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2016年12月22日

第391回:“It goes on.” ―「人生は続く」(ロバート・フロスト)

こんにちは! ジム佐伯です。
英語の名言・格言やちょっといい言葉、日常会話でよく使う表現などをご紹介しています。



第391回の今日はこの言葉です。
“It goes on.”

「それは続く」
という意味です。
これはアメリカの詩人ロバート・フロスト(Robert Frost, 1874-1963)の言葉です。
日本ではあまり知られていませんが、アメリカではピューリッツァー賞を4度も受賞した人気のある詩人です。
実はこれ、次のような言葉の一部です。
“In three words I can sum up everything I've learned about life − It goes on.”
「私が人生について学んだすべてのことは三語でまとめることができる ― 人生は続く」
したがって、この言葉は
「人生は続く」
という意味として使われています。

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ロバート・フロスト(1941年撮影)
By Fred Palumbo, World Telegram staff photographer [Public domain], via Wikimedia Commons

ロバート・フロストは1874年にカリフォルニア州のサンフランシスコに生まれます。イングランド系の父親は教師で、後に新聞の編集の仕事をします。母親はスコットランド系の移民です。
フロストは少年の頃に父親を亡くし、一家で東海岸のマサチューセッツ州のローレンスという町にいる祖父のもとに引っ越します。祖父はそこで紡績工場を経営しています。そこで通ったハイスクールの雑誌にフロストは詩を書くようになります。
ハイスクールを卒業したフロストはハノーヴァーにある名門ダートマス大学(Dartmouth College)に入学しますが2ヶ月ほどでやめ、ローレンスに戻って教師やいろいろな仕事をします。そしてフロストは詩を書くことこそが天職と考えるようになります。

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ローレンスの街並
(2005年撮影)
By Marcbela (Marc N. Belanger) (Own work) [Public domain], via Wikimedia Commons

1894年、20歳のフロストは最初の詩『マイ・バタフライ(My Butterfly. An Elegy)』を発表します。
翌1895年、フロストはハイスクール時代の恋人だったエレノア・ホワイト(Elinor White)と結婚します。
フロストは23歳の頃からハーバード大学(Harvard University)に通いますが、こちらも2年ほどで中退します。
その後フロストは祖父が購入してくれたニューハンプシャー州の農場に住み、早朝に詩を書いて日中に農作業をする生活を何年か続けます。しかし農業でも成功せず、フロストは32歳の頃から英語の教師となります。アメリカの英語ですから日本での「国語」にあたります。

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30代の頃のフロスト
(1910年代頃撮影)
By Unknown at the source. [Public domain], via Wikimedia Commons

1912年、フロストは一家でイギリスのロンドン近郊へ移住します。フロストはイギリスの詩人たちと交流を深め、作品を出版する準備をします。
1913年にフロストは最初の詩集『少年の心(A Boy's Will)』を、さらに翌1914年に詩集『ボストンの北(North of Boston)』をイギリスで発表します。
1914年に第一次世界大戦(World War I)が勃発したため、フロスト一家は翌年アメリカへ戻ります。
ちょうど『少年の心』がアメリカでも出版され、フロストはイギリスに滞在していた間に一躍大人気作家となっています。フロストは40歳にして詩人として大ブレイクするのです。
1916年には『山の合間(Mountain Interval)』、1923年には『ニュー・ハンプシャー(New Hampshire)』を発表します。



『山の合間』に収録されている『選ばれざる道(The road not taken)』という詩は、アメリカの小中学校で多くの子供たちが国語で習う有名な作品です。
“Two roads diverged in a yellow wood,
 And sorry I could not travel both”


「黄色に染まった森の中で、道が二手に分かれていた
 残念ながら、両方の道を選ぶことはできなかった」
こんな言葉でこの詩は始まります。
片方の道は多くの人がよく通る、整備された道。
そしてもう一方は誰も通らない、草が生い茂った道。
どちらの道を選んだかということを描いた詩です。アメリカ人の国民性がよく出ている、素晴らしい詩だと思います。英語原文でも日本語訳でもいいですから、ぜひ全文を読んでみて下さい。


【動画】“The Road Not Taken, by Robert Frost (HD)”, by QuestioVerum2010, YouTube, 2012/11/07

1924年、フロストは『ニュー・ハンプシャー』でピューリッツァー賞(Pulitzer Prizes)の詩の部門を受賞します。50歳の時です。
ピューリッツァー賞というと報道や写真などのジャーナリズム部門が有名ですが、フィクションや詩、戯曲などの文学部門も毎年表彰されています。
さらにフロストは1931年に『ロバート・フロスト詩選集(Collected Poems of Robert Frost)』(1934年)で、1937年『遙かな山並(A Further Range)』(1936年)で、1943年にあかしの樹(A Witness Tree)』(1942年)で、それぞれピューリッツァー賞を受賞します。
1人で4回受賞したのは最多記録で、ほかに4度も受賞したのは文学部門で2人、報道部門では1人しかいません。

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ロバート・フロスト
(1941年撮影)
By Fred Palumbo, World Telegram staff photographer [Public domain], via Wikimedia Commons

フロストはニューハンプシャー州の農場で隠棲生活を楽しみながら詩の創作を続け、アマースト大学(Amherst College)ミドルベリー大学(Middlebury College)ミシガン大学アナーバー校(University of Michigan, Ann Arbor)などで教鞭をとります。
フロストの作品は、アメリカ北東端のニューイングランド地方の農村生活を題材としているのが特徴です。そして複雑な社会的テーマや哲学的テーマを対象としたものも多いです。また時代を経るにつれて、フロストの詩は形而上的な傾向が出てきたり、時評的な作品がまじるようになります。
フロストは各地で講演や自作詩の朗読なども行います。フロストの講演は機知やユーモアに富んでいて、聴衆を魅了したそうです。
“It goes on.”
「人生は続く」
という言葉も、フロストが1931年にアマースト大学で行った講演で話されたものです。

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85歳の誕生日を祝うフロスト
(1959年撮影)
By Walter Albertin, World Telegram staff photographer [Public domain], via Wikimedia Commons

1961年1月、ジョン・F・ケネディ(John F. Kennedy)の大統領就任式でフロストは史上初めて就任式での詩の朗読を行います。フロストは86歳と高齢でしたが、ケネディ自身の強い希望で引き受けたのだそうです。フロストはこの時のために新しく作った詩『専心(Dedication)』を朗読する予定でした。しかし直射日光と前日降り積もった雪の反射光が強く、白内障をわずらっていたフロストはわずか数行を読んだだけで、原稿を読むことができなくなってしまいます。
孫のような年齢のケネディ大統領が気遣い、ジョンソン副大統領も帽子で影を作ったりしますが、それでもうまくいきません。
しかしフロストは静かに助けを断り、一言冗談を言ってから、別の作品を暗唱するのです。
それは『証しの樹』に収録された『まるごとの贈り物(The Gift Outright)』という詩です。
アメリカ合衆国の成立が歴史的に述べられた愛国的な詩です。
聴衆はそれを聞いて感動し、喝采を送ります。


【動画】“January 20, 1961 - Poet Robert Frost at President John F. Kennedy's Inauguration”, by HelmerReenberg, YouTube, 2013/06/28

ケネディの就任式で詩を朗読した2年後の1963年1月、フロストはボストンで息をひきとります。88歳の時のことです。そしてフロストが孫のようにかわいがったケネディも、同年11月に暗殺されてこの世を去ります。
フロストの墓碑には、
“I had a lover's quarrel with the world”
「私は世界を相手に痴話喧嘩をした」
と刻まれます。
これは『証しの樹』に収録された一編『今日のレッスン(The Lesson for Today)』から引用されています。
この詩の最後に、
“And were an epitaph to be my story
I’d have a short one ready for my own.
I would have written of me on my stone:
I had a lover’s quarrel with the world.”


「墓碑銘が私の物語なら
 短いものを用意しておこう
 墓石にはこう書いておこう:
 私は世界を相手に痴話喧嘩をした」

 訳:Jim Saeki
愛する人とのいさかいに人生をたとえたフロストは、それだけ人生を愛していたのでしょう。墓碑の言葉まで愛とユーモアにあふれた、フロストらしいエピソードだと思います。

Robert Frost Grave
ロバート・フロストの墓碑
【Flickr】“Robert Frost Grave”, by Lindsey Ocker, Taken on June 11, 2010

“It goes on.”
人生は続く。

短いですが、とても奥深い言葉ですね。
「人生で学んだすべてをまとめた言葉」とフロストが語ったのもうなずけます。
僕の人生も皆さんの人生も続きます。
このブログを通して、僕の人生と皆さんの人生がわずかでも交わったのはうれしいことです。
皆さんの人生が愛と幸せに満ちたものでありますように。


【動画】“Robert Frost - Mini Biography”, by BIO, YouTube, 2013/08/29

それでは今日はこのへんで。
またお会いしましょう! ジム佐伯でした。

【関連記事】第37回:“第30回:“The show must go on.”―「ショーは続けなければならない」(ことわざ), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2013年05月30日
【関連記事】第131回:“Ask what you can do for your country.”―「君たちが国のために何ができるのかを問うて欲しい」(ケネディ大統領), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2013年11月24日
【関連記事】第100回:“I dare hope that our paths will cross again.”―「また皆さんとお会いできることを望みます」(高円宮妃久子さま), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2013年09月29日

【参考】Wikipedia(日本語版英語版
【参考】“【ESL】English Café 527-3 詩人Robert Frost(ロバート・フロスト)”, 糸電話のむこうから英語, 2015/11/09
【参考】“ロバート・フロスト名言まとめ(日本語、英語)”, estoryPost, 2013年1月28日
【参考】“偉人 ロバート・フロスト 名言集(英訳付)”, 心の常備薬, 2016/03/18
【参考】“[Life] 人生の分かれ道の話をしよう”, by わっと ( @WatOno )さん, Peanut Butter and Jelly, 2013/01/13
【参考】“第5回 ロバート・フロスト”, by Tetsuo Koga, An Invitation to Modern American Poetry, Internet Lecture series, 2003.9
【参考】“Robert Frostの反核詩について”, by 山田武雄, 関西学院大学, NII-Electronic Library Service, 2003.9
【参考】““I had a lover’s quarrel with the world” by Robert Frost (「私は世界を相手に痴話喧嘩をした」ロバート・フロスト)”, by David Paul Kirkpatrick, David Paul Kirkpatrick's Living In The Metaverse, March 26, 2015
【参考】“フロストの中の伝統と日常的なもの”, by 関田敬一, 創価大学英文学会, 創価大学学術機関レポジトリ, 30-Sep-2009
【参考】“Story Of My Life : One Direction”, by Kalavinkaさん, 工場日記, 2014-01-06

【Flickr】“Robert Frost Grave”, by Lindsey Ocker, Taken on June 11, 2010

【動画】“The Road Not Taken, by Robert Frost (HD)”, by QuestioVerum2010, YouTube, 2012/11/07
【動画】“January 20, 1961 - Poet Robert Frost at President John F. Kennedy's Inauguration”, by HelmerReenberg, YouTube, 2013/06/28
【動画】“Robert Frost - Mini Biography”, by BIO, YouTube, 2013/08/29

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posted by ジム佐伯 at 07:00 | ロンドン | Comment(0) | TrackBack(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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