英語の名言・格言やちょっといい言葉、日常会話でよく使う表現などをご紹介しています。

By Jorge Barrios (Own Work) [Public domain], via Wikimedia Commons
第272回の今日はこの言葉です。
“Look up here, I’m in heaven.”「見あげてごらん、僕は天国にいる」
という意味です。
1月10日に亡くなったイギリスのミュージシャン、デビッド・ボウイ(David Bowie, 1947-2016)の言葉です。
死の2日前、彼の誕生日である1月8日にリリースされた新アルバム『★(ブラックスター、Blackstar)』(2016年)が遺作となってしまいましたが、そこに収録されている『ラザルス(Lazarus)』の冒頭にある言葉です。
残念ながら『ラザルス』は彼の生前最後のシングル曲となってしまいました。

デビッド・ボウイ(2002年シカゴ公演)
By Photobra|Adam Bielawski (Own work) [CC BY-SA 3.0 or GFDL], via Wikimedia Commons
デビッド・ボウイは1947年にイギリスのロンドンに生まれます。
本名はデイヴィッド・ジョーンズ(David Robert Haywood Jones)。ファースト・ネームは日本では「デビッド」と表記されることが多いですね。
音楽好きの父親の影響で、子供の頃からプラターズ(The Platters)やエルヴィス・プレスリー(Elvis Presley)などのアメリカのポピュラーやロックに親しみます。
Elvis Presley: 15 Original Albums [Imported CD]
彼はその後モダン・ジャズに関心を持ち、アルト・サックスのレッスンを受けるようになります。
15歳の時にデビッドは最初のバンド「コンラズ(Konrads)」を結成し、ギター中心のロックンロールを演奏するようになります。その後「キング・ビー(King Bees)」というバンドへ移り、17歳の時にシングル・デビュー。芸名は紆余曲折の後に「デビッド・ボウイ」となり、20歳の時にデビューアルバム『デビッド・ボウイ(David Bowie)』(1967年)を発表します。

20歳の頃のデビッド・ボウイ(1967年撮影)
By Deram / London Records (Billboard, page 28, 30 September 1967) [Public domain], via Wikimedia Commons
デビュー当時のボウイはチベット仏教に傾倒したり、リンゼイ・ケンプ(Lindsay Kemp, 1938-)のダンスクラスでアバンギャルドやパントマイムを身につけたりと、様々な方向性を模索します。ケンプの影響でボウイは日本の伝統芸能にも興味を持ち、その後の衣装やメイクに歌舞伎や能の要素を取り入れます。
そして1969年、セカンドアルバム『スペイス・オディティ(Space Oddity)』を発表します。スタンリー・キューブリック(Stanley Kubrick, 1928-1999)のSF映画『2001年宇宙の旅(2001: A Space Odyssey)』(1968年イギリス・アメリカ)に影響を受けたものです。アポロ11号の月面着陸の直前にリリースされた同名のシングル『スペイス・オディティ(Space Oddity)』は全英チャート5位となります。ボウイの出世作にして原点です。
Space Oddity
1970年代のデビッド・ボウイは歌詞やサウンドに哲学や美学の要素を強く打ち出し、派手なメイクと奇抜な衣装、メジャーなポップスやロックとは一線を画したカルト路線でカウンター・カルチャーの旗手となります。
1972年、ボウイはコンセプト・アルバム『ジギー・スターダスト(The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars)』を発表し、架空のロック・スター「ジギー・スターダスト(Ziggy Stardust)」を名乗ります。このアルバムは2年にわたってチャートに留まり、ボウイはグラム・ロック(glam rock)の代表としての地位を確立します。

ツアーでジギー・スターダストを演じるデビッド・ボウイ
By Rik Walton [CC BY-SA 2.0], via Wikimedia Commons
1974年、ボウイはアメリカへ移り、一時ニューヨークを経てロスアンゼルスへ滞在します。
同年に発表したコンセプト・アルバム『ダイアモンド・ドッグス(Diamond Dogs)』はジョージ・オーウェルのSF小説『1984年(1984)』(1949年発表)をモチーフにしたものです。
この頃からボウイはソウルやファンクに傾倒し、新しい方向性を模索します。
また、ジョン・レノンと共同制作したシングル『フェイム(Fame)』(1975年)は全米1位を獲得します。
Fame
1976年、ボウイが初主演した映画『地球に落ちてきた男(The Man Who Fell to Earth)』(1976年イギリス)が公開されます。同年発表したコンセプト・アルバム『ステイション・トゥ・ステイション(Station to Station)』で、ボウイは映画の主人公である宇宙人「トーマス・ジェローム・ニュートン(Thomas Jerome Newton)」をモチーフにした新しいペルソナ「シン・ホワイト・デューク(Thin white Duke, 痩せた青白き公爵)」を名乗ります。
【動画】“The Man Who Fell To Earth (Is David Bowie) U.S. Theatrical Trailer No1. Voice over William Shatner. (『地球に落ちてきた男』(デビッド・ボウイ主演)米国劇場版予告編、ウィリアム・シャトナー)”, by thevisitor, YouTube, 2009/10/18
同年ボウイはスイスのレマン湖畔に山小屋を買って住み、さらに西ベルリンへ移住します。当時苦しんでいた薬物依存の治療も兼ねた移住です。
ベルリンでボウイはブライアン・イーノ(Brian Eno, 1948-)と共同で『ロウ(Low)』(1977年)、『英雄夢語り(ヒーローズ)(Heroes)』(1977年)を製作します。同じくブライアン・イーノと組んだ『ロジャー(間借人)(Lodger)』(1979年)も合わせて、後に「ベルリン3部作(Berlin Trilogy)」と呼ばれます。
ヒーローズ
1980年に再びアメリカへ移ったボウイはニューウェーブを前面に出したアルバム『スケアリー・モンスターズ(Scary Monsters (And Super Creeps))』を発表し、収録シングル『アッシュズ・トゥ・アッシュズ(Ashes to ashes』と共に全英1位を獲得します。
翌年、ボウイは盟友だったクイーンのフレディ・マーキュリー(Freddie Mercury, 1946-1991)と『アンダー・プレッシャー(Under Pressure)』(1981年)という曲を共作します。
そしてボウイが1983年に発表したシングル『レッツ・ダンス(Let's Dance)』(1983年)はアルバム・シングルとも世界中で爆発的なヒットを記録します。カルト・スターだったボウイは世界的なメジャー・ロックスターとなり、音楽としてはポップ・ロック路線を模索します。
【動画】“David Bowie - Let's Dance (Official Video) ”, by goodoldmusic , YouTube, 2011/08/05
同じ頃、ボウイは大島渚(Nagisa Oshima, 1932-2013)が監督した『戦場のメリークリスマス(Merry Christmas, Mr. Lawrence)』(1983年日英豪新)に出演し、イギリス軍のジャック・セリアズ少佐(Maj. Jack 'Strafer' Celliers)を演じます。
さらにボウイはロック・ミュージカル『ビギナーズ(Absolute Beginners)』(1986年イギリス)やファンタジー『ラビリンス/魔王の迷宮(Labyrinth)』(1986年アメリカ)、『ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間(Twin Peaks:Fire Walk With Me)』(1992年アメリカ・フランス)など様々な映画に出演します。
【動画】“Merry Christmas Mr. Lawrence (1983) Trailer - The Criterion Collection (『戦場のメリー・クリスマス』(1983年)予告編 - クライテリオン・コレクション)”, by criterioncollection, YouTube, 2010/08/27
1989年、ボウイは派手で豪華なイメージを変えるべく、シンプルなロック・バンド「ティン・マシーン(Tin Machine)」を結成します。
1993年にソロ活動を再開しボウイは、その後もコンスタントに作品を発表し続け。常に時代の実験的なアプローチを導入します。
しかし2003年のツアー中に腹部痛で動脈瘤が見つかって緊急入院の後に手術をうけ、音楽活動を休止します。
2013年、ボウイは10年ぶりのアルバム『ザ・ネクスト・デイ(The Next Day)』をリリースします。66歳の時です。
さらに2016年1月8日の誕生日、26枚目のスタジオアルバム『★(ブラックスター)(Blackstar)』を発表します。
アシッドジャズを取り入れた、あいかわらず実験的な作品です。
★(Blackstar)
しかしその2日後の1月10日、デビッド・ボウイは家族に囲まれて静かに息をひきとります。
69歳でした。癌と18ヶ月闘病した末の死だったそうです。
収録されているシングル『ラザルス(Lazarus)』の冒頭の歌詞が今日の言葉です。
“Look up here, I’m in heaven.”
「見あげてごらん、僕は天国にいる」
続く歌詞や、ビデオクリップの映像にも死の影が強く感じられる作品となっています。
癌と闘っていたデビッド・ボウイは、自分の命の炎が燃え尽きようとしているのを悟っていたのかもしれません。
【動画】“David Bowie - Lazarus デビッド・ボウイ - 『ラザルス』”, by DavidBowieVEVO, YouTube, 2016/01/07
“Look up here, I’m in heaven.”
見あげてごらん、僕は天国にいる。
常に新しい音楽性を求め続けたデビッド・ボウイ。
死の直前までその挑戦は終わりませんでした。
僕らも天を見上げてみましょう。
天国にいるデビッド・ボウイの笑顔が見えるかもしれません。
きっと仲がよかったジョン・レノンやフレディ・マーキュリーと再会を喜んでいることでしょう。
David Bowie's final photographs: https://t.co/6JmFoTOMet pic.twitter.com/50ptGEyJEd
— Consequence of Sound (@coslive) 2016, 1月 11【twitter】“David Bowie's final photographs: http://cos.lv/WVm7f (デビッド・ボウイの最後の写真)”, by David Bowie Officialさん, Consequence of Sound, @coslive, 2016年1月11日
それでは今日はこのへんで。
またお会いしましょう! ジム佐伯でした。
【動画】“David Bowie (and Freddie Mercury) - Under Pressure (Vocal Track) (デビッド・ボウイ(フレディ・マーキュリーと) - 『アンダー・プレッシャー』(音声トラック)”, by Bowie Vocals, YouTube, 2012/05/12
【関連記事】第266回:“War is over if you want it.”―「戦争は終わる。あなたが望めば」(ジョン・レノン&オノ・ヨーコ), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2015年12月21日
【関連記事】第205回:“Imagine all the people living life in peace.”−「想像してごらん、みんなが平和に暮らしていると」(ジョン・レノン), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2014年03月27日
【関連記事】第30回:“The show must go on.”―「ショーは続けなければならない」(ことわざ), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2013年05月30日
【参考】Wikipedia(日本語版,英語版)
【参考】“Lazarus lyrics in full(『ラザルス』歌詞全曲)”, David Bowie, 17 December 2015
【参考】“'Look up here, I'm in heaven': David Bowie's 'parting gift' to his devastated fans - a haunting last video released just three days before he lost his battle with cancer”, By Steph Cockroft, MailOnline, 11 January 2016
【参考】“デビッド・ボウイ、最後のアルバムに刻んだ死にざま (David Bowie Left Hints About His Death)”, by ザック・ションフェルド, Newsweek日本版, 2016年1月12日
【参考】“「地球に落ちてきた男」デヴィッド・ボウイ死去。音楽の世界にSFとファッションを融合”, By Munenori Taniguchi, Engadget, 2016年01月12日
【参考】“追悼:デビッド・ボウイ*フレディ・マーキュリーとの友情と「Under Pressure」誕生秘話”, by Ekoさん, Spotlight, 2016.01.12
【twitter】“David Bowie's final photographs: http://cos.lv/WVm7f (デビッド・ボウイの最後の写真)”, by David Bowie Officialさん, Consequence of Sound, @coslive, 2016年1月11日
【動画】“The Man Who Fell To Earth (Is David Bowie) U.S. Theatrical Trailer No1. Voice over William Shatner. (『地球に落ちてきた男』(デビッド・ボウイ主演)米国劇場版予告編、ウィリアム・シャトナー)”, by thevisitor, YouTube, 2009/10/18
【動画】“David Bowie - Let's Dance (Official Video) ”, by goodoldmusic , YouTube, 2011/08/05
【動画】“Merry Christmas Mr. Lawrence (1983) Trailer - The Criterion Collection (『戦場のメリー・クリスマス』(1983年)予告編 - クライテリオン・コレクション)”, by criterioncollection, YouTube, 2010/08/27
【動画】“David Bowie - Lazarus デビッド・ボウイ - 『ラザルス』”, by DavidBowieVEVO, YouTube, 2016/01/07
【動画】“David Bowie (and Freddie Mercury) - Under Pressure (Vocal Track) (デビッド・ボウイ(フレディ・マーキュリーと) - 『アンダー・プレッシャー』(音声トラック)”, by Bowie Vocals, YouTube, 2012/05/12
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