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2016年09月26日

第362回:“Turn the other cheek.” ―「別の頬を出しなさい」(イエス・キリスト) (聖書)

こんにちは! ジム佐伯です。
英語の名言・格言やちょっといい言葉、日常会話でよく使う表現などをご紹介しています。

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Image courtesy of David Castillo Dominici, published on 23 January 2012 / FreeDigitalPhotos.net

第362回の今日はこの言葉です。
“Turn the other cheek.”

「別の頬を出しなさい」
「もう一つの頬を出しなさい」
という意味です。
これは、
“If anyone slaps you on the right cheek, turn to them the other cheek also.”
「右の頬を打たれたら左の頬を出しなさい」
という言葉の一部です。
新約聖書(New Testament)マタイによる福音書(Gospel of Matthew)に収められたイエス・キリスト(Jesus Christ)の言葉として有名です。

0362-jesus_christ_from_hagia_sophia.jpg
イエス・キリスト
(12世紀頃のモザイクイコン、イスタンブールのハギア・ソフィア大聖堂)
By Edal Anton Lefterov (Own work) [CC BY-SA 3.0], via Wikimedia Commons

「イエス」はヘブライ語の「ヨシュア(イェホーシューア, יְהוֹשֻׁעַ)」を短縮した「イェーシュア」が古代ギリシア語で「イエスース(Ίησοῦς)」と呼ばれたものが日本で慣用的に「イエス」と呼ばれるようになったものです。日本では時代や教派によって「ゼスス」「イエズス」「イイスス」などとも呼ばれましたが、現代は「イエス」の呼び方でほぼ統一されています。英語では「ジーザス(Jesus)」と呼ばれます。
「キリスト」とは姓ではなく「救済者」「救世主」という意味を持つ称号です。ヘブライ語の「メシア(マーシアハ, מָשִׁיחַ‎)」が翻訳されて古代ギリシア語で「クリストス(Χριστός)」と呼ばれたものが日本で慣用的に「キリスト」と呼ばれるようになったものです。英語で「メシア」は「メサイア(Messiah)」、「キリスト」は「クライスト(Christ)」と呼ばれます。
したがって、「イエス・キリスト」(英語で「ジーザス・クライスト)」とは「救世主イエス」という意味の呼称です。

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ボッティチェリが描いたイエスの降誕
(15世紀の絵画)
Sandro Botticelli [Public domain], via Wikimedia Commons

イエスは紀元前4年頃にエルサレム(Jerusalem)の南にあるベツレヘム(Bethlehem)で生まれ、ガリラヤ地方のナザレ(Nazareth)で育ったと言われます。いずれも当時はローマ帝国のユダヤ属州(Judea)で、現在のイスラエルとパレスチナにあたります。初代皇帝アウグストゥス(Augustus)と第2代皇帝ティベリウス(Tiberius)の時代です。

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ユダヤ属州(濃い赤色の部分)
薄い赤色はローマ帝国の勢力範囲
ThomasPusch [GFDL or CC BY-SA 3.0], via Wikimedia Commons

父のヨセフは大工で、母のマリアは結婚前に聖霊によりイエスを身ごもったと言われています。幼少の頃のイエスはとても聡明な子だったそうです。ナザレ出身のため、「ナザレのイエス(Jesus of Nazareth)」と呼ばれます。
ある時イエスは聖霊の導きで荒れ野に送り出され、そこで40日間の断食をした後に悪魔サタンからの試練を受けます。
「マタイによる福音書ふくいんしょ」に記載されたイエスとサタンとのやりとりは、以前ご紹介しましたね。

【関連記事】第359回:“Man shall not live by bread alone.” ―「人はパンのみにて生くるものにあらず」 (聖書), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2016年09月17日

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荒野でサタンの試練を受けるイエス
(16世紀の絵画)
Juan de Flandes [Public domain], via Wikimedia Commons

荒野での試練の後、イエスはガリラヤで宣教を開始します。弟子たちと様々な土地を訪れ、神の福音ふくいんを説いたりあらゆる病気を治したりして評判となり、各地から群衆がイエスのもとに集まります。
イエスは群衆を見て山に登り、山の上で弟子たちに語りかけます。山上さんじょう垂訓すいくん(Sermon on the Mount)と言われます。
ここでイエスが語った言葉はキリスト教の中心的な教えが多く含まれていてとても重要です。
「別の頬を出しなさい」という今日の言葉も、山上でイエスが語ったものです。

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ブロッホが描いた山上の垂訓
(19世紀の絵画)
Carl Heinrich Bloch [Public domain], via Wikimedia Commons

「マタイによる福音書」の5章38節にはイエスの言葉として次のように書かれています。
“You have heard that it was said, ‘Eye for eye, and tooth for tooth.’”
「『目には目を、歯には歯を』と言われていたことは、あなたがたの聞いているところである。 」
(マタイ 5:38)
続く39節でイエスは続けます。
“But I tell you, do not resist an evil person. If anyone slaps you on the right cheek, turn to them the other cheek also.”
「しかし、わたしはあなたがたに言う。悪人に手向かうな。もし、だれかがあなたの右の頬を打つなら、ほかの頬をも向けてやりなさい。」
(マタイ 5:39)
この言葉は「目には目を」の教えを否定したものだったのです。


【動画】“Son of God Movie CLIP - Turn the Other Cheek (2014) - Jesus Movie HD (『サン・オブ・ゴッド』映画クリップ - 別の頬を出しなさい(2014年))”, by Movieclips Coming Soon, YouTube, 2014/02/26

山上の垂訓では、ほかにも、
“Love your enemies.”
なんじの敵を愛せ」
(マタイ 5:44)
“Knock and the door will be opened to you.”
たたけよ、さらば開かれん」
(マタイ 7:4)
“Enter through the narrow gate.”
「狭き門より入れ」
(マタイ 7:13)
などの教えが語られます。いずれも超有名な言葉ですので、読まれたり耳にされたりした方も多いと思います。

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イスラエルにある「山上の垂訓教会(Church of Beatitudes)」
By No machine-readable author provided. Bantosh~commonswiki assumed (based on copyright claims). [Public domain], via Wikimedia Commons

イエスはその後も単なる説教だけでなく、病人の病気を治したり水を葡萄酒に変えたり、嵐を静めたり水上を歩行したりと、さまざまな奇跡を行って人々を驚かせ畏怖させたといわれます。
イエスは自らをユダヤ人の王であると名乗り、また「神の子」あるいは救済者(メシア)であると自称します。またイエスはユダヤ教の指導者たちのあり方を、見せかけだけの善行であるとして痛烈に批判します。その結果イエスはユダヤの裁判にかけられた後、ローマ政府に引き渡されてエルサレムのそばのゴルゴタの丘で十字架にはりつけにされます。当時でも反逆者にしか執行されない、残酷で最も重い刑罰です。
その後イエスは十字架から降ろされて埋葬されますが、3日後に復活して弟子たちの前に現れたと聖書には書かれています。
弟子たちはイエスが罪ある人間を救済するために自ら十字架にかけられ、復活したものとしてイエスの生涯や神の教えを伝道します。これが現在まで続いたものがキリスト教です。

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マンテーニャが描いたキリストの磔刑
(15世紀の絵画)
Andrea Mantegna [Public domain], via Wikimedia Commons

“Turn the other cheek.”
別の頬を出しなさい。

「目には目を」という言葉も、やられたらやり返すことを奨励するのではなく、報復合戦の拡大に歯止めをかけるための教えでした。
当時の常識だった「目には目を」からさらに大きく一歩踏み込んで、徹底的な非暴力を説いたイエス・キリスト。
今の感覚でもちょっとやりすぎではと思うほどの非暴力です。
しかし現在でもテロや犯罪、戦争などで憎しみの連鎖で暴力がエスカレートする例が後を絶ちません。
お互いにこのような気持ちを持つことができたなら、きっとその連鎖を断ち切ることができることでしょう。
右の頬をぶたれたら左の頬を出す勇気を持ちたいものです。

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Image courtesy of nenetus, published on 18 September 2015 / FreeDigitalPhotos.net

それでは今日はこのへんで。
またお会いしましょう! ジム佐伯でした。


【動画】“映画『サン・オブ・ゴッド』予告編”, by クリスチャントゥデイ, YouTube, 2014/10/15

【関連記事】第361回:“Eye for an eye.” ―「目には目を」 (ハンムラビ法典、聖書), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2016年09月23日
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【参考】Wikipedia(日本語版英語版
【参考】“目には目を”, by 野村富恵, 聖書, 2000.11.23
【参考】“「目には目を、歯には歯を」の本当の意味”, by 富士山蘊恥庵庵主 (Maukie), 不二草紙 本日のおススメ, 2012.10.10

【動画】“Son of God Movie CLIP - Turn the Other Cheek (2014) - Jesus Movie HD (『サン・オブ・ゴッド』映画クリップ - 別の頬を出しなさい(2014年))”, by Movieclips Coming Soon, YouTube, 2014/02/26
【動画】“映画『サン・オブ・ゴッド』予告編”, by クリスチャントゥデイ, YouTube, 2014/10/15

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posted by ジム佐伯 at 07:00 | ロンドン | Comment(0) | TrackBack(0) | 宗教 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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