英語の名言・格言やちょっといい言葉、日常会話でよく使う表現などをご紹介しています。
第333回の今日はこの言葉です。
“Brexit”「ブレグジット」
これはイギリスのEU離脱を意味する言葉です。
イギリスの代名詞でもある“Britain”(ブリテン)と、「出ていく」という意味の“exit”(エグジット)を組み合わせた造語です。
「ブレグズィット」と「ブレクスィット」とどちらにも読まれます。
日本では「ブレグジット」の記載が多いようですね。
今回は急遽予定を変更してこの言葉をご紹介します。

By Dave Kellam (Flickr: Flagging Support), cropped by Jim Saeki on 24 June 2016 [CC BY-SA 2.0], via Wikimedia Commons
いやー、驚きましたね。
既に大きく報道されている通り、イギリスのEU(欧州連合, European Union)からの離脱の是非を問う国民投票(referendum)が6月23日に行われました。
直前の世論調査と当日の都市部の開票の途中経過ではEU残留派が有利だったのですが、一夜明けた24日朝の開票結果はまさかのEU離脱派の勝利。
残留を支持していたデイヴィッド・キャメロン首相(David William Donald Cameron, 1966-)は直ちに辞意を表明しました。

デイヴィッド・キャメロン(2010年撮影)
David Cameron's official portrait from the 10 Downing Street website [OGL], via Wikimedia Commons
EU離脱の賛成派は、
“Vote Leave”
「離脱へ投票を」
“Brexit”を呼びかけました。
「ブレグジット(英国離脱)」

By diamond geezer, Taken on June 19, 2016 [Some rights researved] via Flickr
一方のEU残留賛成派は、
“Vote Remain”
「残留へ投票を」
“Bremain”を呼びかけました。
「ブリメイン(英国残留)」

By Jim Saeki, 22 June 2016
一昨年の9月に行われたスコットランド独立の住民投票(2014年)ではスコットランドが独立するのではと心配されましたが、結局開票結果は44.7%対55.3%で否決されました。
今回も、いろいろ騒がれても結局は残留になるだろうと予想されていました。
しかしフタを開けてみると、なんと離脱支持が51.9%、残留支持が48.1%で離脱が決まってしまいました。
これは市場も予想していなかったようで、為替レートや株価が大きな影響を受けました。
【動画】“Brexit Wins | UK Votes to Leave EU (ブレグジットが勝利:EU離脱の国民投票)”, by ABC News, YouTube, 2016/06/24
はっきり言って、当のイギリス人もまさかEU離脱に決まるとは思わなかったことでしょう。
都市部では残留支持が離脱支持を上回っており、今回も開票結果にはっきりと出ていました。
都市部は離脱、地方は残留です。
あと富裕層は残留、庶民層は離脱。
若者は残留、老人は離脱。
EU主導の現状に不満のある層が思いのほか多かったということでしょうか。
ただ地方といってもスコットランドや北アイルランドははっきりと残留支持でした。
これを受けてスコットランドではイギリスからの独立の話が再び盛り上がっています。

地域別の開票結果
(青が離脱、緑が残留)
By Mirrorme22 Nilfanion: English and Scottish council areas TUBS: Welsh council areas Sting: Gibraltar [CC BY-SA 3.0], via Wikimedia Commons
EU離脱をしたい理由については、
・莫大な拠出金の負担でメリットよりも持ち出しが多い
・移民が自由に来るため物価が高騰したり国内財政が逼迫する一方で職が奪われる
・そもそも大陸の奴らにいちいちうるさく言われたくない(僕はこれが一番大きな理由なのではと思います)
など様々です。
そのあたりは国連でのキャリアも持つ「めいろま」ことロンドン在住の谷本真由美さんの記事「イギリスがEU離脱した理由 - Why UK left EU」にわかりやすくまとめられています。
一方のEU各国は英国の離脱に強い懸念と遺憾を表面しています。EUの理念にとっても財政にとっても危機的な事態だからです。
【動画】“Merkel and Hollande 'deeply regret' Britain's vote to leave the EU (メルケルとオランドが「強い遺憾」を表明:英国のEU離脱を受けて)”, by euronews (in English), YouTube, 2016/06/24
結果が出た昨日の朝は僕の職場のイギリス人たちも何だかざわざわしていて、中には明らかに動揺している人も見受けられました。都市部で残留支持の人が多かったからかもしれません。ランチタイムもなんだか元気がない感じでした。
しかし夕方には週末ということもあり、パブなどで普通に談笑したり騒いだりするいつもの風景が見られました。
メディアはほぼこの話題で一色となり、世界中がこのニュースに注目しました。
ネットも様々な記事やツイートで溢れました。
【動画】“Brexit vote: "See EU later," "Be afraid", the press reacts to UK leaving the EU (ブレグジット投票:「スィー・EU・レイター(EUよさようなら)」「怖い」など報道が英国のEU離脱に反応)”, by FRANCE 24 English, YouTube, 2016/06/24
え? 僕自身はどちらを支持するか?
そんなの残留に決まってるじゃないですか。
いろいろ理由はありますが、何といっても僕は給料を英ポンドで受け取っています。
離脱を受けてのポンド急落で、円換算の給料が悲しいほど目減りしてしまいました。
日本にいる時はいくら円安になっても悲しくなかったのに、おかしなものです。

By Serge Bertasius Photography, published on 03 February 2013. Image courtesy of FreeDigitalPhotos.net
残留派として活動したのは保守党のデイヴィッド・キャメロン首相に加えて同じ保守党の財務大臣ジョージ・オズボーン(George Osborne, 1971-)、先日の選挙でムスリムとして初めてロンドン市長となった労働党のサディク・カーン(Sadiq Khan, 1970-)などです。
一方で離脱派として活動したのは前ロンドン市長でもある保守党のボリス・ジョンソン(Alexander Boris de Pfeffel Johnson, 1964-)や、イギリス独立党の党首ナイジェル・ファラージ(Nigel Farage, 1964-)などです。
ボリス・ジョンソンは辞意を表明したキャメロン首相の後任として次期首相の有力候補とされています。
僕はこの人を見るとどうしてもアメリカ大統領選の共和党代表候補者であるドナルド・トランプ(Donald John Trump, 1946-)を思い出します。髪型は少し違いますが、全体の雰囲気はなんだかそっくりだと思いませんか?

ボリス・ジョンソン(2009年撮影)
By Boris_Johnson_-opening_bell_at_NASDAQ-14Sept2009-3c.jpg: *Boris Johnson -opening bell at NASDAQ-14Sept2009.jpg: Think London derivative work: Snowmanradio (talk) derivative work: Off2riorob [CC BY 2.0], via Wikimedia Commons
そして気になるのは今後いったいどうなるか。
しかし正確には誰も予想ができない状況だと思います。
キャメロンが辞任し、分離派の新しい首相のもとで手続きが進められるでしょう。
スコットランド独立の動きが再び強まるでしょう。
EUのほかの国でもEU分離の是非や可能性を問う議論が巻き起こるでしょう。
ポンドと株価は下落し、しばらくは低迷するかもしれません。
一方で円は高止まりして、日本経済は厳しくなるかもしれません。
いずれにしても、しばらくは世界中で不安定な状況が続くと思います。
イギリスでは、国民投票が締め切られた直後から、「EU離脱後何が起きるか」というGoogle検索が急増したそうです。
イギリス人、そこちゃんと考えてから投票せんかい!
【動画】“UK votes to leave EU: What now? BBC News (英国がEU離脱に投票:いま何が起きる? BBCニュース)”, by BBC News, YouTube, 2016/06/24
“Brexit!”
ブレグジット!
まさかのまさかのEU離脱。
びっくりです。
ちなみに投票率は72.2%でした。日本のひどい投票率から見ると驚くほど高い数字ですが、それでも4人に1人は投票していません。もしその人たちが投票に行ったら、結果は変わっていたかもしれません。
EU残留派で投票にいかなかった人は、さぞや後悔したことでしょう。
僕は今回の国民投票で、投票することって本当に大切なんだと実感しました。今回のようにわずかの差で世界にもの凄い影響を与えることが決まってしまうこともあるのです。
日本でも参院選が始まりました。僕も日本大使館に行って在外公館投票をしようと思っています。
【動画】“Brexit: David Cameron resigns as UK votes to leave - BBC News (ブレグジット:デイヴィッド・キャメロンが英国離脱の国民投票を受けて辞任)”, by BBC News, YouTube, 2016/06/24
それでは今日はこのへんで。
またお会いしましょう! ジム佐伯でした。
週刊ニューズウィーク日本版 「特集:BREXITの衝撃」〈2016年7/5号〉 [雑誌]
【関連記事】第285回:“You're fired!” ―「お前はクビだ!」 (ドナルド・トランプ), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2016年02月20日
【関連記事】第256回:“Keep calm and carry on.”―「冷静に続けよう」(イギリス政府), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2015年11月08日
【参考】Wikipedia(日本語版,英語版)
【参考】“【BrexitかBremainか】”, by 飯田香織, 飯田香織ブログ 担々麺とアジサイとちょっと経済, 2016年06月24日
【参考】“英国民投票、EU離脱派が勝利へ=BBC”, REUTERS ロイター, 24 June 2016
【参考】“イギリスがEU離脱した理由 - Why UK left EU”, by 谷本 真由美 @May_Roma, WirelessWire News, 2016.06.24
【参考】“【英国民投票】 離脱派が勝った8つの理由”, BBC News Japan, 2016年06月25日
【参考】“Brexit: What happens if the UK leaves the EU? (ブレグジット:英国のEU離脱で何が起こるか?)”, by Andrew Grice, WirelessWire News, 24 June 2016
【参考】“EU離脱したらどうなる?英国民、投票後にグーグル検索急増”, スポニチAnnex, 2016年6月25日
【参考】“【EU離脱】えっ今さらその言葉をググるの? 離脱に投票し後悔する人たち”, by 溝呂木佐季 BuzzFeed News, BussFeed, 2016/06/25
【参考】“英EU離脱で「英連邦」が超巨大経済圏として出現する”, by 上久保誠人, DIAMOND Online, 2016年6月21日
【参考】“「ブレグジット」に特別待遇ない、2年でEU離脱を=独欧州議員”, REUTERS ロイター, 2016年06月24日
【参考】“イギリスがEUを離脱した理由としてわかりやすい画像が話題に。”, 本日のトレンド, 2016/6/27
【参考】“「ブレグジット後悔」論のまやかし”, by コリン・ジョイス, Newsweek日本版, 2016年06月30日
【動画】“Brexit Wins | UK Votes to Leave EU (ブレグジットが勝利:EU離脱の国民投票)”, by ABC News, YouTube, 2016/06/24
【動画】“Merkel and Hollande 'deeply regret' Britain's vote to leave the EU (メルケルとオランドが「強い遺憾」を表明:英国のEU離脱を受けて)”, by euronews (in English), YouTube, 2016/06/24
【動画】“Brexit vote: "See EU later," "Be afraid", the press reacts to UK leaving the EU (ブレグジット投票:「スィー・EU・レイター(EUよさようなら)」「怖い」など報道が英国のEU離脱に反応)”, by FRANCE 24 English, YouTube, 2016/06/24
【動画】“UK votes to leave EU: What now? BBC News (英国がEU離脱に投票:いま何が起きる? BBCニュース)”, by BBC News, YouTube, 2016/06/24
【動画】“Brexit: David Cameron resigns as UK votes to leave - BBC News (ブレグジット:デイヴィッド・キャメロンが英国離脱の国民投票を受けて辞任)”, by BBC News, YouTube, 2016/06/24
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