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2016年07月25日

第342回:“NAUTILUS 90 NORTH” ―「ノーチラス、北緯90度」 (原子力潜水艦ノーチラス)

こんにちは! ジム佐伯です。
英語の名言・格言やちょっといい言葉、日常会話でよく使う表現などをご紹介しています。

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By U.S. Post Office [Public domain], via Wikimedia Commons

第342回の今日はこの言葉です。
“NAUTILUS 90 NORTH”

「ノーチラス、北緯90度」
という意味です。
これはアメリカ海軍の攻撃型原子力潜水艦「ノーチラス(USS Nautilus, SSN-571)」が打電した言葉です。
また、北緯90度とは北極点のことです。これは1958年にノーチラスが世界で初めて潜航状態で北極点の氷の下を通過した際に打電したものです。

0342-uss_nautilus_ssn-571_085701.jpg
ノーチラス
By U.S. Navy [Public domain], via Wikipedia

ノーチラスは世界最初の原子力潜水艦です。
それまでの潜水艦は動力としてディーゼルエンジンを使っていました。
ディーゼルエンジンを作動させるためには燃焼のために大量の空気を吸入する必要があります。
そのため吸排気のパイプを長く伸ばしたシュノーケルを使ったり、水上でディーゼルエンジンを動かして発電した電力をバッテリーに蓄えて電力で推進したりしていました。
したがって、いくら潜水艦といっても必ずどこかで浮上しなければいけないという決定的な弱点があったのです。
それに対して原子炉の運転には空気を必要せず、吸気だけでなく排気もありません。原子力推進が実現して初めて、潜水艦は長時間深海に潜ったまま隠密作戦を実施することが可能となるのです。

0342-nautiluscore.jpg
ノーチラスの進水式(1954年撮影)
By U.S. Navy photo/Released [Public domain], via Wikimedia Commons

ノーチラスは1951年に議会で予算が承認されて翌年建造が開始され、1954年1月に進水して同年9月に就役します。
さらに翌年の1955年1月、ノーチラスは初めて原子力を使っての試験航海に成功します。この時ノーチラスが打電した歴史的なメッセージも有名です。
“UNDERWAY ON NUCLEAR POWER”
「われ原子力にて航行中」


0342-ss-571_nautilus_trials.jpg
ノーチラスの試験航海
By U.S. Navy [Public domain], via Wikimedia Commons

この試験航海でノーチラスは、アメリカ北東沿岸にあるコネティカット州のニューロンドン潜水艦基地からカリブ海に浮かぶプエルトリコの首都サン・ファンまで、約2000キロ(1100海里)を潜水したままで90時間で到達します。
これは当時の潜水艦による連続潜航距離、連続潜航時間、連続潜航速度すべてを圧倒的に更新する記録です。
ノーチラスは原子力によって、1300海里(2400キロ)を超える連続行動と、燃料補給(燃料棒の交換)をせずに6万2000海里(11万5000キロ)を超える航行を可能とします。単純計算で地球を3周近く回れる数字です。

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ニューヨークシティに入港するノーチラス(1958年撮影)
By US Navy [Public domain], via Wikimedia Commons

この時代、アメリカとソ連による冷戦構造のもとで両陣営が軍拡競争をくりひろげ、朝鮮戦争や核兵器開発競争で対立と疑心暗鬼が強まっていました。
そして1957年にソ連が人工衛星スプートニク1号(Sputnik 1, ロシア語 : Спутник-1)の打ち上げに成功すると、アメリカは大陸間弾道弾(ICBM: Intercontinental ballistic missile)による核攻撃の恐怖に襲われます。当時アメリカはまだICBMの技術を確立しておらず、射程が短くて済む潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM: Submarine-Launched Ballistic Missile)の開発を急ピッチで進めていました。
そのため北極海の氷の下を自由に航行することは軍事上ますます重要になりました。

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サンシャイン作戦におけるノーチラスの経路
By Official US Navy photograph courtesy of the US Navy Arctic Submarine Laboratory. (Navsource.org) [Public domain], via Wikimedia Commons

そこで1958年4月、ノーチラスは北極海の氷の下を通って北極点を通過する航海に出発します。
これは「サンシャイン作戦(Operation Sunshine)」と呼ばれます。
パナマ運河を通って太平洋に抜け、北上してベーリング海峡から北極海に入ったノーチラスは、8月3日に潜航したまま北極点の通過に成功します。船舶としての初めての北極点通過です。
ノーチラスは次のようなメッセージを打電します。
“NAUTILUS 90 NORTH”
「ノーチラス、北緯90度」



【動画】“USS NAUTILUS: Operation Sunshine (1959) (ノーチラス号:サンシャイン作戦(1959年))”, by Cold War Gallery, YouTube, 2011/04/22

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ノーチラスの航海士による北極点通過時の位置記録
By Jannej [Public domain], via Wikimedia Commons

ところで、「ノーチラス(Nautilus)」という名前はラテン語でオウムガイを意味する言葉です。
「ノーチラス号」といえば皆さん何を思い出しますか。
何といってもフランスのSF作家ジュール・ヴェルヌ(Jules Gabriel Verne, 1828-1905)の小説『海底二万里(Twenty Thousand Leagues Under the Sea, フランス語原題: Vingt mille lieues sous les mers)』(1870年)に出てくるノーチラス号が有名ですよね。1954年にはディズニー映画にもなっています。しくもUSSノーチラスが就役したのと同じ年です。
謎の人物ネモ船長が建造して操艦する万能潜水艦ノーチラス号は、時代を超越したオーバーテクノロジーの塊として強烈な印象を読者に与えました。
世界初の原子力潜水艦に「USSノーチラス」と名付けた人のセンスは高く評価されるべきだと僕は思います。


【動画】“"20.000 Leagues Under the Sea" (1954) Trailer (『海底2万マイル』(1954年)予告編)”, by bttfportugal, YouTube, 2006/10/22

また、庵野秀明が総監督を務めたアニメ『ふしぎの海のナディア(Nadia, The Secret of Blue Water)』(1990-1991年)はヴェルヌの『海底二万里』を原案にしており、やはりネモ船長とノーチラス号が登場します。
この作品ではノーチラス号はさらにものすごいオーバーテクノロジーぶりを発揮します。


【動画】“Fushigi no Umi no Nadia ふしぎの海のナディア - Nadia : The Secret of Blue Water - OP1 HD”, by Yoann Démare, YouTube, 2012/09/23

“NAUTILUS 90 NORTH”
ノーチラス、北緯90度。

ここ何回か続けて極地探検家をご紹介してきました。
フラム号で氷に閉じ込められたまま北極点をめざしたノルウェーのフリチョフ・ナンセン
世界で初めて北極点に到達したと主張しながらもその信憑性しんぴょうせいが疑問視されたアメリカのロバート・ピアリ
ピアリの北極点初到達を聞いて目標を南極点初到達に急遽きゅうきょ変更し、見事にそれを達成したノルウェーのロアール・アムンセン
アムンセンにわずかに先を越され、帰路に悪天候に見舞われて命を落としたイギリスのロバート・スコット
アムンセンとスコットとほぼ同時期に南極点到達をめざし、大和やまと雪原ゆきはらまで到達した白瀬のぶ
そして氷の下を潜航したまま北極点まで到達したしたアメリカの原子力潜水艦ノーチラス
今や北極も南極も観光ツアーで気軽に行ける時代となりました。
しかし彼らの偉大さは決して色あせることはありません。これからも長く語り継がれていくことでしょう。
1980年にノーチラスは退役しました。今はコネティカット州グロトンのニューロンドン潜水艦基地で記念艦として公開されており、年間25万人が訪れています。

0342-uss_nautilus_ssn571.jpg
公開されているUSSノーチラス
By Victor-ny (Own work) [CC BY-SA 3.0 or GFDL], via Wikimedia Commons

それでは今日はこのへんで。
またお会いしましょう! ジム佐伯でした。

【関連記事】第336回:“May Norwegians show the way!” ―「ノルウェー人よ、道を示したまえ!」 (フリチョフ・ナンセン), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2014年07月4日
【関連記事】第337回:“The Pole at last!!!” ―「ついに極点だ!!!」 (ロバート・ピアリ), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2014年07月7日
【関連記事】第338回:“Adventure is just bad planning.” ―「冒険というのは準備が足りない時の言い訳にすぎない」 (ロアール・アムンセン), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2014年07月11日
【関連記事】第340回:“Great God! this is an awful place.” ―「神よ!ここは恐ろしい所です」 (ロバート・スコット), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2016年07月17日
【関連記事】第341回:“I vow to raise our Japanese imperial flag at the South Pole.” ―「南極点に日の丸を立てて見せます」 (白瀬矗), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2016年07月21日

【参考】Wikipedia(日本語版英語版
【参考】“Remembering “Nautilus 90 North” (「ノーチラス、北緯90度」を回想する)”, By Don Keith, N4KC, ARRL, the national association for Amateur Radio, 07/24/2009
【参考】“Submarine Force Museum (潜水艦艦隊博物館)ウェブサイト”

【動画】“USS NAUTILUS: Operation Sunshine (1959) (ノーチラス号:サンシャイン作戦(1959年))”, by Cold War Gallery, YouTube, 2011/04/22
【動画】“"20.000 Leagues Under the Sea" (1954) Trailer (『海底2万マイル』(1954年)予告編)”, by bttfportugal, YouTube, 2006/10/22
【動画】“Fushigi no Umi no Nadia ふしぎの海のナディア - Nadia : The Secret of Blue Water - OP1 HD”, by Yoann Démare, YouTube, 2012/09/23




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posted by ジム佐伯 at 07:00 | ロンドン ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 戦争と平和 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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