソ連の人たちがナショナリズムを高揚させるシーンがたびたび描かれました。
このころのソ連側のキャラクターは、冷酷無比な政治家や卑劣なスパイ、感情を持たないロボットのような軍人などがほとんどでした。


【動画】“Rocky IV - Ivan Drago's Intro [Soviet Anthem] BLU RAY 1080p HD (『ロッキー4』 - イワン・ドラゴの入場曲(ソビエト連邦国歌)Blu-Ray 1080p 高画質)”, by Nazza, YouTube, 2013/04/15

しかし冷戦末期にソ連書記長(のち大統領)のミハイル・ゴルバチョフ(Mikhail Gorbachev)が主導した「政治改革(ペレストロイカ)」や「情報公開(グラスノスチ)」が進むと、映画でも血の通ったロシア人が登場し、西側諸国の主人公と心を通わせるストーリーが出てくるようになります。
アーノルド・シュワルツェネッガー(Arnold Schwarzenegger)がモスクワ市警の刑事を演じた『レッド・ブル(Red Heat)』(1988年アメリカ)や、ショーン・コネリー(Sean Connery)がソ連の最新型ミサイル原子力潜水艦の艦長を演じた『レッド・オクトーバーを追え!(The Hunt for Red October)』(1990年アメリカ)などがそうです。
特に『レッド・オクトーバーを追え!』は冷戦終結後に冷戦時代の物語が公開されるという絶妙なタイミングでした。この映画にもソ連国歌のシーンがあります。とても面白い映画ですので、未見の方はぜひご覧になって下さい。


【動画】“The Hunt for Red October [1990] - Submarine Crew Sings Soviet Anthem scene [HD] (High) (『レッド・オクトーバーを追え!』(1990年) - 潜水艦乗組員がソ連国歌を歌うシーン [高画質])”, by alexandermark1, YouTube, 2013/04/02

『レッド・オクトーバーを追え!』が公開された1990年、ベルリンの壁が壊されて東西ドイツが再統一をはたします。そして翌1991年、ゴルバチョフの改革路線に反対する勢力が軍事クーデターを起こします。ゴルバチョフは軟禁されますが、ボリス・エリツィン(Boris Yeltsin)らと市民の抵抗でクーデターは失敗、その年の12月にソ連は消滅してロシア連邦が成立。初代の大統領にはエリツィンが就任します。
エリツィン大統領はロシアの脱ソビエト化を進めるため、ミハイル・グリンカ(Mikhail Glinka)作曲の『愛国歌』を暫定国歌に定めます。しかしこの曲は歌詞がなく、なかなか定着しませんでした。
2000年にエリツィンに代わってウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)が第2代ロシア連邦大統領に就任します。プーチンは「強いロシア」を目指して国民の支持を得るために、強かったソ連のイメージを想起させる旧ソ連の国歌のメロディーを復活させる国歌法を制定します。そして旧ソ連の国歌の作詞者であるセルゲイ・ミハルコフが新たな歌詞をつけ、2001年1月1日から新たな『ロシア連邦国歌』が使われるようになります。
大国にふさわしい荘厳なメロディーを持つ国歌の復活は、多くの国民に歓迎されます。


【動画】“ロシア連邦 国歌「ロシア連邦国歌(祖国は我らのために)」(Гимн Российской Федерации)日本語訳/National anthem of Russia”, by World National Anthems, YouTube, 2014/11/11

“Russia - our sacred homeland”
ロシア、聖なる我らの国よ。

世界最大の面積と豊富な地下資源を持ち、今なお強大な軍事力を持つロシア。
2014年に発生したウクライナ騒乱の際に、ロシア軍と思われる武装勢力がクリミア半島に侵攻しました。
その後ロシアはクリミア半島をロシア領として編入しました。
アメリカや西欧諸国や日本などは反発し、新たな冷戦が始まることも懸念されています。
シリア内戦やISとの戦いでも、米英仏などと足並みがそろっているようには見えません。
旧ソ連の国歌に続いて旧ソ連の覇権主義や秘密主義が復活してしまわないことを祈ります。
神よロシアを護りたまえ。

さて、ここ数回にかけて世界の国々の国歌をご紹介してきましたが、ここでいったん一区切りとさせて頂きます。お付き合い頂きまして、ありがとうございました。
オリンピックがきっかけで国歌をご紹介しようと思いたったのですが、オリンピックも終わってパラリンピックが始まりましたね。各国選手たちの活躍を応援しましょう。


【動画】“Russian National Anthem played at president Vladimir Putin's Inauguration (ウラジーミル・プーチン大統領就任式で演奏されるロシア国歌)”(2012年), by Rafael Yebra, YouTube, 2013/03/04

それでは今日はこのへんで。
またお会いしましょう! ジム佐伯でした。

【関連記事】第282回:“It is 3 minutes to midnight.” ―「人類滅亡まであと3分」(世界終末時計), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2016年02月06日
【関連記事】第355回:“Arise, children of the Fatherland!” ―「行こう祖国の子らよ!」 (フランス国歌『ラ・マルセイエーズ』), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2016年09月04日
【関連記事】第353回:“Oh, say can you see” ―「ああ、見えるだろうか」 (アメリカ国歌『星条旗』), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2016年08月27日
【関連記事】第351回:“God Save the Queen” ―「神よ女王を守りたまえ」 (イギリス国歌『女王陛下万歳』), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2016年08月19日
【関連記事】第349回:“Thousands of years of happy reign be thine!” ―「君が代は千代に八千代に」 (『君が代』), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2016年08月13日

【参考】Wikipedia(日本語版英語版

【動画】“ソビエト社会主義共和国連邦旧国歌「インターナショナル(L'Internationale/Интернационал)」”, by withmarron, YouTube, 2007/11/30
【動画】“ソビエト社会主義共和国連邦 国歌「ソビエト連邦国歌(祖国は我らのために)」(Государственный гимн СССР)日本語訳/National Anthem of Soviet Union”, by World National Anthems, YouTube, 2015/10/13
【動画】“Rocky IV - Ivan Drago's Intro [Soviet Anthem] BLU RAY 1080p HD (『ロッキー4』 - イワン・ドラゴの入場曲(ソビエト連邦国歌)Blu-Ray 1080p 高画質)”, by Nazza, YouTube, 2013/04/15
【動画】“The Hunt for Red October [1990] - Submarine Crew Sings Soviet Anthem scene [HD] (High) (『レッド・オクトーバーを追え!』(1990年) - 潜水艦乗組員がソ連国歌を歌うシーン [高画質])”, by alexandermark1, YouTube, 2013/04/02
【動画】“ロシア連邦 国歌「ロシア連邦国歌(祖国は我らのために)」(Гимн Российской Федерации)日本語訳/National anthem of Russia”, by World National Anthems, YouTube, 2014/11/11
【動画】“Russian National Anthem played at president Vladimir Putin's Inauguration (ウラジーミル・プーチン大統領就任式で演奏されるロシア国歌)”(2012年), by Rafael Yebra, YouTube, 2013/03/04




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posted by ジム佐伯 at 07:00 | ロンドン ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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