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2016年09月23日

第361回:“Eye for an eye.” ―「目には目を」 (ハンムラビ法典、聖書)

こんにちは! ジム佐伯です。
英語の名言・格言やちょっといい言葉、日常会話でよく使う表現などをご紹介しています。

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By Laitr Keiows (Own Work) [CC BY-SA 3.0 or GFDL], via Wikimedia Commons

第361回の今日はこの言葉です。
“Eye for an eye.”

「目には目を」
という意味です。
「目を潰されたら相手の目を潰す」
という意味とされています。
“Eye for an eye, tooth for a tooth.”
「目には目を、歯には歯を」
とセットで使われたりもします。
これはバビロン第1王朝(古バビロニア王国)のハンムラビ法典(Code of Hammurabi)から来ている言葉です。
聖書(Bible)の中でもいろいろなところでこの言葉が出てきます。

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Image courtesy of graur codrin, published on 13 February 2010 / FreeDigitalPhotos.net

ハンムラビ法典はメソポタミア地方の古代都市バビロン(Babylon)の第6代王だったハンムラビ(Hammurabi, 紀元前1810頃-1750頃)が制定したとされる法律です。完全な形で記録が残っている人類最古の法律の一つです。
ハンムラビは都市国家だったバビロンからチグリス川とユーフラテス川の流域であるメソポタミア地方を再統一してバビロニア帝国を築き上げ、初代の王となった人物です。

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ハンムラビ法典の石碑に彫刻されたハンムラビ(左)
(右は太陽神シャマシュ)
By UnknownLuestling [Public domain], via Wikimedia Commons

ハンムラビがバビロニアを再統一したのは紀元前1757年ごろです。ハンムラビ法典はバビロニア王ハンムラビの所信表明の意味合いが強いと見られていますので、法典は紀元前1757年ごろからハンムラビが死去する紀元前1750年ごろまでに成立したのではないかと言われています。
ハンムラビ法典は後に石柱に楔形文字で記録されて、バビロンのマルドゥク神殿に置かれます。
この石柱は現在パリのルーヴル美術館が所蔵しています。

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ハンムラビ法典が刻まれた石柱
(ルーヴル美術館蔵)
By UnknownMbzt (Own work) [GFDL or CC BY 3.0], via Wikimedia Commons

「目には目を」というこの言葉、「やられたらやりかえせ」という意味にとらえる人も少なくありません。現代人から見るとずいぶん荒っぽく、野蛮な印象を受けます。
しかしこれはそういう意味ではなく、
「報復や刑罰は正確に被害と同等でなければならない。それ以上はダメ」
というように、報復や刑罰の上限を定めたものなのです。
これを「同害復讐法」、ラテン語でレクス・タリオニス(lex talionis)と呼びます。
英語圏でもこのラテン語の用語が使われますが、“mirror punishment(鏡の刑罰)”とも説明されています。
ここでは報復と刑罰を明確に区別していませんが、司法制度が未熟だった昔は被害者による報復が刑罰として機能していました。しかし無限に報復がエスカレートして報復合戦になるのを防ぐ必要から、報復の上限が定められたのです。
半沢直樹のような「倍返しだ!」ではいけないということですね。



そもそもハンムラビ法典では
“Eye for an eye.”
という表現をされていません。
第196条の英語訳と日本語訳を見てみましょう。
“If a man destroy the eye of another man, they shall destroy his eye.”
「人がもし他人の目を傷つけた時には、彼自身の目を傷つけられるべきだ」
そして続く条文で、他人の骨を折った時や歯を折った時についても同様のことが書かれています。
ただしこの原則は自由民同士の場合に限られます。自由民が奴隷を傷つけた時の罪は軽く、奴隷が自由民を傷つけた時や息子が父親を傷つけたの罪は重いと定められています。また金銭で償う場合の金額などについても書かれています。
刑罰に上限を定めている点で、ハンムラビ法典は現代の刑法にも通じる極めて先進的な法律だと言えます。

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Image courtesy of patrisyu, published on 21 October 2015 / FreeDigitalPhotos.net

この言葉、聖書にもいろいろなところにいろいろな形で登場します。
旧約聖書(Old Testament)しゅつエジプト記(Exodus)には次のように書かれています。
“But if there is serious injury, you are to take life for life, eye for eye, tooth for tooth, hand for hand, foot for foot, burn for burn, wound for wound, bruise for bruise.”
「しかし、ほかの害がある時は、命には命を、目には目を、歯には歯を、手には手を、足には足を、焼き傷には焼き傷を、傷には傷を、打ち傷には打ち傷をもって償わなければならない。」
これはモーセ(Moses)が神のお告げで奴隷状態にあったヘブライ人たちを率いてエジプトを脱出し、シナイ山で神から十戒じっかい(Ten Commandments)を授かったという有名な逸話の直後に書かれています。十戒に付随して神が人間に示したおきてであると言ってよいでしょう。

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神から十戒を授かるモーセ
(1900年頃の絵画)
Gebhard Fugel [Public domain], via Wikimedia Commons

“Eye for an eye.”
目には目を。

復讐や刑罰を制限することで怒りや憎しみの連鎖が拡大することを防ごうとしたハンムラビ法典や聖書の教え。
古い時代ながら人類の偉大な英知だと言えましょう。
しかし現在、この言葉が本来の意図を離れて一人歩きしているような気がします。
言論に応じた暴力、テロに報復するための空爆、その空爆に報復するためのテロなどが後を絶ちません。
被害同等どころか、何倍にも何十倍にもして相手を叩く、憎しみの連鎖が暴走してしまっています。
どこかで誰かがこの連鎖を断ち切って、平穏な世界に戻ることを祈ってやみません。

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Image courtesy of stockimages, published on 27 March 2014 / FreeDigitalPhotos.net

それでは今日はこのへんで。
またお会いしましょう! ジム佐伯でした。


【動画】“Eye for an Eye (1996) Official Trailer # 1 - Sally Field (『レイジング・ブレット 復讐の銃弾』(原題:『目には目を(Eye for an eye)』(1996年)公式予告編 #1 - サリー・フィールド主演)”, by Movieclips Trailer Vault, YouTube, 2013/01/28

【関連記事】第359回:“Man shall not live by bread alone.” ―「人はパンのみにて生くるものにあらず」 (聖書), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2016年09月17日
【関連記事】第101回:“Double the Payback!”―「倍返しだ!」(半沢直樹), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2013年10月01日

【参考】Wikipedia(日本語版英語版
【参考】“Hammurabi, The Code of Hammurabi [-2250] (『ハムラビ法典』ハムラビ [紀元前2250年])”, by Robert Francis Harper, Online Library of Liberty
【参考】“Vol.2:ハムラビ法典の内容−復讐と正義− 山口先生:「正義」の源流”, by 山口意友, 玉川大学 教育学研究科 コラム, 2013.10.28
【参考】“目には目を”, by 野村富恵, 聖書, 2000.11.23
【参考】“「目には目を、歯には歯を」の本当の意味”, by 富士山蘊恥庵庵主 (Maukie), 不二草紙 本日のおススメ, 2012.10.10
【参考】“知ってた?「目には目を」の本当の意味・・・【復讐】【名言】”, by 07311008, NAVERまとめ, 2015年12月10日
【参考】“誤用の聖書知識 間違って理解していませんか。”, by 久保有政(レムナント1993年4月号より), Remnant, 聖書

【動画】“Eye for an Eye (1996) Official Trailer # 1 - Sally Field (『レイジング・ブレット 復讐の銃弾』(原題:『目には目を(Eye for an eye)』(1996年)公式予告編 #1 - サリー・フィールド主演)”, by Movieclips Trailer Vault, YouTube, 2013/01/28

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posted by ジム佐伯 at 07:00 | ロンドン | Comment(0) | TrackBack(0) | 法律 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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