英語の名言・格言やちょっといい言葉、日常会話でよく使う表現などをご紹介しています。

Image courtesy of Simon Howden, published on 22 November 2009, FreeDigitalPhotos.net
第179回の今日はこの言葉です。
“Be my Valentine.”
「私のバレンタインになってください。」
というのが文字通りの意味です。
2月14日の“Valentine's Day” (バレンタインデー)は恋人たちの祝日。
そう、これは「私の恋人になってください」というバレンタインデーの告白の言葉なのです。
日本風に言えば、
「私とつきあってください」
といったところでしょうか。

Image courtesy of photostock, published on 12 July 2011, FreeDigitalPhotos.net
バレンタインデーは、欧米でも恋人たちの記念日とされています。
しかし、日本のような「女性から男性にチョコレートを贈る」という習慣はそれほど一般的ではありません。
それよりも、恋人たちがデートをする日とされています。
チョコレートを送らないわけではありませんが、プレゼント(Valentine's Gift)は男性から女性に、花などと一緒に贈ることが多いようです。また、クリスマス前ほど一般的ではありませんが、恋人同士や家族との間でカードがやりとりされたりもします。アメリカではバレンタインデー向けの切手も発売されます。

Designed by Robert Indiana, USPS (United States Postal Service), 1973 [Public domain], via Wikimedia Commons
欧米のバレンタインデーは、ちょうど日本のクリスマス・イヴが恋人たちのデートの日とされているような雰囲気に近い記念日です。欧米ではクリスマス・イヴは家族でゆっくり過ごす日ですので、恋人とのデートの日の大本命がこのバレンタインデーなのです。
ですから、
“Be my Valentine.”という言葉は、「バレンタインデーにデートをして下さい」と誘う時にも使われます。
「私のバレンタインになってください。」

Image courtesy of Serge Bertasius Photography, published on 17 January 2014, FreeDigitalPhotos.net
バレンタインデーの起源は古代ローマにさかのぼります。
もともと2月14日は古代ローマの最高位の女神であり結婚の女神でもあるユノ(Juno)の祝日でした。そして翌日の2月15日から結婚の女神ユノと春を司る豊穣の女神マイア(Maia)を祭って豊年を祈願するルペルカリア祭(Lupercalia)が始まりました。
当時のローマでは、若い男たちと娘たちは生活が別々でしたので、何らかの出会いの場が必要でした。2月14日に娘たちは紙に名前を書いた札を桶の中に入れ、翌15日に男たちが桶から札を1枚ひいてパートナーを決めて、祭のあいだ一緒に過ごすことが定められていました。多くのカップルはそのまま恋に落ちて、結婚しました。
もともとは多神教が信じられていた古代ローマのお祭です。キリスト教から見たら異教の祭で、今のバレンタインデーのようなキリスト教色はまったくありませんでした。

バチカンのユノ像
By shakko (Own work), November 2007, cropped by Jim Saeki on 11 February 2014 [CC-BY-SA-3.0], via Wikimedia Commons
その後ローマは急速にキリスト教化します。
5世紀の末、ローマ教皇ゲラシウス1世(Gelasius I, ?-496)はルペルカリアの祭が若者たちの風紀を乱していると考えます。もともと異教徒の祭だったため、教皇はルペルカリアの祭を廃止することを宣言します。しかしただ廃止するのでは人々に受け入れられません。そこで、男女を結びつけるという特徴を残して異教徒にも受け入れられやすい祝日を新たに創設して、それをきっかけに異教徒たちをキリスト教に改宗させることも狙ったのです。

ローマ教皇ゲラシウス1世(Gelasius I, ?-496)
By Artaud de Montor (1772–1849) (http://archive.org/details/livesofpopes01artauoft), 6 June 2013 [Public domain or Public domain], via Wikimedia Commons
当時、新しい祝日を創設するためにぴったりのキリスト教の聖人伝説がありました。
3世紀ごろのキリスト教の聖職者だったウァレンティヌス(Valentinus, ?-269)です。
時のローマ皇帝クラウディウス2世(Marcus Aurelius Claudius Gothicus, Claudius II, 213-270)は北方民族との戦争にあけくれていました。皇帝は、愛する家族を故郷に残した兵士がいると士気が低下することをおそれ、兵士たちの結婚を禁止します。
司祭だったウァレンティヌスはこの禁令に背き、秘密で兵士の結婚式をとりおこないます。ウァレンティヌスは捕えられ、あえてルペルカリア祭の前夜祭である2月14日に絞首刑に処されます。
この殉教でウァレンティヌスは聖人とされ、恋人たちの守護聖人として信仰されるようになります。
西暦496年、教皇ゲラシウス1世はルペルカリア祭を廃止し、代わりに「聖ウァレンティヌスの日」を創設します。英語にすると「聖ヴァレンタインの日 (Saint Valentine's Day)」。そう、バレンタインデーです。

ローマ皇帝クラウディウス2世(Claudius II, 213-270)
By Giovanni Dall'Orto. (Own work), 25 June 2011 [Attribution], via Wikimedia Commons

宗教画に描かれた聖母マリア(左)と聖ヴァレンタイン(右)
Painted by David Teniers III, 1600s [Public domain], via Wikimedia Commons
聖ウァレンティヌスのエピソードは、その信憑性が疑問視されています。
まず、バレンタインデーが定められたのが5世紀とされていながら、このエピソードが語られだしたのは中世になってからです。14世紀や15世紀の英語やフランス語の文献に聖ウァレンティヌスの日と恋人たちが関係付けられて登場します。
また、この話はカトリックやプロテスタントなどの西方教会だけに伝わっており、ギリシャ正教やロシア正教などの東方教会ではウァレンティヌスと恋人を結びつけた言い伝えはありません。
西方教会における後世の創作である可能性が高いのです。
バレンタインデーはかつてはカトリックの祝日でした。しかし1962〜1965年に行われた第2バチカン公会議(Second Vatican Council)で、実在が明らかでない聖人たちが典礼暦から除外された際にバレンタインデーも祝日ではなくなりました。
しかし、祝日ではなくなったとはいえウァレンティウスは今でも恋人たちの守護聖人として敬愛されており、バレンタインデーは相変わらず恋人たちの日とされています。

聖ヴァレンタインを祀る聖堂(アイルランドのダブリンにて)
By blackfish (Own work), 27 August 2011 [CC-BY-SA-3.0], via Wikimedia Commons
ちなみに古代ローマの女神ユノはその後6月の女神となりました。
“June”の語源でもあります。
ジューン・ブライド(6月の花嫁, June Bride)は、6月に結婚することで結婚の女神ユノの加護を祈る風習です。

Image courtesy of num_skyman, published on 14 January 2013, FreeDigitalPhotos.net
日本でバレンタインデーにチョコを送る習慣は、1970年代後半に定着したと言われています。
1936年に神戸の洋菓子メーカーのモロゾフが、英字新聞に広告を掲載します。
“For Your VALENTINE, Make A Present of Morozoff's FANCY BOX CHOCOLATE.”というものです。
「あなたのヴァレンタインに、モロゾフのファンシーボックス・チョコレートを贈りましょう」
「あなたのヴァレンタインに」というのは「あなたの愛しい人に」という意味です。
英字新聞に出された英文の広告ですので、日本に居住する外国人向けの宣伝ですが、これが日本で初めてバレンタインデーとチョコレートを結びつけたプロモーションとされています。
モロゾフは1953年にハート型のチョコレートを売り出し、バレンタインの贈り物として売り出します。
ほかの菓子メーカーも追随し、1956年には西武百貨店や松屋が、1959年には松坂屋が新聞広告を掲載します。バレンタインデーにチョコという定番はこうして徐々に浸透していきます。

Image courtesy of nixxphotography, published on 19 April 2011, FreeDigitalPhotos.net
1958年、メリーチョコレートが新宿の伊勢丹で「バレンタインセール」というキャンペーンを行います。これが日本で初めてのバレンタインデーのイベントとされています。
メリーチョコレートはモロゾフの菓子職人だった原堅太郎(Kentaro Hara)が創業した会社です。
バレンタインにチョコを送るというモロゾフのアイディアが引き継がれているのです。

伊勢丹新宿本店
By Kakidai (Own work), 14 March 2012 [CC-BY-SA-3.0 (http://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0)], via Wikimedia Commons
1960年、森永製菓が「愛する人にチョコレートを贈りましょう」と新聞広告を出します。
さらに伊勢丹が1965年にバレンタインデーのフェアを開催します。
1968年にはソニーの輸入雑貨専門店ソニープラザがチョコレートを贈ることを流行させようと試みます。
そして1970年代に入り、小学校高学年から高校生の生徒たちの間で、女子が男子に親愛の情を込めてチョコレートを贈るという「日本型バレンタインデー」が爆発的に広まります。
そこからさらに主婦層や職場にも広まり、日本独特の習慣となります。

Image courtesy of num_skyman, published on 19 June 2013, FreeDigitalPhotos.net
日本のバレンタインデーのプレゼントの特徴は、以下の3点とされています。
・贈答品にチョコレートが重視される
・女性から男性へ一方通行的贈答である
・(女性の)愛情表明の機会だと認識されている
さらに学校や職場での「義理チョコ(Obligation Chocolate)」の習慣や、3月14日に男性から女性にチョコレートのお返しをする「ホワイトデー(White Day)」の習慣にまで広がりました。
職場でいやいや贈るものを「超義理チョコ(Ultra-Obligatory Chocolate)」などと呼ぶこともあります。
なお、ホワイトデーは韓国などにはあるようですが欧米には全くない習慣ですので気をつけて下さい。
最近では女性から女性にチョコレートを贈る「友チョコ(Friend Chocolate)」や男性から女性に贈る「逆チョコ(Reverse Chocolate)」、自分で自分に贈る「自分チョコ(Self-Chocolate)」なども増えています。
今や日本のチョコレートの年間消費量の2割程度がこの日のために消費されると言われるほどの国民的行事です。

Image courtesy of Stuart Miles, published on 26 August 2011, FreeDigitalPhotos.net
“Be my Valentine.”
私のバレンタインになってください。
国によって多少は風習が違いますが、恋人たちの大事な記念日であることは同じです。
恋人がいなかったら「友チョコ」や「自分チョコ」でもいいですし、日本の素晴らしい習慣にしたがってチョコレートで愛の告白をしてもいいでしょう。
その時こそ、
“Be my Valentine.”
というメッセージを添えたらうまくいくかもしれません。
それでは、よいバレンタインデーを!
“Happy Valentine's Day!”
大切な時間をどうぞ楽しくお過ごし下さい。

Image courtesy of Michal Marcol, published on 16 January 2011, FreeDigitalPhotos.net
それでは今日はこのへんで。
またお会いしましょう! ジム佐伯でした。
【動画】“History of the Holidays: History of Valentines Day | History (祝日の歴史:バレンタインデーの歴史)”, by HISTORY, 2011/02/10
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【参考】Wikipedia(日本語版,英語版)
【参考】“「バレンタイン・チョコレート」はどこからきたのか(1)”, by 山田晴通, 人文自然科学論集(東京経済大学),124,pp41-56.2007
【参考】“Saint Valentine (聖ヴァレンタイン)”, BBC, Religions, 2009-07-31
【動画】“History of the Holidays: History of Valentines Day | History (祝日の歴史:バレンタインデーの歴史)”, by HISTORY, 2011/02/10
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