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2017年02月02日

第404回:“The eagle has landed.”―「鷲は舞い降りた」(ジャック・ヒギンズ)

こんにちは! ジム佐伯です。
英語の名言・格言やちょっといい言葉、日常会話でよく使う表現などをご紹介しています。



第404回の今日はこの言葉です。
“The eagle has landed.”

「鷲は舞い降りた」
という意味です。
これはイギリスの小説家ジャック・ヒギンズ(Jack Higgins, 1929-)の小説『鷲は舞い降りた』のタイトルです。



ジャック・ヒギンズ(1980年撮影)
Photo by United News/Popperfoto/Getty Images

ジャック・ヒギンズの本名はヘンリー・パターソン(Henry Patterson)。1929年にイングランド北部のニューカッスルに生まれ、北アイルランドのベルファストに育ちます。15歳の時にロンドンを出ていろいろな仕事をして働いた後、18歳の時に徴兵されて2年間兵役につきます。東ヨークシャー連隊で1年過ごした後に王室騎兵隊(Household Cavalry)のロイヤル・ホースガーズ連隊(Royal Regiment of Horse Guards)の下士官を1年務めます。射撃と諜報の才能があったと言われています。

0404-state_opening_of_parliament_2015.jpg
ロイヤル・ホースガーズ連隊
(2015年撮影)
by John Pannell from Watford, UK (Flickr) [CC BY 2.0], via Wikimedia Commons

ヒギンズは陸軍を除隊になると、夜間に働きながらロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE: London School of Economics)で社会学を学びます。そして大学を卒業すると社会心理学や犯罪学、歴史などの教師となります。
ヒギンズは30歳の頃から冒険小説を書くようになります。そして1964年に教職を辞め、専業作家となります。35歳の頃です。ヒギンズは本名のヘンリー・パターソンのほかに、ジェームズ・グレアム(James Graham)やマーティン・ファロン(Martin Fallon)、ヒュー・マーロウ(Hugh Marlowe)など複数のペンネームを使い分けて小説を書きます。ジャック・ヒギンズも多くのペンネームの一つです。
1975年、ジャック・ヒギンズ名義で『鷲は舞い降りた(The eagle has landed)』を発表します。この作品は発表直後から6ヶ月間ベストセラーとなり、当時の連続1位記録を塗り替えます。この作品で冒険小説家としてのジャック・ヒギンズの名声は不動のものとなります。
そして翌年にはジョン・スタージェス(John Sturges)が監督した映画『鷲は舞いおりた(The Eagle Has Landed)』(1976年イギリス)が公開されます。



物語の舞台は第二次世界大戦下のヨーロッパ。
開戦初期は連戦連勝を誇ったドイツ軍は次第に連合軍に反攻され、敗色が濃厚となっています。ドイツ軍は状況を打開すべく、奇想天外な作戦を計画します。それはイギリス本土へ特殊部隊を落下傘降下させ、ウィンストン・チャーチル首相を誘拐するというものです。
最初は不可能と思われていたこの作戦ですが、ドイツ空軍降下猟兵部隊のクルト・シュタイナ中佐(Kurt Steiner)と部下の降下猟兵(落下傘部隊)たち、元IRA(アイルランド共和軍)の歴戦の工作員リーアム・デヴリン(Liam Devlin)などがチームに加わり、次第に具体性を増して行きます。
そしてある日、シュタイナ率いる降下猟兵はイギリス東海岸のノーフォークの田舎町に悪天候をついて落下傘降下します。そして降下成功を伝える暗号電文が発信されます。
“THE EAGLE HAS LANDED”
「鷲は舞い降りた」
と...。

0404-fallschirmjaeger_bei_ausbildung.jpg
落下傘降下するドイツ軍降下猟兵
(1943年撮影)
(本文とは関係ありません)
Bundesarchiv, Bild 101I-562-1172-23A / Wahner / CC-BY-SA 3.0, cropped by Jim Saeki on 9th January 2017 [CC BY-SA 3.0 de], via Wikimedia Commons

この作戦、荒唐無稽のように見えますが、実は実在したある軍事作戦をもとにしています。
1943年7月、ドイツの同盟国イタリア王国のベニート・ムッソリーニ(Benito Mussolini)は首相の座を追われて逮捕されます。ドイツのアドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler)はムッソリーニが逮捕された翌日に彼の救出を命じます。9月にイタリアは連合国に無条件降伏します。ムッソリーニはアペニン山脈の高峰グラン・サッソの山荘に幽閉されます。
そしてある日、ドイツ空軍の降下猟兵を乗せたドイツ空軍のグライダー12機のうち8機が山荘近くへ着陸します。降下猟兵たちは一発の弾丸も撃たずに山荘を制圧し、ムッソリーニを救出します。そして偵察機でグラン・サッソからの脱出に成功します。
作中でも、この救出成功を喜んだヒトラーが調子に乗って降下猟兵によるチャーチルの誘拐を命令したという設定になっています。

0404-gran_sasso_mussolini_vor_hotel.jpg
グラン・サッソの山荘前にて
中央右の黒服がムッソリーニ、
中央がナチス親衛隊のオットー・スコルツェニー、
中央左でガッツポーズをしているのが降下猟兵を率いたハラルト・モルス
(1943年撮影)
Bundesarchiv, Bild 101I-567-1503C-15 / Toni Schneiders / CC-BY-SA 3.0 [CC BY-SA 3.0 de], via Wikimedia Commons

“The eagle has landed.”
という言葉、まったく別の場面でも有名です。
1969年7月、アポロ11号(Apollo XI)の人類発の月面着陸です。
月へ向かったアポロ11号は、司令船コロンビア(Columbia)から月着陸船イーグル(Eagle)を分離します。イーグルには宇宙飛行士ニール・アームストロング(Neil Armstrong)バズ・オルドリン(Buzz Aldrin)が乗っています。そしてイーグルは月の「静かの海(Sea of Tranquility)」への着陸に成功します。
アームストロングは着陸の成功を次のように地球に伝えます。
“Houston, Tranquility Base here.
The Eagle has landed.”

「ヒューストン、こちら静かの海基地。
イーグルは着陸した。」
実はこれ、ジャック・ヒギンズが小説を発表するより何年も前の出来事です。
歴史に名高いこのフレーズをヒギンズが『鷲は舞い降りた』のタイトルに拝借したのかもしれません。


【動画】“The Eagle Has Landed (Apollo 11) (イーグルは着陸した(アポロ11号))”, by 172HoursontheMoon, YouTube, 2012/02/29

この言葉にはほかにも面白いエピソードがあります。
作家の村上春樹が神田の神保町にあった老舗の古書店でジャック・ヒギンズの『鷲は舞い降りた』の原書を見かけたそうなのですが、店の主人が手作りのカードで記載した日本語タイトルがなんと、
『鷲は土地を所有していた』
だったのだそうです。
“The Eagle has landed”
の迷訳でツッコミどころ満載ですが、とても面白い誤訳ですよね。
村上春樹のエッセイ『村上朝日堂』(1987年)で紹介されているエピソードです。



“The Eagle has landed”
鷲は舞い降りた。

不可能に近い作戦にあえて挑戦したクルト・シュタイナとリーアム・デヴリン。
はたしてイギリスに潜入した降下猟兵たちはチャーチルの誘拐に成功できるのでしょうか。
それは作品をご覧になって下さい。


【動画】“The Eagle Has Landed - Trailer. (『鷲は舞い降りた』予告編)”, by 05HK09, YouTube, 2009/06/23

それでは今日はこのへんで。
またお会いしましょう! ジム佐伯でした。

【関連記事】第5回:“One small step for (a) man, one giant leap for mankind.”―「一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である」(アームストロング), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2013年04月27日

【参考】Wikipedia(日本語版英語版

【動画】“The Eagle Has Landed (Apollo 11) (イーグルは着陸した(アポロ11号))”, by 172HoursontheMoon, YouTube, 2012/02/29
【動画】“The Eagle Has Landed - Trailer. (『鷲は舞い降りた』予告編)”, by 05HK09, YouTube, 2009/06/23

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posted by ジム佐伯 at 07:00 | ロンドン ☔ | Comment(0) | TrackBack(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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