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2017年11月01日

第472回:“Do you want to be my friend?” ―「私と友達になりたい?」(エヴァ、『エクス・マキナ』より)

こんにちは! ジム佐伯です。
英語の名言・格言やちょっといい言葉、日常会話でよく使う表現などをご紹介しています。



第472回の今日はこの言葉です。
“Do you want to be my friend?”

「私と友達になりたい?」
という意味です。とてもシンプルで簡単な表現ですよね。
これはアレックス・ガーランド(Alex Garland)が監督した映画『エクス・マキナ(Ex Machina)』(2015年イギリス)で、スウェーデンの女優アリシア・ヴィキャンデル(Alicia Vikander)が演じるヒロイン、エヴァ(AVA)が口にするセリフです。

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アリシア・ヴィキャンデル
Gage Skidmore [CC BY-SA 2.0], via Wikimedia Commons

映画のタイトル『エクス・マキナ(Ex Machina)』はラテン語で「機械仕掛けの」という意味です。演劇やオペラの演出技法『デウス・エクス・マキナ(Deus ex machina)』(機械仕掛けの神)から来ています。劇中で神や女神が突然登場し、すべてが解決して物語が終焉に向かうという演出です。神の登場シーンでクレーンのような機械装置がよく使われることからこのように呼ばれたようです。日本の「どんでん返し」と「ご都合主義」を合わせたような、とても強引な終わり方です。ストーリー・テリングとしては最悪に近く、現代ではまったく評価されない手法の一つです。神こそ登場しなくても、映画やドラマでそんな駄作はたくさんありますよね。
この映画も『デウス・エクス・マキナ』的な終わり方をする駄作なのでしょうか。



物語の主人公はインターネットの検索エンジンで有名な世界最大のIT企業「ブルーブック(Blue Book)」で働く若き男性プログラマー、ケイレブ(Caleb)。ある日ケイレブは選ばれて創業社長ネイサン(Nathan)の自宅に招待されます。ヘリコプターに乗せられたケイレブが向かったのは人里離れた広大な山岳地帯。大自然の中の巨大な施設に到着したケイレブは、たった一人で暮らしているネイサンがAIを搭載した精巧なロボットをひそかに開発していることを知らされます。
そしてネイサンの目の前に、美しい女性型ロボットが現れます。AIを搭載したアンドロイド「エヴァ」です。ネイサンはケイレブに、エヴァのAIに対してチューリング・テスト(Turing Test)を行ってほしいと依頼します。

Embed from Getty Images

ネイサン役のオスカー・アイザック(Oscar Isaac)とエヴァ役のアリシア・ヴィキャンデル
(2015年撮影)
Photo by Jim Spellman/WireImage [Rights-managed], via Getty Images

チューリング・テストは前々回前回でもご紹介しましたね。AIの知性を評価するためのテストで、人間が言葉のやりとりだけでAIのことを機械か人間か判別できない場合、そのAIは知性を持っていると判断できるというものです。
優秀なコンピュータ・エンジニアであるケイレブもそのことを知っていて、相手の姿が見えていてはチューリング・テストを行えないのではとネイサンに訊ねます。しかもエヴァは、顔面と手足の先だけが人間の姿で、それ以外の後頭部や胴体などは機械の体が透けて見えるロボロボな外見をしています。
ネイサンは、エヴァのAIが高度すぎて言葉のやりとりだけではAIであることが判別できないため、わざとロボットらしい外見にしているのだと答えます。
「既にチューリング・テストに合格しとるやん」という野暮なツッコミはしないでおきます。



テストを始めたケイレブは、エヴァと話します。エヴァは知的で奥ゆかしく、ケイレブは好意を抱きます。彼はエヴァがロボットだと知りながら、次第にエヴァに惹かれていきます。やがてエヴァが口にしたのがこの言葉です。
“Do you want to be my friend?”
「私と友達になりたい?」
ケイレブがどう答えたかは言うまでもありません。
そんな中、とつぜん施設が停電になります。ネイサンが言っていたように、電源が不安定になっているのです。監視カメラの電源も落ちているのを見たエヴァは、真剣な顔でケイレブにささやくのです。
“You shouldn't trust Nathan.”
「ネイサンを信用してはいけないわ」
確かに登場シーンから怪しさ全開のネイサンです。しかしなぜ彼を信用してはいけないのでしょうか。
こうしてケイレブが単なるチューリング・テストだと思っていたエヴァとの出会いは、思わぬ展開を見せて行きます。



進歩したAIを搭載したアンドロイドをどうやって人間と見分けるかは、古くからSF作品の恰好のテーマとしてとりあげられてきました。
僕の印象に最も残っているのは、リドリー・スコット(Ridley Scott)が監督したSF映画『ブレードランナー(Blade Runner)』(1982年アメリカ)です。フィリップ・K・ディック(Philip K. Dick)のSF小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?(Do Androids Dream of Electric Sheep?)』(1968年)を原作としてリドリー・スコットが設定と想像力を大きく膨らませた傑作です。
僕がものすごく好きな映画の一つです。(僕がものすごく好きな映画はたくさんあるのですが。)


ブレードランナー ファイナル・カット 製作25周年記念エディション [Blu-ray]

『ブレードランナー』の舞台は2019年のロサンゼルス。環境破壊により人類の大半は宇宙へ移住しています。地球に残った人々は酸性雨が降り注ぐ超高層ビル群の谷間で生活しています。
宇宙開拓の最前線では「レプリカント(replicants)」と呼ばれる人間そっくりの人造人間が過酷な奴隷労働に従事しています。しかしレプリカントたちは製造から数年たつと感情が芽生え、人間に反抗する事件が頻発するようになります。レプリカントには安全装置として寿命が4年間に設定されていますが、危険なレプリカントを4年も放置しておけません。そこで、逃亡して人間社会に紛れ込もうとするレプリカントを探し出して処分する警察の特殊捜査官が「ブレードランナー(blade runner)」なのです。



ある時、最新型のレプリカント6体が人間を殺害して脱走し、シャトルで地球に潜入したという情報が入ります。それを追うのがハリソン・フォード(Harrison Ford)演じる凄腕のブレードランナー、リック・デッカード(Rick Deckard)です。
デッカードらブレードランナーが人間とレプリカントを見分ける唯一の方法は「VKテスト」と呼ばれる「ヴォイト・カンプ検査(Voight-Kampff test)」です。原作では「フォークト=カンプフ検査」と訳されていました。人間の感情を大きく揺さぶるような質問を繰り返し、回答の内容や反応速度、表情や声、虹彩の反応などから総合的に判断する複雑な検査です。


アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫 SF (229))
フィリップ・K・ディック (著)

レプリカントを製造したタイレル社(Tyrell Corporation)を訪れたデッカードは、開発者である創業社長のタイレル博士(Dr Eldon Tyrell)への説明も兼ねて美しい女性秘書レイチェル(Rachel)にVKテストをすることになります。デッカードはレイチェルに多くの質問を繰り返し、レイチェルがレプリカントであることを見抜きます。自分が最新型のレプリカントだと知らされていなかったレイチェルは動揺し、行方不明となります。


【動画】“Blade Runner - Deckard Meets Rachel Pt 2 (Voight-Kampf Test) (『ブレードランナー』 - デッカードとレイチェルの出会い (2) (フォークト=カンプフ検査))”, by MagicalMovieMaestro, YouTube, 2007/08/22

この映画は言葉のやりとりだけによる単純なチューリング・テストだけでは人と人工知能を判別できなくなった世界を描いています。デッカードは逃亡したレプリカントを追ううちに、人間とは何か、記憶とは何かについて深く考えるようになり、レプリカントたちが人間であるように思えるようになります。そして次第にレイチェルに惹かれていくのです。
この映画は、一棟が一つの都市ほどの規模の超巨大な高層ビルが林立して自動車が空を飛ぶ高度なハイテク社会でありながら、大気汚染や貧困が解決できず都市の下層にはスラムのような世界が広がるという独特のディストピア的な未来像を巧みに描いています。CGの無かった時代に、特殊撮影と画面合成を使って見事な未来像の創造に成功しています。新宿の歌舞伎町のような街には日本語のネオンサインや動画CMが溢れ、日本語や中国語が飛び交っているのも印象的です。
このような未来世界のビジュアルは、その後のSF映画に大きな影響を与えます。


【動画】“Blade Runner (1982) Official Trailer - Ridley Scott, Harrison Ford Movie (『ブレードランナー』(1982年)公式予告編 - リドリー・スコット監督、ハリソン・フォード主演映画)”, by Movieclips Trailer Vault, YouTube, 2014/01/27

話がだいぶ『ブレードランナー』に逸れてしまいましたね。僕の大好きな映画なもので、すみません。
そういうわけで、僕が『エクス・マキナ』を見た時、女性アンドロイドに対してチューリング・テストをするというプロットが『ブレードランナー』にそっくりだなぁと思ったのです。
男性が女性型アンドロイドをテストして、そして惹かれていく。ロボットが恋愛対象になっていく。
あえて詳しくは書きませんが、現実世界でも性行為の対象としてのAI搭載ロボットも2017年のうちにアメリカで商品化されるそうです。2050年にはロボットと結婚する人も出てくるのではないかと予想する人もいます。
外見でも会話でも人間とアンドロイドの区別がつかなくなる世界が、まもなくやって来るのです。


【動画】“Can you tell if she's a robot or a human? (彼女がロボットか人間かわかりますか?)”, by VaDaS - en, YouTube, 2017/09/28

“Do you want to be my friend?”
私と友達になりたい?

アリシア・ヴィキャンデルのような魅力的な女性にこんなことを言われたら、たとえロボットだとしてもドキドキしてしまいますね。
はたしてケイレブはチューリング・テストの結果エヴァをロボットと判定するのでしょうか。それとも機械がむき出しの体にもかかわらず人間だと判定するのでしょうか。
そしてエヴァがケイレブに「ネイサンを信用しないで」と告げた真意は何だったのでしょうか。
それは映画をご覧になって下さい。

そして傑作『ブレードランナー』もぜひご覧になって下さい。
その30年後を描いた続編『ブレードランナー2049(Blade Runner 2049)』(2017年アメリカ)も公開中ですね。あわせてどうぞ。


【動画】“Ex Machina - Official International Trailer 1 (Universal Pictures) HD (『エクス・マキナ』 - 公式国際版予告編1(ユニバーサル映画))”, by Universal Pictures UK, YouTube, 2014/10/30

それでは今日はこのへんで。
またお会いしましょう! ジム佐伯でした。


【動画】“BLADE RUNNER 2049 - Official Trailer (『ブレードランナー2049』 - 公式予告編)”, by Warner Bros. Pictures, YouTube, 2017/05/08

【関連記事】第470回:“Whoever leads in AI will rule the world.” ―「AIを制する者が世界を制する」(プーチン), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2017年10月24日
【関連記事】第471回:“AI could spell the end of the human race.” ―「AIは人類を滅ぼすかもしれない」(スティーヴン・ホーキング), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2017年10月28日
【関連記事】第315回:“I have a bad feeling about this.” ―「なんだか嫌な予感がする」(『スター・ウォーズ』シリーズより), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2016年05月14日

【参考】Wikipedia(日本語版英語版
【参考】“AIの未来は人間の倫理をぶち壊す?映画『Ex Machina(エクス・マキナ)』は『her』を全然超えちゃった”, by 藤沢祐子(wasabi), The Huffington Post, 2016年02月06日
【参考】“欧米でカルトヒットのAI映画『エクス・マキナ』の知っておきたい総ての事”, by 維倉みづき, webDICE, 2016-05-24
【参考】“精密な「彼女」の不完全な魅力:映画『エクス・マキナ』がみせる人工知能の官能性”, by JORDAN CRUCCHIORA, WIRED, 2016.11.17
【参考】“美しき「機械仕掛けの神」エクスマキナ…人工知能がもたらす未来へのヒント”, by bimba, THE RIVER, 2016年2月22日
【参考】“単語記事: デウス・エクス・マキナ”, ニコニコ大百科(仮)
【参考】“デウス・エクス・マキナ”, ピクシブ百科事典
【参考】“人間なのか、ロボットなのか?それが問題だ。東京ゲームショウで撮影された動画に戦慄走る”, by 安藤健二, The Huffington Post, 2017年09月22日
【参考】“SIEブースにアンドロイドが登場!?【TGS2017】”, by 赤坂麻実, 日経トレンディネット, 2017年09月22日

【動画】“Blade Runner - Deckard Meets Rachel Pt 2 (Voight-Kampf Test) (『ブレード・ランナー』 - デッカードとレイチェルの出会い (2) (フォークト=カンプフ検査))”, by MagicalMovieMaestro, YouTube, 2007/08/22
【動画】“Blade Runner (1982) Official Trailer - Ridley Scott, Harrison Ford Movie (『ブレード・ランナー』(1982年)公式予告編 - リドリー・スコット監督、ハリソン・フォード主演映画)”, by Movieclips Trailer Vault, YouTube, 2014/01/27
【動画】“Can you tell if she's a robot or a human? (彼女がロボットか人間かわかりますか?)”, by VaDaS - en, YouTube, 2017/09/28
【動画】“BLADE RUNNER 2049 - Official Trailer (『ブレードランナー2049』 - 公式予告編)”, by Warner Bros. Pictures, YouTube, 2017/05/08
【動画】“Ex Machina - Official International Trailer 1 (Universal Pictures) HD (『エクス・マキナ』 - 公式国際版予告編1(ユニバーサル映画))”, by Universal Pictures UK, YouTube, 2014/10/30

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posted by ジム佐伯 at 07:00 | ロンドン | Comment(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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