英語の名言・格言やちょっといい言葉、日常会話でよく使う表現などをご紹介しています。
第320回の今日はこの言葉です。
“London Bridge Is Broken Down”「ロンドン橋落ちた」
という意味です。
これは古くから伝わるイギリスの童謡です。テムズ川にかかるロンドン中心部のロンドン・ブリッジのことを歌ったものです。日本でも『ロンドン橋』は誰でも歌える童謡として定着しています。
アメリカでは、
“London Bridge Is Falling Down”という歌詞が一般的です。
ここイギリスではもともと使われていた“broken down”を使うことが多いようです。

中世のロンドン・ブリッジ(1745年の絵画)
Duffman~commonswiki [Public domain], via Wikimedia Commons
みなさんご存じのように、イギリスでは古くから伝わる童謡を「マザー・グース(Mother Goose)」と呼びます。この『ロンドン橋』もその一つです。18世紀に歌われるようになったと見られ、1744年に発行された童謡集に初めて登場します。
「マザー・グース」という呼び名の由来ですが、フランスの詩人シャルル・ペロー(Charles Perrault, 1628-1703)の童話集『昔ばなし(Histoires ou contes du temps passé, 英語: Histories or Tales of Past Times)』(1697年)から来ているようです。

シャルル・ペロー(フィリップ・ラルマン画, 1672年)
Philippe Lallemand [Public domain], via Wikimedia Commons
この童話集が英訳されて1729年にイギリスで出版された時、原本の口絵にあった
“Contes de ma mère l'Oye”も英語になって“Mother Goose's Tales”という副題がつけられ、後には本のタイトルになります。
(コント・ド・マ・メール・ロワ)
「ガチョウ母さんのお話」
この本によってイギリス人にとって「おとぎ話といえばマザー・グース」となり、おとぎ話と関連が深い古くからの童謡も「マザー・グースの歌」と呼ばれるようになったと言われています。
なお、新しい楽曲も含めた「童謡」全般を表す言葉は「ナーサリー・ライム(Nursery Rhymes)」と呼ばれます。

英訳されたペローの『昔ばなし』の口絵と中表紙(1729年)
By Charles Perrault (author) [Public domain], via Wikimedia Commons
『ロンドン橋』の歌詞は次のように始まります。
“London Bridge is broken down,
Broken down, broken down.
London Bridge is broken down,
My fair lady.”
「ロンドン橋落ちた
落ちた 落ちた
ロンドン橋落ちた
マイ・フェア・レディ」

ウォルター・クレインの童謡集に収録された『ロンドン橋』(1877年頃)
歌詞やメロディが現在のものと異なる
By Walter Crane (1845–1915) [Public domain], via Wikimedia Commons
歌はこのあと、落ちてしまったロンドン橋をかけなおす努力が延々と繰り返されます。
最初は木と泥で造ります。(2番)
しかし流れてしまいます。(3番)
次に
しかし崩れてしまいます。(5番)
次に鉄と
しかし曲がってしまいます。(7番)
次に銀と金で造ります。(8番)
しかし盗まれてしまいます。(9番)
そして10番はこのように歌われます。
“Set a man to watch all night,歌詞にはいろいろバリエーションはあるのですが、こんな感じです。そしてさらに寝ずの番が眠くなってしまったり、眠くならないようにタバコを吸わせたりと、歌は続きます。寝ずの番をおいて解決したかどうかはわかりません。
Watch all night, watch all night.
Set a man to watch all night,
My fair lady.”
「寝ずの番を置こう
置こう 置こう
寝ずの番を置こう
マイ・フェア・レディ」
また、実はこの「寝ずの番」とは橋が流されないようにするための人柱のことなのではないかという説もあります。
【動画】“Edewcate english rhymes - London bridge is falling down”, by eDewcate, YouTube, 2012/07/22
この歌、子供の遊びにも使われますよね。
二人の子供が向かい合って両手でアーチを作り、みんなで歌を歌いながらほかの子供がアーチの下をくぐりぬけ、「マイ・フェア・レディ」が終わるとアーチを下ろして子供を一人つかまえる、という遊びです。
日本語の歌詞では確か「さあどうしよう」だったと思います。
イギリスでも遊び方はまったく同じです。歌と共に遊び方も日本に伝わったのでしょう。

『ロンドン橋』で遊ぶ子供たち(1898年撮影)
By Alexander B. McBride, Grand Marais, Michigan. [Public domain], via Wikimedia Commons
僕はこの遊びの影響で、この橋(↓)が「ロンドン・ブリッジ」だと思っていました。手でアーチを作って上げ下げする遊びと橋の動きがそっくりだからです。そう思っていた人、手を挙げて下さい。けっこういらっしゃるのではないでしょうか。

これはタワー・ブリッジ(Tower Bridge)です。(2006年撮影)
By Diliff (Own Work) [CC BY-SA 3.0 or GFDL], via Wikimedia Commons
あと、この橋(↓)もよくロンドン・ブリッジと間違えられます。ロンドンを象徴するビッグ・ベン(Big Ben)の写真によく一緒に登場するからです。

これはウェストミンスター・ブリッジ(Westminster Bridge)です。(2008年撮影)
By Graeme Maclean (originally posted to Flickr as hdr parliament) [CC BY 2.0], via Wikimedia Commons
本当のロンドン・ブリッジはタワー・ブリッジのすぐ上流にあるこの橋(↓)です。ちょっと地味、いやかなり地味ですが、正真正銘、本物のロンドン・ブリッジです。

ロンドン・ブリッジ(2005年撮影)
David Williams, cropped by Jim Saeki on 22 May 2016 [CC BY-SA 2.0], via Wikimedia Commons
今のロンドン・ブリッジは1973年に完成したものですが、かつては何度も橋を架けられては流失したり焼失したり倒壊したりしました。それが「ロンドン橋」の童謡になったのです。
11世紀以降の記録だけでも1013年に戦争で焼失し、1091年には嵐で破壊され、1136年には火災で倒壊します。
その後、石造の橋が建設され、1209年に完成します。橋の上には住宅、商店、礼拝堂などが建設されます。まるでフィレンツェ(Firenze)のヴェッキオ橋(Ponte Vecchio)みたいです。中世の大きな橋は皆こうなのかもしれませんね。

中世のロンドン・ブリッジ(1632年の絵画)
By Claude de Jongh [Public domain], via Wikimedia Commons
この橋は何百年も長持ちしますが、橋の上の住宅はしばしば焼失します。1212年頃の大火や、1380年や1450年の戦乱などがそうです。1633年にも大火で焼失しますが、そのおかげで1636年のロンドン大火(The Great Fire of London)では被害はありませんでした。

1636年ロンドン大火とロンドン・ブリッジ(画面左側)
3年前の大火で建物が消失しており新たな被害はなかった
Painting by Unknown [Public domain], via Wikimedia Commons
そして18世紀の終わりに、交通量の増加と橋の老朽化にともない新しい橋の建設が決まり、1831年に大理石造りの新しい橋が完成します。
1902年に渋滞解消のために橋の幅を広げる工事を行いますが、これによって重みが増した橋は何と8年に1インチの割合で沈み始めます。

完成直後の近世のロンドン・ブリッジ(1832年の絵画)
下流部分には先代の橋の残骸が残っている
By Stephencdickson (Own work) [CC BY-SA 4.0], via Wikimedia Commons
1968年にロンドン・ブリッジはアメリカの企業家ロバト・P・マカロックに約250万ドル(当時の約9億円)で売却されます。マカロックはタワー・ブリッジと勘違いしてこれほど高額で購入したのではないかとも言われます。まるで僕みたいな間違いですが、マカロック本人は否定しているそうです。
大理石のロンドン・ブリッジはアリゾナ州のハバス湖(Lake Havasu)沿岸の町レイクハバスシティ(Lake Havasu)に1971年に移築され、今でも現役で第二の人生(?)を送っています。

レイクハバスシティに移築・復元された近世のロンドン・ブリッジ(1971年撮影)
Roman Eugeniusz [CC BY-SA 3.0], via Wikimedia Commons
そして1967年から5年間かけてコンクリートで造られ、1973年に開通したのが現在のロンドン・ブリッジです。
開通はエリザベス2世女王(Elizabeth II)によってなされました。
こちらはシンプルな機能美が特徴ですが、世界中で親しまれているロンドン・ブリッジとしてはちょっと寂しいような気もします。もうちょっと何とかならなかったのでしょうか。

ライトアップされる現代のロンドン・ブリッジ(2006年撮影)
By burge5000 (Flickr) [CC BY 2.0], via Wikimedia Commons
“London Bridge Is Broken Down”
ロンドン橋落ちた。
遠い昔から何度も流されたり焼け落ちたりして歌になったロンドン・ブリッジ。
お隣のタワー・ブリッジとよく間違えられてしまうロンドン・ブリッジ。
今では発展が進む金融街「シティ(City)」の風景にすっかりなじんで、街の顔として映画などにも登場します。
しかしさすがにもう流されることはないでしょう。これで寝ずの番もいりませんね。
【動画】“London Bridge is Falling Down”, by ABCkidTV - Nursery Rhymes, YouTube, 2015/09/25
それでは今日はこのへんで。
またお会いしましょう! ジム佐伯でした。
【関連記事】第234回:“A long life can pass by many milestones.”―「人生が長くなると多くの節目を通り過ぎるものです」(エリザベス2世), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2015年09月10日
【関連記事】第161回:“The rain in Spain stays mainly in the plain.”―「スペインの雨は主に平原に降る」(マイ・フェア・レディ), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2014年01月14日
【参考】Wikipedia(日本語版,英語版)
【参考】“本当は怖い?「ロンドン橋」の歌詞の意味をイギリスに住む私が事実に基づいて紹介”, by Monさん, 旅行の達人
【参考】“ロンドン橋落ちた”, by ffortuneさん and Lumiさん, f-anecs
【動画】“Edewcate english rhymes - London bridge is falling down”, by eDewcate, YouTube, 2012/07/22
【動画】“London Bridge is Falling Down”, by ABCkidTV - Nursery Rhymes, YouTube, 2015/09/25
| ツイート |


