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2016年09月17日

第359回:“Man shall not live by bread alone.” ―「人はパンのみにて生くるものにあらず」 (聖書)

こんにちは! ジム佐伯です。
英語の名言・格言やちょっといい言葉、日常会話でよく使う表現などをご紹介しています。

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Image courtesy of Suat Eman, published on 12 December 2008 / FreeDigitalPhotos.net

第359回の今日はこの言葉です。
“Man shall not live by bread alone.”

「人はパンのみにて生くるものにあらず」
という意味です。
これは新約聖書(New Testament)に書かれた言葉です。
(マタイによる福音書(Gospel of Matthew) 4:4)
人は物質的に満たされているだけでは生きられず、精神的にも満たされていなければいけない、という意味です。

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Image courtesy of digidreamgrafix, published on 17 April 2013 / FreeDigitalPhotos.net

新約聖書は、旧約聖書(Old Testament)と同様にキリスト教の正典とされている書物です。
僕は子供の頃、「新訳聖書」と「旧訳聖書」だと思っていました。
しかし正しくは「新しい契約」「古い契約」という意味で「新約」「旧約」と表記されます。
「契約」というとわかりにくいですが、神と人間との間に結ばれた約束のことを示しています。
「神を信じる者は救われる」などといった約束です。
とはいっても堅苦しい契約書ではなく、神やイエス・キリストのさまざまな逸話や神話や歴史、書簡なども書かれています。
旧約聖書にはイエスの生誕以前の話、新約聖書にはイエスの生誕以後の話がおさめられています。
一人の作者が書いた作品ではなく、長い間にわたる様々な言い伝えや教会指導者の記述がまとめられたアンソロジーのような書物です。

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ギリシア語聖書(12世紀の写本)
Codex Harleianus 5557 [Public domain], via Wikimedia Commons

聖書の成立時期には諸説ありますが、旧約聖書が紀元前5世紀ごろから編纂へんさんされて紀元後1世紀(1年〜100年)頃にほぼ現在の形に近いものが固まったと言われます。古代文明の遺物を除けば世界最古の書物とされています。
また新約聖書は紀元50年ごろに最初期の部分が書かれ、紀元150年ごろまでに大部分が完成したとされています。紀元1世紀から2世紀の編纂ということです。
新約聖書が新しくて正しく、旧約聖書は古くさくて間違っているという誤解を避けるため、旧約聖書を「ヘブライ語聖書」、新約聖書を「ギリシア語聖書」と呼ぶこともあります。でもこれはこれで別の誤解を生みそうな気がします。

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ヘブライ語聖書(11世紀の写本)
The Schøyen Collection MS 206, Oslo and London [Public domain], via Wikimedia Commons

かつては手書きによる写本しかなかったため、書籍全般が高価で庶民には手に入らないものでした。
しかし15世紀中ごろにグーテンベルク(Gutenberg)が活版印刷による聖書を出版して以降、一般的に広く読まれるようになります。
今では世界一発行されている本として「ギネス世界記録(Guinness World Records)」にも記録されています。しかし発行部数については50億部から3880億部までさまざまな説があり、正確な数字はわかっていません。

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グーテンベルクの聖書
(アメリカ合衆国議会図書館蔵)
Raul654 [GFDL or CC-BY-SA-3.0], via Wikimedia Commons

「人はパンのみにて生くるものにあらず」
という言葉は新約聖書の巻頭におさめられた「マタイによる福音書」に記されています。
イエスが悪魔サタンの試練を受けた話です。
イエスが荒野に導かれて四十日四十夜断食をして空腹になった時、サタンがイエスに言います。
“If you really are the son of God, then tell these stones to become bread.”
「もしあなたが神の子であるなら、これらの石がパンになるように命じてごらんなさい」
するとイエスが答えたのが次の言葉です。
“It is written, Man shall not live by bread alone, but by every word that proceeds out of the mouth of God.”
“World English Bible”(フリー版の“American Standard Version(アメリカ標準訳聖書)”(1901)より

「『人はパンだけで生きるものではなく、神の口から出る一つ一つの言で生きるものである』と書いてある」
『口語 新約聖書』日本聖書協会(1954年)より
つまり、人が生きるのは物質的なものだけによるのではなく、神の言葉に養われて初めて本当の意味で生きることができるという意味なのです。
サタンはさらに2つの誘いでイエスを試しますが、イエスはきっぱりと拒絶してサタンを退けます。

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サタンが差し出した石を拒絶するイエス(16世紀の絵画)
Juan de Flandes [Public domain], via Wikimedia Commons

この逸話にもあるように、パンは日々の食べ物の象徴となっています。
「アブラハムの宗教(Abrahamic religions)」と呼ばれるユダヤ教、キリスト教、イスラム教の三宗教では儀式ミサにも使われます。
それだけ古くから食べられており、それだけ人々が生きていく上で重要なものだったのです。
なお、欧米の主食はパンと言われますが、アメリカでもここイギリスでも現在はそれほどパンを食べません。メイン料理の付け合わせとして少量食べる程度です。日本料理におけるごはんのように、毎食の料理の構成要素として必須というわけではありません。
でも朝食でのトーストや昼食でのサンドイッチやハンバーガーなどを食べる人は多いですね。
そういう意味では今でも十分主食といってよいでしょう。

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Image courtesy of piyato, published on 17 October 2011 / FreeDigitalPhotos.net

パンが日本に伝わったのは安土桃山時代です。ポルトガルの宣教師によって西洋のパンが日本にもたらされました。日本語の「パン」もポルトガル語の「パン(pão)」から来ています。日本統治時代の影響で、台湾や韓国でも「パン」と呼ばれます。
英語では「ブレッド(bread)」、ドイツ語では「ブロート(Brot)」と言いますが、ラテン語系のフランス語では「パン(pain)」、スペイン語でも「パン(pan)」、イタリア語では「パネ(pane)」と言います。
また、中国語では麵包メンパオと言います。中華まんはパオと呼ばれますので、そこから来ているのでしょうね。
ラテン語系の「パン」は中国語の「パオ」という言葉が西洋に伝わったのだという説もあります。後世にパンが中国に伝わったのは里帰りのようなものだというのです。スケールの大きな話で面白いですね。

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By hirotomo, http://www.flickr.com/photos/travelstar/ , http://blog.travelstar.jp/ (http://www.flickr.com/photos/travelstar/133509337/) [CC BY-SA 2.0], via Wikimedia Commons

“Man shall not live by bread alone.”
人はパンのみにて生くるものにあらず。

いかにもキリスト教の正典らしい言葉です。
しかし物質的な満足だけではなく精神的な充足も必要なのだという点では普遍的に理解できる、素晴らしい言葉だと思います。
物質的にも精神的にも満たされた、豊かな生活を送りたいものですね。

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Image courtesy of Ambro, published on 09 September 2010 / FreeDigitalPhotos.net

それでは今日はこのへんで。
またお会いしましょう! ジム佐伯でした。


【動画】“The Bible: Jesus Meets Satan (聖書:イエスがサタンに会う)”, by ushistorywriter, YouTube, 2013/03/19

【関連記事】第147回:“Christmas is a time of great joy and an occasion for deep reflection.”―「クリスマスはとても楽しいが、同時に深く内省すべき時でもある。」(ベネディクト16世), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2013年12月22日
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【参考】Wikipedia(日本語版英語版
【参考】“誤用の聖書知識 間違って理解していませんか。”, by 久保有政(レムナント1993年4月号より), Remnant, 聖書

【動画】“The Bible: Jesus Meets Satan (聖書:イエスがサタンに会う)”, by ushistorywriter, YouTube, 2013/03/19

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posted by ジム佐伯 at 07:00 | ロンドン | Comment(0) | TrackBack(0) | 宗教 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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