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こんにちは! ジム佐伯です。
英語の名言・格言やちょっといい言葉をご紹介しています。

Collage by Jim Saeki, using the following two images:
- “A2 Traiskirchen.JPG” : By User:My Friend (Own work) [GFDL or CC-BY-SA-3.0], via Wikimedia Commons
- “Kangaroo Sign at Stuart Highway.jpg” : By Jpp (Made by Jpp) [GFDL, CC-BY-SA-3.0 or CC-BY-SA-2.5-2.0-1.0], via Wikimedia Commons
第104回の今日はこの言葉です。
“No kangaroos in Austria.”「オーストリアにカンガルーはいません。」
という意味のジョークです。
“There's no kangaroos in Austria.”
の“There's”が省略されたものです。
“no”の後の名詞は“kangaroos”と複数形になります。
昨日は
“You, happy Austria, marry.”というハプスブルク家の家訓を紹介しましたが、あまりの長大な歴史に僕も記事を書くのに疲れてしまいました。
「幸いなるオーストリアよ、汝は結婚せよ」
今日は軽く行きたいと思います。

Image Copyright by kjuuurs, Used under license from Links Co., Ltd.
カンガルー(Kangaroo)は、ご存じ有袋類の動物で、母親がおなかの袋で赤ちゃんを育てます。大きいものがカンガルー、小さいものがワラビー(Wallaby)と呼ばれます。
オーストラリア(Australia)に特有の種で、袋から顔を出した赤ちゃんのかわいらしい姿が動物園の人気者です。
かつて西洋人がカンガルーを指して「あの動物は何と言うのか」と聞いたところ、現地人が「わからない」という意味で「カンガルー」と答えたら、それがこの動物の名前になったという俗説があります。
これは一時は英語の教科書にも載ったりしたそうなのですが、本当かどうかは怪しいのだそうです。
もともとは、現地語で「飛び跳ねるもの」を指す“gangurru”(ガンガルー)という言葉が変化したものなのだそうです。
今ではオーストラリアでは一部の種類のカンガルーの数が増えすぎて、カンガルーは何と害獣あつかいされています。
カンガルーが突然道路に飛び出してくることで自動車との衝突事故もが多発しています。
衝突の衝撃から車体を守るために大きくて丈夫なバンパーを取り付ける車も多く、カンガルー・バー(Kangaroo Bar)、略してルー・バー(Roo Bar)と呼ばれています。
昔は金属製で尖った部分もあるルー・バーもよく使われていましたが、人身事故での人体へのダメージが大きいと批判されたりもしました。
今は樹脂製で人やカンガルーへのダメージをできるだけ減らすよう配慮されたものも増えてきました。

三菱パジェロ(欧州仕様)、日本国内でも装飾としてカンガルー・バーを装着する車が多かった
By Detectandpreserve (Own work), 15 March 2008 [GFDL or CC-BY-3.0], via Wikimedia Commons

樹脂製で車体と一体になったルー・バーをつけたハイウェイ・パトロール
By Highway Patrol Images (MSV 21 Toyota Hilux 4X4 3.0 D4-D), 2 December 2006 [CC-BY-2.0], via Wikimedia Commons
また、年間300万頭のカンガルーが狩猟され、オーストラリアの国内外で食用肉として消費されています。
ビーフ・ジャーキーならぬカンガルー・ジャーキー(Kangaroo jerky)という干し肉も、オーストラリアみやげとして売られています。
僕も話のネタにカンガルー・ジャーキーを買ったことがあります。ビーフの甘みはありませんが歯ごたえはビーフジャーキーに近く、なかなか美味しかったですよ。

スーパーで売られているカンガルー肉
Photo by Roke, 15 March 2006 [CC BY-SA 3.0], via Wikimedia Commons
マリアニ・カンガルージャーキー12袋セット
さて、本題に入ります。
ヨーロッパのオーストリア(Austria)とカンガルーのいるオーストラリア(Australia)は、国名がよく似ています。
僕も子供の頃はよくまちがえたものですが、欧米人でもよくまちがえるそうです。
ヨーロッパのオーストリアはドイツ語の国名“Österreich”(エスタライヒ)からきたものですが、これは「東の国」という意味があります。
また、カンガルーのいるオーストラリアはラテン語の“australis”(アウストラーリ)からきたものですが、こちらは「南の地」という意味があります。
意味も言語もまったく違う語源なのですが、結果としてまぎらわしい国名になってしまい、欧米でもよくネタとして使われます。

オーストラリア・シドニーの街並み
By Photo courtesy of Tourism Australia (US Army images gallery), 11 March 2008, cropped by Jim Saeki on 5 October 2013 [Public domain], via Wikimedia Commons
そこで、ヨーロッパのオーストリアの方には、英語でも“European”(ヨーロッパの)という前置きをして使われることがあります。
また、郵便などでも誤配がないように、
“Austria”の後に“Europe”と書き加えるとよいでしょう。

オーストリア・アルプスの山々
By Dhm03 (Own work), 27 July 2012 [CC0], via Wikimedia Commons
このまぎらわしさから生まれたジョークが、今日の言葉です。
オーストラリアにはカンガルー飛び出しへの注意をうながす道路標識があります。
黄色い菱形の背景に、黒でカンガルーのシルエットが描かれたものです。
この標識には普通は文字は描かれていません。
この標識に、
“No kangaroos in Austria.”という文字を入れたTシャツやステッカーが、オーストリアみやげとして売られているのです。
「オーストリアにカンガルーはいません」
今や定番のジョークになっています。

By Jpp (Made by Jpp), 13 April 2001 [GFDL, CC-BY-SA-3.0 or CC-BY-SA-2.5-2.0-1.0], via Wikimedia Commons
前に仕事でアメリカ人と会議をした時、オーストリアの事例が紹介されました。
発言していたアメリカ人は、オーストリアの話題が出たとたん、
“There's no kangaroos.”
「カンガルーはいませんけどね。」
と言いました。ややウケ。もうお約束になっているのです。
それを見てすかさずもう一人のアメリカ人がまぜっかえしました。
“... yet!”
「今のところはね!」
今度はバカウケ。見事なジョークの連携プレーです。

Image courtesy of Michelle Meiklejohn, published on 06 November 2009 / FreeDigitalPhotos.net
しかし単なるジョークだと笑ってはいられません。
宮城県大崎市では、山あいでカンガルーの目撃情報が相次ぎ、「カンガルーが生息しているのではないか」と噂になっているそうです。カンガルーはちゃんと手続きをすれば個人で飼ってもいいそうですので、ペットが逃げ出して野生化する可能性はゼロではありません。
仙台市にある「八木山動物公園」の専門家はこう話しています。
「野生のカンガルーが冬を越すのは難しいと考えられます」
もし宮城にカンガルーが生息しているとすると、オーストリアに生息していてもおかしくありませんね。

高速道路を横切るカンガルー(オーストラリア西部にて)
By Mbz1, 21 April 2007 [GFDL, CC-BY-SA-3.0 or CC-BY-SA-2.5-2.0-1.0], via Wikimedia Commons
“No kangaroos in Austria.”
オーストリアにカンガルーはいません。
“... yet!”
今のところはね!
一番目のジョークも鉄板な感じでいいですが、僕はこの二番目のジョークも大好きです。
もちろんオーストリアにも動物園はありますが野性のカンガルーはいません。
そう、今のところは。
いつかオーストリアにカンガルーが増えて、アウトバーン(高速道路)に本物の「カンガルー注意!」の標識ができる日が来るかもしれません。

Image courtesy of Michelle Meiklejohn, published on 29 October 2009 / FreeDigitalPhotos.net
それでは今日はこのへんで。
またお会いしましょう! ジム佐伯でした。
【関連記事】第103回:“You, happy Austria, marry.”―「幸いなオーストリアよ、汝は結婚せよ」(ハプスブルク家), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2013年10月05日
【参考】Wikipedia(日本語版,英語版)
【参考】“宮城県にカンガルー生息情報! 「道路ぴょんぴょん跳ねてた」?”, JCASTニュース ビジネス&メディアウォッチ, 2009/11/26
【参考】“日本はオーストラリア!?宮城県にカンガルー生息!! [社会情勢]”, gaiagear, 行雲流水の如し, 2009-12-04
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