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2017年08月05日

第450回:“Mangiare, cantare, amore!” ―「食べよ、歌えよ、愛せよ!」(間違いが日本に広まったイタリア語)

こんにちは! ジム佐伯です。
英語の名言・格言やちょっといい言葉、日常会話でよく使う表現などをご紹介しています。

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Image courtesy of alexisdc, published on 27 October 2016 / FreeDigitalPhotos.net

第450回の今日はこの言葉です。
“Mangiare, cantare, amore!”

「マンジャーレ、カンターレ、アモーレ!」
と発音されます。
なんでしょう、これ。
英語ではありませんね。イタリア語のように見えます。
「食べよ、歌えよ、愛せよ!」
というイタリアの価値観やことわざだと言われます。

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Image courtesy of marin, published on 12 November 2012 / FreeDigitalPhotos.net

この言葉、「あれこれくよくよ悩まずに、食べて、歌って、恋をして楽しく過ごそうよ」という意味なのだそうです。明るく陽気なイタリア人がいかにも言いそうな言葉ですね。何かとストレスが多い過酷な現代社会を生き抜くためのイタリア人の知恵に見習って楽しく前向きに暮らしましょう、というような文脈でよく使われます。
イタリアのガイドブックや、旅行会社のパンフレットなどでもこの言葉を見たことがある方も多いのではないでしょうか。テレビドラマなどでも、友達が誰かを合コンやデートに誘う時や、ヒロインが自分を励ます場面などで使われたりします。

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Image courtesy of marin, published on 12 November 2012 / FreeDigitalPhotos.net

しかしこの言葉をググっても、ほとんど日本のサイトしかヒットしません。
イタリア人は本当にこの言葉を使っているのでしょうか。
イタリア語通訳のヤヨイさんのサイト「辛口ラブ。」では、次のように書かれています。
世の中の「ちょっとイタリア通」みたいな人がよく言うキメ台詞、「マンジャーレ・カンターレ・アモーレ」というの、あれ、やめて下さい!! 恥ずかしいから!!
(太字原文ママ、以下同様)
【参考】“イタリア人三原則のススメ。”, by ヤヨイ さん, 辛口ラブ。
マンジャーレとカンターレはそれぞれ動詞の原形なので、「食べる」「歌う」としていいんですが、アモーレというのは、動詞ではありません!!! 「愛」という意味の名詞です!!!
なので、これを訳せば「食べる、歌う、愛」という全く文法的に統一性の無い恥ずかしい文章になってしまうんです。

【参考】“イタリア人三原則のススメ。”, by ヤヨイ さん, 辛口ラブ。
なるほど、文法的に間違っていたんですね。Google検索で日本のサイトしかヒットしないのも仕方ありません。でも、ガイドブックやパンフレット、旅行会社のウェブサイトなど、いろんなところでこの間違ったイタリア語が使われてますよね。



河北新報の「庄内系イタリア人のViaggio al Mondo 〜あるもん探しの旅〜」というブログでは、「庄内系イタリア人」こと木村浩人さんが次のように書いています。
 この言葉が本国を含めて万国共通の言い回しなのか。いつどういう形で日本で使われるようになったのかを、前世イタリア人の名誉にかけて?在東京イタリア大使館の文化部が主宰する「イタリア文化会館」に問い合わせました。数日後に戻ってきた回答によると、本国イタリアやその他の国では全く使用されず日本に特有の表現であること。このフレーズに関する資料が存在せず(⇒当然だろう)、語源は不明であるが、推測では日本の観光業界が発信元ではないか?とのことでした。

【参考】“アモーレ・カンターレ・マンジャーレ?”, by 「庄内系イタリア人」こと 木村 浩人 さん, Viaggio al Mongo 〜あるもん探しの旅〜, 2007/09/10
うーん、なるほど。イタリア大使館の関係者が言っているなら間違いないですね。

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Image Copyright by Daniel Ernst, Used under license from Links Co., Ltd.

あと、「日本の観光業界が発信元ではないか?」というのは鋭い指摘です。
旅行会社さんの名誉のために名前もリンクも省略しますが、かなり大手の旅行会社さんでもいまだにこの言葉が使われています。
「マンジャーレ、カンターレ、アモーレ」の国イタリアでは、音楽は日常生活の一部。

― ローマの夜の楽しみ方 カンツォーネ鑑賞ディナー (ホテルお送り付)
カンツォーネとはイタリア語で歌
「マンジャーレ、カンターレ、アモーレ」
(食べる、歌う、愛する)の国イタリアでは、
音楽が欠かせません。


― もりだくさん!イタリアハイライト9日間
彼らの人生観を表すものとして、「マンジャーレ(Mangiare)、カンターレ(Cantare)、アモーレ(Amore)」という言葉がありますが、これを日本語にすると「食べて、歌って、愛するうちに一生が終わる」といったところでしょうか。

― そのイメージは本当に正しい!?〜ヨーロッパ各国の国民性〜
なるほど、いい言葉なだけに多用されてますね。

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Image Copyright by goodluz, Used under license from Links Co., Ltd.

でも僕は、さらにほかにも発信元があるんじゃないかと疑ってます。
沢田研二の34枚目のアルバム『サーモスタットな夏』(1997年)に収録されている最後の曲、『マンジャーレ! カンターレ! アモーレ!』がそうとう怪しいです。
とてもいい歌で、沢田研二が今見てもとても恰好いいんですけどね。


沢田研二『マンジャーレ!カンターレ!アモーレ!』
【動画】“official DVD”, by Kurt Moon, YouTube, 2017/04/10

イタリア語通訳のヤヨイさんは、次のように書いています。
というわけで、せめて、これを言う時には「マンジャーレ・カンターレ・アマーレ」と言ってください。
アマーレは「愛する」という動詞なので、せめてそうしてくれれば、わたくしとしても「まあ文法的には間違ってないよね」と、納得できるので。ね。

【参考】“イタリア人三原則のススメ。”, by ヤヨイ さん, 辛口ラブ。
ありがとうございます。「アマーレ」が正しいのですね。
確かにこちらの方がよりしっかりと韻も踏んでいて、いい感じです。
日本では「アモーレ」という言葉の認知度が高いばかりに、そちらが広まってしまったのでしょうね。

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Image Copyright by Bombaert Patrick, Used under license from Links Co., Ltd.

それでは、ヤヨイさんが言うように、
“Mangiare, cantare, amare.”
(マンジャーレ、カンターレ、アマーレ)
「食べよ、歌えよ、愛せよ」
という文法的に正しい言い方は、イタリアで本当に使われているのでしょうか。
しかし、「庄内系イタリア人」こと木村浩人さんがイタリア大使館の関係者に聞かれた限りでは、「本国イタリアやその他の国では全く使用されず」との返事でしたから、残念ながら使われていないのかもしれません。
もし文法的に正しいよく似た言葉が使われているのなら、それを教えてくれる筈だからです。

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Image courtesy of marin, published on 12 November 2012 / FreeDigitalPhotos.net

しかし、まったく使われていないわけでもないらしいのです。
イタリアの作曲家ジョアキーノ・ロッシーニ(Gioachino Rossini)がよく似た言葉を残しています。
“Mangiare e amare, cantare e digerire sono i quattro atti di quell'opera comica che è la vita.”
(マンジャーレ・アーレ・カンーレ・ディジェーレ、ソノイ・クアトロ・ッティディ・クエッペラ・ーミカ・ケーラヴィータ)
英語と日本語の訳は以下の通りです。
“Eating, loving, singing and digesting are the four acts of the comic opera known as life.”
「食べ、愛し、歌い、消化する。この4つの行為が人生という喜劇オペラの4幕なのだ」
おおっ!、かなり近い線いってますね。しかもこちらの方が含蓄がある素晴らしい言葉です。さすが料理を食べるのも作るのも大好きだった美食家ロッシーニ。イタリアの海原雄山(嘘)。
ロッシーニは40台の若さで作曲から引退して、料理の創作や高級レストランの経営に余生を費やしたという美味しい逸話の持ち主です。

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ジョアキーノ・ロッシーニ(1865年撮影)
Étienne Carjat [Public domain], via Wikimedia Commons

“Mangiare, cantare, amore!”
「マンジャーレ、カンターレ、アモーレ!」
食べよ、歌えよ、愛せよ!

日本ではわりと有名な言葉です。言っていることも説得力があり、僕も多いに賛同します。
しかし残念ながら文法的には正しくないようです。正しくは、
“Mangiare, cantare, amare!”
「マンジャーレ、カンターレ、アマーレ!」
です。これからはこちらを使うようにしましょう。
元々誰の言葉だったかを探ってみると、旅行業界でも沢田研二でもなく、意外にもロッシーニの
“Mangiare e amare, cantare e digerire...”
「マンジャーレ、アマーレ、カンターレ、ディジェリーレ...」
「食べ、愛し、歌い、消化すること...」
という言葉にたどり着きました。
ロッシーニ、僕も大好きです。
『ウィリアム・テル』序曲(William Tell Overture)もわくわくしますし、『泥棒かささぎ』序曲(La gazza ladra Overture)もパスタをゆでながら聞くのに最適です。『セビリアの理髪師』(The Barber of Seville)はベートーヴェンも絶賛しました。
早々に作曲を引退して美食家としても有名になり、フランス料理のメニューに名前がつくほど食にこだわったという逸話も面白いです。
まさにイタリア的な、マンジャーレ、カンターレ、アマーレに満ちたオペラのような人生です。

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トゥルヌド・ロッシーニ(Tournedos Rossini)(2015年撮影)
(牛ヒレ肉とフォアグラのロッシーニ風)
By Pcs34560 (Own Work) [Public domain], via Wikipedia

それでは今日はこのへんで。
またお会いしましょう! ジム佐伯でした。


【動画】“ロッシーニ: 歌劇「泥棒かささぎ」序曲 / マゼール フェニーチェ歌劇場管弦楽団 (2004)”, by 近衛耕作, YouTube, 2017/01/04

【関連記事】第43回:“Rome wasn't built in a day.”―「ローマは一日にしてならず」(ことわざ), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2013/06/22
【関連記事】第42回:“By all means, Rome.”―「なんといってもローマです」(ローマの休日), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2013/06/20
【関連記事】第311回:“Pastaaaaa!” ―「パスターーーーー!」(イタリア)(『Axis Powersヘタリア』より), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2013年11月24日
【関連記事】第426回:“Who are you?” ―「お前は誰だ?」(森首相が言ったとされる言葉 ― 捏造ジョークより), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2017/05/01

【参考】Wikipedia(日本語版英語版
【参考】“イタリア人三原則のススメ。”, by ヤヨイ さん, 辛口ラブ。
【参考】“アモーレ・カンターレ・マンジャーレ?”, by 「庄内系イタリア人」こと 木村 浩人 さん, Viaggio al Mongo 〜あるもん探しの旅〜, 2007/09/10
【参考】“イタリア語で「愛してる」の言い方まとめ厳選10フレーズ”, by spintheearth さん, Spin The Earth
【参考】“イタリア語文法解説 - 命令法1 規則動詞”, イタリア語のすすめ
【参考】“命令法”, イタリア語のために, 2010/03/05
【参考】“MANGIARE E AMARE, CANTARE E DIGERIRE (食べ、愛し、歌い、消化する)”, Fish Carbonara, CheFigaro!
【参考】“作曲家兼美食家、ロッシーニのレシピ”, by オペラガイド メサマデロ アントニオ, All About, 2015年06月01日

【動画】“official DVD”, by Kurt Moon, YouTube, 2017/04/10
【動画】“ロッシーニ: 歌劇「泥棒かささぎ」序曲 / マゼール フェニーチェ歌劇場管弦楽団 (2004)”, by 近衛耕作, YouTube, 2017/01/04

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posted by ジム佐伯 at 07:00 | ロンドン | Comment(0) | TrackBack(0) | 言葉の一人歩き | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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