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こんにちは! ジム佐伯です。
英語の名言・格言やちょっといい言葉をご紹介しています。

Image courtesy of adamr, published on 17 February 2012 / FreeDigitalPhotos.net
第91回の今日はこの言葉です。
“I don't know, but I can guess.”「わからないが、想像はできる」
という意味です。
これは、アメリカの作家で生化学者でもあったアイザック・アシモフ(Isaac Asimov, 1920-1992)の言葉です。
“Isaac”と書いて「アイザック」と読みます。ちょっと違和感がありますが、英語ではよくある読み方です。
非常に多作な作家で、SFや推理小説、ノンフィクションなどに多くの著作があります。

アイザック・アシモフ(Isaac Asimov, 1920-1992)(1965年撮影)
By "New York World-Telegram and the Sun Newspaper Photograph Collection"/Taken by Phillip Leonian (according to back cover on ISBN 038505047X), 1965 [Public domain], via Wikimedia Commons
SFで代表的な作品としては、
『夜来たる(Nightfall)』(1941)、
『ファウンデーション(Foundation)』(1942)と多くの続編、
短編集『われはロボット(I, Robot)』(1950)、
『鋼鉄都市(The Caves of Steel)』(1954)、
『バイセンテニアル・マン(The Bicentennial Man)』(1976)
などがあります。
『われはロボット』は『アイ,ロボット(I, Robot)』(2004年アメリカ)として、『バイセンテニアル・マン』は『アンドリューNDR114(Bicentennial Man)』(1999年アメリカ)として映画化されました。
アイ,ロボット [DVD]
アシモフは、イギリスのアーサー・C・クラーク(Sir Arthur Charles Clarke、1917-2008)、アメリカのロバート・A・ハインライン(Robert Anson Heinlein、1907-1988)と共に「三大SF作家 (The Big Three)」や「海外SF御三家」などと呼ばれます。アーサー・C・クラークは『2001年宇宙の旅(2001: A Space Odyssey)』を書きました。
ロバート・A・ハインラインは『夏への扉』や『宇宙の戦士』などを書きました。
このブログでも以前ハインラインの言葉をご紹介したことがありますよね。
【関連記事】第50回:“There ain't no such thing as a free lunch.”―「無料の昼食なんてものはない」(ロバート・A・ハインラインほか), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2013年07月04日
夏への扉 (ハヤカワ文庫SF)
アイザック・アシモフはロシアに生まれました。
3歳の時に家族とともにアメリカへ移住してニューヨークのブルックリンで育ちます。
アイザックは10歳の頃にSF好きになり、父親が経営する菓子屋に置いてあるSF雑誌を読みふけるようになります。
学校の成績は優秀で、中学や高校を飛び級で卒業して15歳でコロンビア大学に入学します。
アシモフ学業のかたわら大好きなSF小説を書き続け、在学中に作家デビューします。
この頃すでに『われはロボット』のロボットものや『ファウンデーション』シリーズの諸作品、出世作『夜来たる』などを執筆します。
ファウンデーション ―銀河帝国興亡史〈1〉 (ハヤカワ文庫SF)
大学院にいる時に第二次世界大戦が勃発し、アシモフは大学院を休学して海軍工廠に入ります。そこであのロバート・A・ハインラインと出会います。
戦後復学してコロンビア大学で博士号を取得し、ボストン大学の准教授となります。
その後、作家活動に専念するために教壇を降ります。

ロバート・A・ハインライン(左端)とアイザック・アシモフ(右端)(1944年撮影)
By U.S. Navy, 1944 [Public domain], via Wikimedia Commons
アシモフの『われはロボット』などの一連のロボット物のSF作品で有名になったのが、『ロボット工学三原則(Three Laws of Robotics)』です。
“1. A robot may not injure a human being or,
through inaction, allow a human being to come to harm.”
「第一条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。
また、行動しないことによって人間に危害を及ぼしてもならない。」
“2. A robot must obey the orders given to it by human beings,
except where such orders would conflict with the First Law.”
「第二条 ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。
ただし、あたえられた命令が第一条に反する場合は、この限りでない。」
“3. A robot must protect its own existence
as long as such protection does not conflict with the First or Second Law.”
「第三条 ロボットは、自己を守らなければならない。
ただし、第一条および第二条に反するおそれのない場合に限る。」
―アイザック・アシモフ『われはロボット』より
非常によく考えられた三原則です。
しかしまた同時に、いろいろ考えさせられる内容です。
この『ロボット工学三原則』はその後のSF作品に大きな影響を与えただけでなく、現実のロボット開発にも大きな影響を与えました。
われはロボット 〔決定版〕 アシモフのロボット傑作集 (ハヤカワ文庫 SF)
アイザック・アシモフが1964年8月に書いたエッセイ『2014年の万国博覧会を訪れよう(Visit to the World's Fair of 2014)』が最近話題になりました。
ちょうどニューヨーク万国博覧会(New York World's fair 1964/1965)が開催されていた時期です。
博覧会のテーマは「相互理解を通じた平和(Peace Through Understanding)」でした。
会場の中心には「ユニスフィア(Unisphere)」と呼ばれる地球をかたどったモニュメントが飾られました。

By Beyond My Ken (Own work), 28 August 2010 [GFDL (http://www.gnu.org/copyleft/fdl.html) or CC-BY-SA-3.0-2.5-2.0-1.0 (http://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0)], via Wikimedia Commons
ゼネラル・モーターズ(GM)館では「フューチュラマII(Futurama II)」というライド型のアトラクションが展示され、未来世界が精巧なジオラマで紹介されました。
ペプシコーラ提供のユニセフ館では、ウォルト・ディズニーが「イッツ・ア・スモールワールド(It's a small world)」を作りました。
これは博覧会が終了した後にアナハイムのディズニーランドに移築されました。東京ディズニーランドでも体験できますよね。
日本館では新幹線の実物大模型が展示されました。
夢の超特急は、会期中の1964年10月に、東京オリンピックに合わせるようにして営業運転を開始しました。

アナハイムのディズニーランドにある「イッツ・ア・スモールワールド(It's a small world)」
By SolarSurfer (Own work) [Public domain], via Wikimedia Commons
アシモフは記事の中で、50年後の2014年の万国博覧会ではどうなるだろうと予測しました。
エッセイの冒頭部分で、アシモフが書いたのがこの言葉です。
“I don't know, but I can guess.”アシモフは、少ない情報から未来を予測する名人でした。
「わからないが、想像はできる」
このエッセイも、驚くほど正確に現在を予測しているということで、最近話題になりました。
ニューヨーク・タイムズ紙(The New York Times)の電子版で全文を読むことができます。

“Visit to the World's Fair of 2014(2014年の万国博覧会へ行こう)”, By ISAAC ASIMOV, The New York Times, August 16, 1964
エッセイにあるアシモフの主な未来予測をリストアップしてみます。
1. 電気発光パネルが天井や壁に使われ、ボタン一つで色を変えられる
→ 正解。LED照明が普及しました。
2. 窓は光の透過率を自動で調節できる
→ これも正解。新型のボーイング787の窓は調光装置がついています。
787は自動調整ではありませんが、技術的には今でも十分可能ですよね。
3. お湯をわかしてコーヒーを作る機械ができる
→ 大正解。これはそうとう以前からできてましたね。
4. 温めるだけで完璧な昼食や夕食になる食事が冷凍庫に常備されている
→ 正解。特にアメリカでは品ぞろえが充実してます。
5. 来客時などに手料理をするためのキッチンは残っている
→ 大正解。「キッチンはなくなる」という予想でないところが面白いですね。
でもアメリカ人は驚くほど普段はキッチンを使いません。
6. ロボットは存在するが、それほど出来は良くなく、普及していない
→ 大正解。ホンダはかなり頑張っていると思いますが、普及はまだまだですよね。

ホンダのアシモ(ASIMO)
By Momotarou2012 (Own work), 8 December 2012 [CC-BY-SA-3.0 (http://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0)], via Wikimedia Commons
7. 電気製品には電源コードはついておらず、原子力電池が使われている
→ 半分正解。電源コードがない製品も多いですね。でも原子力電池ではありません。
正確には「放射性同位体の電池」なのだそうです。怖いなあ。原発の副生成物で安く作るらしいです。
8. 実験的な核融合炉は一つか二つは稼働している
→ 不正解。まだまだですね。そういえば常温核融合ってどうなったのでしょうか。
9. 大規模な太陽エネルギーの発電所がアリゾナや中東やカザフスタンの砂漠地帯で稼働している
→ 大正解。太陽光と太陽熱、両方あります。砂漠は太陽エネルギーの宝庫ですね。

スペインのアンダルシア州にある太陽熱発電所ヘマソラール(Gemasolar)
By Torresol Energy (abc123), 24 October 2011 [FAL], via Wikimedia Commons
10. 空気噴射を利用して浮上する船や自動車が走っている
→ 半分正解。空気浮上の船であるホバークラフトはありますが、車はないですね。
あと磁気浮上のリニアモーターカー。
11. 自動車は目的地をセットすると自律的に移動できる
→ これも正解ですね。Googleなどの自律走行車が公道を走ってますから。
12. 市街地では動く歩道が使われている
→ 大正解。動く歩道は空港や大きなイベント施設ではよく使われています。
13. 通信は映像と音声で行われ、静止衛星でどこからでも通信できるようになる
→ 大正解。テレビ電話は大当たり。衛星電話も大当たり。
14. 通信画面は相手の顔を見るだけでなく、調べ物をしたり写真を見たり、本を読んだりするのに使われる
→ 大々正解! まさにこれ、iPadそのものじゃないですか。

初代iPadを発表するスティーブ・ジョブズ(2010年)
Photo by matt buchanan (originally posted to Flickr as Apple iPad Event), 27 January 2010 [CC-BY-2.0 (http://creativecommons.org/licenses/by/2.0)], via Wikimedia Commons
15. 月には植民地ができている
→ 大はずれ! まあこれもご愛嬌です。
当時はまだ人類は月に達していませんでしたが、5年後の1969年にアポロ11号が月に着陸します。
その勢いがそのまま続いていたら、今ごろは月に人が住んでいたかもしれませんね。
16. 月との通信にはレーザ光通信が使われる
→ これはどうでしょう。外れかな。アポロ計画の時は電磁波による普通の無線通信でした。
でも月に基地ができたり人が住むようになったら使われるかもしれませんね。
ただ地球と月の間は光の速さで1秒以上かかりますから、ネット接続などをどうするか課題ですね。
17. 地上同士の光通信は、大気や塵で減衰しないようプラスチックのパイプを通して行われる
→ 大正解。光ファイバーの出現まで予測していたとは凄いです。
18. 火星に無人探査機は到達しているが、有人探査は計画段階である
→ 大正解。月では予想がはずれましたが、火星探査の状況はピタリと当てています。

火星探査車キュリオシティ(Curiosity Rover)(想像図)
By NASA/JPL-Caltech [Public domain], via Wikimedia Commons
19. テレビは壁のスクリーンに置き換わっている
→ 正解。大型の液晶テレビやプラズマテレビ、プロジェクターもありますから当たりですね。
20. 3次元映像を映す透明な箱が作られる
→ 半分正解。3次元対応のテレビはありますが、どこから見ても立体に見える映像はまだ研究段階です。
21. 世界の人口は65億人に達し、アメリカの人口は3.5億人になる
→ 大々正解。2011年の世界人口は70億人で、アメリカの人口は3.1億人だそうです。
22. 人口増加により、海底への移住が始まる
→ 大はずれ。まだまだ地球は広いのでしょう。
アシモフが心配したアメリカ東海岸も、まだ余裕はありそうに見えます。
23. 加工を加えた酵母や藻類で様々な味の食品が生産される
→ まあ正解。普通の食品を置き換えるには至ってませんが、いろいろ生産されています。
遺伝子操作を加えた農産物が生産されていることも当てているように思えます。
しかも、このような食品を食べることに心理的な抵抗感がかなりあることも予想してます。
24. 人口増加を抑えるために、出生率を抑える施策がとられる
→ まあ正解。中国の一人っ子政策とか。でも日本は既に少子化という次のステージに進んでしまいました。
25. オートメーションの進展により、単純作業はほとんど機械が行い、人間のする仕事はなくなる
→ 半分正解かな。オートメーションは進みましたが、まだまだ人間の仕事はなくなりません。
26. 人間は退屈のため精神を病み、精神科医は最も重要な職種となる
→ 半分正解。メンタルヘルスが大きな問題となっているのは確かです。
しかし原因は退屈ではなく、むしろ逆の長時間労働のケースが特に日本では多いようです。
いかがでしょうか。
はずれているものもありますが、多くの予測はおそろしく正確ですね。
アシモフが優れたSF作家であることが、今さらながら改めてわかります。

Image courtesy of Ambro, published on 15 March 2012 / FreeDigitalPhotos.net
“I don't know, but I can guess.”
わからないが、想像はできる。
そんなアシモフも、肝心の「2014年に万国博覧会が開催される」という仮定は見事に不正解でした。
多くの記事でそのことがオチに使われていて可笑しいです。
iPadをまるで見て来たかのように予測したアシモフ。
アシモフが予測した50年後である2014年まで、あと4ヶ月を切りました。
2014年の現実世界をアシモフが見たら、どう思うのでしょうね。

Image Copyright by anastasios71, Used under license from Links Co., Ltd.
それでは今日はこのへんで。
またお会いしましょう! ジム佐伯でした。
【関連記事】第6回:“Anything one man can imagine, other men can make real.”―「人が想像できることは、必ず人が実現できる。」(ジュール・ヴェルヌ), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2013年04月28日
【関連記事】第56回:“NASA encourages you to keep reaching for the stars!”―「NASAは君が星を目指し続けることを応援する!」(NASAよりデクスター少年へ), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2013年07月14日
【関連記事】第50回:“There ain't no such thing as a free lunch.”―「無料の昼食なんてものはない」(ロバート・A・ハインラインほか), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2013年07月04日
【関連記事】第79回:“Stay hungry. Stay foolish.”―「貪欲であれ。愚直であれ」(スティーブ・ジョブズ), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2013年08月24日
【参考】Wikipedia(日本語版,英語版)
【参考】“Visit to the World's Fair of 2014(2014年の万国博覧会へ行こう)”, By ISAAC ASIMOV, The New York Times, August 16, 1964
【参考】“Isaac Asimov’s 1964 Predictions About 2014 Are Frighteningly Accurate(アイザック・アシモフの1964年に予言した2014年の世界が驚くほど正確な件)”, Charlie Warzel and John Herrman, BuzzFeed, August 28, 2013
【参考】“こんなに当たってるとは…SF小説の巨匠アイザック・アシモフが50年前に記した未来予想図「2014年の世界博覧会」”, らばQ, 2013年09月02日
【参考】“50年前にアイザック・アシモフが予測した「2014年万国博覧会」”, by hylom, Slashdot, 2013年08月30日
【参考】“過去の未来予想〜アシモフの未来図をその未来に検証する〜”, 水野日向守
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