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2017年10月12日

第467回:“Small is beautiful.” ―「小さいことは美しい」(E・F・シューマッハー、清少納言)

こんにちは! ジム佐伯です。
英語の名言・格言やちょっといい言葉、日常会話でよく使う表現などをご紹介しています。



第467回の今日はこの言葉です。
“Small is beautiful.”

「小さいことは美しい」
「小さいことはすばらしい」
という意味です。
これはドイツ生まれのイギリスの経済学者エルンスト・フリードリヒ・シューマッハー(Ernst Friedrich "Fritz" Schumacher, 1911-1977)の言葉です。
『スモール・イズ・ビューティフル』(Small Is Beautiful: Economics As If People Mattered)という著書のタイトルにもなっています。


エルンスト・フリードリヒ・シューマッハー
This I Believe: And Other Essays

“Bigger is better.”
「大きいことはいいことだ」
という言葉は前々回ご紹介しました。アメリカ人が本当に大きいものが大好きだということです。大きいものが大好きすぎて自分の体も大きくなってしまったというオチがついていました。
今日の言葉は、その価値観に真っ向から対立するものです。
アメリカ人の学者ではなく、ドイツ生まれのイギリスの学者が言ったところが絶妙ですよね。

0467-chick_and_egg.jpg
Image Copyright by Anatolii, Used under license from Links Co., Ltd.

エルンスト・フリードリヒ・シューマッハーが「スモール・イズ・ビューティフル」を書いたのは1973年、世界はまだまだ製鉄や自動車、石油化学工業などの重厚長大産業が絶好調の時代。大量生産・大量消費こそが正義とされていた時代です。
森永製菓が「大きいことはいいことだ」というコマーシャルを放映した1967年から6年しかたっていません。
しかしイギリス石炭公社の経済顧問を長年務めたシューマッハーは、同書の中で石炭と石油の枯渇によるエネルギー危機を予測します。そしてまさに同じ年の1973年に、第四次中東戦争の勃発を受けて原油の供給がひっ迫して価格が急騰し、第一次石油危機(1973 oil crisis)が始まります。そして世界経済は大混乱となったのです。


【動画】“60 Seconds: Oil Crisis 1973”, by ComCap Media, YouTube, 2016/12/05

この時日本も打撃を受け、急激なインフレやトイレットペーパーの買い占め騒動などが起きます。そして戦後日本の復興と発展の象徴だった高度経済成長は終わりを告げます。
しかし、一方でこの流れは日本経済にプラスにも働きます。燃費のよい日本の小型車は世界で人気となり、あまりにも売れすぎたため日米経済摩擦の原因にもなります。

0467-1973-1978_honda_civic_5-door_hathback_01.jpg
初代ホンダ・シビック(1972-1979年製造)
By OSX (Own work) [Public domain], via Wikimedia Commons

またiPodやiPhoneの先祖とも言える携帯音楽プレーヤー「ウォークマン」(Walkman)はソニーが世界に先駆けて発売し、音楽鑑賞のあり方にイノベーションをもたらします。
その後のパソコンや携帯電話の小型化の流れを見ても、情報革命・IT革命の世界では「スモール・イズ・ビューティフル」の価値観が主流となったと言えましょう。

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初代ウォークマン(1979年発売)
By Binarysequence (Own work) [CC BY-SA 4.0], via Wikimedia Commons

平安時代の女流歌人でエッセイストでもあった清少納言(Sei Shōnagon)は、そのエッセイ集『枕草子』(The Pillow Book)にある「うつくしきもの」という一節に、
「何も何も、小さきものは、みなうつくし。」
(何につけても、小さいものは、みなかわいらしい。)
と書いています。
まさに、日本では千年の昔からある価値観なのです。


枕草子 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)

“Small is beautiful.”
小さいことは美しい。

重厚長大産業と大量生産・大量消費の時代にエネルギー危機の到来を予言し、それまでの大きいほどよいという価値観とは真逆の価値観を提唱したエルンスト・フリードリヒ・シューマッハー。
その小さいほどよいという価値観は、日本の経済発展の原動力にもなった小型化の波と、21世紀型のITやIoTの新時代をも見抜いたものでした。
また、シューマッハーは夢の未来エネルギーと期待されていた原子力の利用にも警鐘を鳴らしました。
その慧眼には感服します。
そして1000年以上も前の昔に「小さきものは美しい」と言い切った清少納言。
今と変わらないその瑞々しい感性の鋭さには驚くばかりです。



それでは今日はこのへんで。
またお会いしましょう! ジム佐伯でした。

【関連記事】第465回:“Bigger is better.” ―「大きいことはいいことだ」(森永製菓、アメリカ人の価値観), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2017年10月04日
【関連記事】第1回:“Big things have small beginnings.”―「大事は小事より起こる」, ジム佐伯のEnglish Maxims, 2013年04月23日

【参考】Wikipedia(日本語版英語版
【参考】“E・F・シューマッハー「スモール・イズ・ビューティフル」”, ビットコンサルティング
【参考】“大震災から1年、シューマッハー『スモール イズ ビューティフル』を読みなおす”, by グローバル研究グループ 佐藤 仁 さん, InfoComニューズレター, 2012年3月12日
【参考】“清少納言さん、曰く。「なにもなにも 小さきものは みなうつくし」”, by ユーコ・ゴトー さん, ガラス絵画家 アトリエ便り, 2013-06-30
【参考】“枕草子「うつくしきもの」を今風の女子っぽく超現代語訳してみた”, by newsassort編集部, NewsAssort, 2016/02

【動画】“60 Seconds: Oil Crisis 1973”, by ComCap Media, YouTube, 2016/12/05



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posted by ジム佐伯 at 07:00 | ロンドン ☀ | Comment(2) | 経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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この記事へのコメント
のざわさん、こんにちは。ジム佐伯です。 コメントありがとうございます。そしていつもブログをご覧になって頂きありがとうございます。秋の花が綺麗な季節になりましたね。先日ヒース(ヘザー)の赤紫色の花が見渡す限りの大地を覆うノースヨークシャーの景色がBBCニュースで紹介されていました。僕は秋といえばキンモクセイの香りも大好きなのですが、イギリスではほとんど見られず残念です。清少納言も兼好も、現代の感覚でも「そうそう」と共感できる内容が多いですね。人間はいつの時代も同じなんだと少しホッとします。あと英米にはふっくらした人が多いですが、こちらに長く住むと日本女性のスリム信仰も少し行き過ぎかなあと感じます。まあどちらにしても健康が第一なんですけどね。コメントとても励みになります。これからもよろしくお願いします!!
Posted by ジム佐伯 at 2017年10月14日 04:59
ジム佐伯様、おはようございます。ジムさんのブログからとても勉強になっています。ありがとうございます。今日の記事もすごく心に響きました。清少納言の慧眼には感動しますね!秋に咲くミズヒキ、ワレモコウ、ホトトギスなどの花はとても好きです。特にミズヒキは小さな小さな赤い花が点々と茎に連なって咲いています。茶花とも言われるこういう花を古来日本人は愛してきたのですね。
シューマッハー氏は1973年にすでに重厚長大な産業、大量生産・大量消費の時代にエネルギー危機を預言し、真逆の価値観を提唱したのですね。また原子力の利用にも警鐘をならしたのですね。
余談ですが、背の低い人は劣等感を持ちますけど、反面かわいいですよね。まだ使えるものを捨てて、新しい物を買うという発想も、私たちの世代にはなじめません。節約や質素を教え込まれましたから。アメリカの消費文化はまさに真逆でした。前々回の貴記事に書かれたように、なんでもかんでも大きいなあとアメリカに旅行したとき感じました。そして肥満体の不健康な人達も大勢いました。帰国したとき、「日本人は概して健康体を維持していて、これは素晴らしいこと」と実感しました。
ジムさんのブログが大勢の方々に読まれるといいですね。
Posted by のざわ at 2017年10月13日 09:46
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