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2015年10月12日

第246回:“For the greatest benefit to mankind.”―「人類への最大の利益のために」(アルフレッド・ノーベル)

こんにちは! ジム佐伯です。
英語の名言・格言やちょっといい言葉をご紹介しています。

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"Nobel Prize" by Photograph: JonathunderMedal: Erik Lindberg (1873-1966) - Derivative of File:NobelPrize.JPG. Via Wikipedia

第246回の今日はこの言葉です。
“For the greatest benefit to mankind.”
「人類への最大の利益のために。」
これはノーベル賞(Nobel Prize)を提唱したスウェーデンの科学者、アルフレッド・ノーベル(Alfred Bernhard Nobel, 1833-1896)の言葉です。

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アルフレッド・ノーベル(Alfred Bernhard Nobel, 1833-1896)
Photo by Unknown [Public domain], via Wikimedia Commons

アルフレッド・ノーベルは1833年にスウェーデンのストックホルムに生まれます。
父親は建築家で発明家でしたが、貧しい家庭でした。
アルフレッドは父親の影響で小さいころから工学や爆発物に興味を示したそうです。
アルフレッドが8歳の時、5年前にロシアに渡っていた父親が合板の事業で成功し、家族をサンクトペテルブルクに呼び寄せます。裕福になった家庭でアルフレッドには家庭教師がつけれられ、アルフレッドは化学と語学を学びます。父親は水中で爆発する機雷(naval mine)という武器の研究開発を始めます。
16歳の時からパリの科学講座で1年間学んだアルフレッドは、アメリカで4年間化学を学び、ロシアで父親の事業を手伝います。
少年時代から文学が好きで、バイロンとシェリーの詩には熱中して自らも詩を書いていたそうです。

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若き日のアルフレッド・ノーベル
Photo by Unknown [Public domain], via Wikimedia Commons

ロシア帝国がフランス帝国・オスマン帝国・イギリスなどの連合軍と戦ったクリミア戦争 (Crimean War, 1853-1856)では、軍需工場を経営していた父親は大儲けします。
しかし戦争が終わると注文が止まっただけでなく、軍がそれまでの支払いも延期したので父親は破産します。
その後父と一緒にスウェーデンに戻ったアルフレッドは、爆発物の研究に集中します。

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クリミア戦争のセヴァストーポリ包囲戦
"Malakhov1". Licensed under Public Domain via Wikimedia Commons.

アルフレッド・ノーベルが特に注目したのはニトログリセリン(nitroglycerin)という液体です。
ニトログリセリンは当時でも強力な爆薬として知られていましたが、加熱や摩擦、輸送中のわずかな振動でも爆発するため扱いが難しく、実用には使われていませんでした。
狙って爆発させるのも難しかったため、ノーベルは起爆装置を発明して特許をとります。ノーベルが30歳の時です。鉄道工事での使用は認められましたが、軍は危険すぎるという理由で採用を見送ります。
その後、研究施設の爆発事故で弟エミールを亡くしたり、特許権を狙われて裁判を起こされたりと、様々な困難がノーベルを襲います。
そして1871年、ノーベルはニトログリセリンを珪藻土にしみこませると安全に扱えることを発見します。ノーベルが38歳の頃です。そして開発した爆薬をダイナマイトと名付け、50ヶ国で特許をとって100近い工場で生産します。ダイナマイトは世界中で採掘や土木工事に使われ、ノーベルは巨万の富を手にします。

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ダイナマイトの構造
A. ニトログリセリンをしみ込ませたオガクズ(その他の材料でも可)
B. 爆発物を包む保護層
C. 雷管
D. 雷管のコード
Wikipediaより)
By Pbroks13 - Own work, CC BY-SA 3.0, Link

ノーベルは生涯独身で、子供がいませんでした。
ノーベルは自分の財産をもとにして、人類の利益に貢献した人物を毎年たたえる賞を設立しようと考え、そのことを遺言状に記録します。
ノーベルの死後、親族などへの遺産相続や税金をのぞいた財産の94%で財団が設立され、利子などの運用益が賞の運営と賞金にあてられます。ノーベル財団とノーベル賞です。

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ノーベルの遺言状(1895年)
"Alfred Nobels will-November 25th, 1895" by Photograph: Prolineserver (talk)Document: Alfred Nobel - Alfred Nobel. Licensed under Public Domain via Commons.

ノーベル賞はノーベルの遺言により、
“For the greatest benefit to mankind,”
「人類への最大の利益のために、」
という観点でその年もっとも貢献した人物たちに贈られます。
遺言には細かい規定がなかったので解釈が難しかったそうですが、物理学賞(Nobel Prize in Physics)、化学賞(Nobel Prize in Chemistry)、生理学・医学賞(Nobel Prize in Physiology or Medicine)の自然科学3分野の賞と、文学賞(Nobel Prize in Literature)、そして平和賞(Nobel Peace Prize)が定められます。
選考するのは物理学賞と化学賞がスウェーデン王立科学アカデミー、医学・生理学賞が世界最大の医科大学であるカロリンスカ研究所、文学賞がスウェーデン・アカデミー、平和賞がお隣りノルウェーのノルウェー・ノーベル委員会です。

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スウェーデン王立科学アカデミー(Royal Swedish Academy of Sciences)
"KVA". Licensed under CC BY-SA 2.5 via Commons.

1901年に贈られた記念すべき第1回ノーベル賞では、物理学賞はX線を発見したドイツのヴィルヘルム・レントゲン(Wilhelm Conrad Röntgen, 1845-1923)、化学賞は熱力学で『ファントホッフの式』を発見したオランダのヤコブス・ファント・ホッフ(Jacobus Henricus van 't Hoff, 1852-1911)、医学・生理学賞はジフテリアの血清療法を研究したドイツのエミール・フォン・ベーリング(Emil Adolf von Behring, 1854-1917)、文学賞はフランスの詩人シュリ・プリュドム(Sully Prudhomme, 1839-1907)、平和賞は赤十字社を設立したスイスのアンリ・デュナン(Jean Henri Dunant, 1828-1910)と国際仲裁委員会を提唱したフレデリック・パシー(Frédéric Passy, 1822-1912)がそれぞれ受賞します。

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第1回ノーベル物理学賞を受賞したヴィルヘルム・レントゲン(Wilhelm Conrad Röntgen, 1845-1923)
By George Grantham Bain Collection (Library of Congress) [Public domain], via Wikimedia Commons

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第1回ノーベル平和賞を受賞したアンリ・デュナン(Jean Henri Dunant, 1828-1910)
Photo by Unknown [Public domain], via Wikimedia Commons

その後、第二次世界大戦による中断などもありましたが、素晴らしい功績を遺した人や団体にノーベル賞が毎年贈られています。
また、1968年からは経済学賞(Nobel Memorial Prize in Economic Sciences)が新設され、スウェーデン王立科学アカデミーが選考しています。
1901年から2014年までに567のノーベル賞が授与されました。
当ブログでご紹介してきた人物にも、ノーベル賞の受賞者がたくさんいます。
・文学賞(1907年):ラドヤード・キプリング(Joseph Rudyard Kipling, 1865-1936)
・文学賞(1925年):バーナード・ショー(George Bernard Shaw, 1856-1950)
・文学賞(1968年):川端康成(Yasunari Kawabata, 1899-1972)
・平和賞(1979年):マザー・テレサ(Mother Teresa, 1910-1997)
・平和賞(1993年):ネルソン・マンデラ(Nelson Mandela, 1918-2013)
・平和賞(2014年):マララ・ユサフザイ(Malala Yousafzai, 1997-)

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マララ・ユサフザイ(Malala Yousafzai, 1997-)
By Russell Watkins/Department for International Development. (https://www.flickr.com/photos/dfid/14714344864/) [OGL or CC BY 2.0], via Wikimedia Commons

そして今年2015年のノーベル生理学・医学賞は、線虫の寄生によって引き起こされる感染症に対する新たな治療法に関する発見をした日本の大村智(Satoshi Ōmura, 1935-)さんとアイルランド出身のウィリアム・C・キャンベル(William Cecil Campbell, 1930-)、そしてマラリアに対する新たな治療法に関する発見をした中国の屠 呦呦(Tú Yōuyōu, 1930-)がトリプル受賞しました。
大村さんは受賞時のインタビューで、
“I humbly accept it.”
「謹んでお受けします。」
と語りました。


ノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智(Satoshi Ōmura, 1935-)
大村智 - 2億人を病魔から守った化学者


【音声】“Satoshi Ōmura - Interview(大村智さんのインタビュー)”, Interviewed by Adam Smith, The Nobel Prize in Physiology or Medicine, 5 October 2015

またノーベル物理学賞は、ニュートリノ(neutrino)という素粒子が質量を持つことを示すニュートリノ振動を発見した日本の梶田隆章(Takaaki Kajita, 1959-)さんとカナダのアーサー・B・マクドナルド(Arthur Bruce McDonald, 1943-)がダブル受賞しました。
梶田さんは受賞直後のインタビューで、今の気持ちをたずねられ、
“Still kind of unbelievable.”
「まだ信じられません。」
と答えました。

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ノーベル物理学賞を受賞した梶田隆章(Takaaki Kajita, 1959-)
ノーベル賞公式ウェブサイトより)


【音声】“Takaaki Kajita - Interview(梶田隆章さんのインタビュー)”, Interviewed by Adam Smith, The Nobel Prize in Physics 2015, 6 October 2015

ノーベル化学賞は、生物細胞の中にあるリボソーム(Ribosome, 英語で「ライボソーム」と発音)の構造と機能を研究したインド出身のヴェンカトラマン・ラマクリシュナン(Venkatraman "Venki" Ramakrishnan, 1952-)とアメリカのトーマス・アーサー・スタイツ(Thomas Arthur Steitz, 1940-)、イスラエルのアダ・ヨナス (Ada Yonath, 1939-)がトリプル受賞しました。
ノーベル文学賞はベラルーシの女性作家スヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチ(Svetlana Alexievich, 1948-)が受賞。受賞を期待されていた日本の村上春樹は今回も残念でしたね。
ノーベル平和賞はチュニジアのジャスミン革命(Jasmine Revolution, 2010-2011)の後に平和的に政権移行を行った4つの団体からなるチュニジア国民対話カルテット (Tunisian National Dialogue Quartet)が受賞しました。このように、ノーベル平和賞は団体が受賞することもあります。
ノーベル経済学賞は、10月12日の午後1時(日本時間午後8時)に発表されます。

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ノーベル文学賞を受賞したスヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチ(Svetlana Alexievich, 1948-)
By original author: Elke Wetzig; cropped by: Rlevente [CC BY-SA 4.0], via Wikimedia Commons

“For the greatest benefit to mankind.”
人類への最大の利益のために。

ダイナマイト王と呼ばれ、死の商人と呼ばれたノーベル。
文学を愛し、平和を願ったノーベル。
ノーベル賞に文学賞と平和賞があるところが僕は大好きです。
歴史を通してノーベル平和賞に最もふさわしい人物は、提唱者であるノーベル自身かもしれませんね。

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By Tomas er (Own work) [CC BY-SA 3.0 or GFDL], via Wikimedia Commons

それでは今日はこのへんで。
またお会いしましょう! ジム佐伯でした。

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【参考】Wikipedia(日本語版英語版
【参考】“Nobelprize.org(ノーベル賞公式ウェブサイト)”
【参考】“2015-10-11 ノーベル財団めちゃすごい”, by ちきりんさん, ちきりんの日記, 2015-10-11

【音声】“Satoshi Ōmura - Interview(大村智さんのインタビュー)”, Interviewed by Adam Smith, The Nobel Prize in Physiology or Medicine, 5 October 2015
【音声】“Takaaki Kajita - Interview(梶田隆章さんのインタビュー)”, Interviewed by Adam Smith, The Nobel Prize in Physics 2015, 6 October 2015

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posted by ジム佐伯 at 07:00 | Comment(2) | TrackBack(0) | 科学者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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この記事へのコメント
ただの受験生さん、ジム佐伯です。コメントありがとうございます。
ブログをご覧になって頂きありがとうございます。
人生の教訓とならないような言葉も交じってますが(笑)、どうぞよろしくお願いします。
受験、大変だと思いますが、楽しみながら頑張って下さいね。
日々の頑張りはきっとあなたの将来に大きく生きていくと思いますよ。
そんなあなたの勉強や息抜きに少しでもお役に立てたら嬉しいです。
受験で嬉しい結果が出ることを、そしてその後ますますご活躍されることを、遠い空からお祈りしています。
コメントとても励みになります。これからもよろしくお願いします!!
Posted by ジム佐伯 at 2015年10月12日 14:37
毎日1日のはじめに楽しく拝見させてもらってます
人生の教訓となる言葉に出会えるこのサイトには感謝してます^_^
Posted by ただの受験生 at 2015年10月12日 10:26
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