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2015年10月04日

第243回:“Can you hear me now?”―「聞こえてる?」(エドワード・スノーデン)

こんにちは! ジム佐伯です。
英語の名言・格言やちょっといい言葉をご紹介しています。

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By Freedom of the Press Foundation [CC BY 4.0], via Wikimedia Commons

第243回の今日はこの言葉です。
“Can you hear me now?”
「私のことが聞こえますか?」
という意味です。軽くたずねている感じですので、
「聞こえてる?」
といったところでしょうか。
これはアメリカの情報機関CIA(中央情報局, Central Intelligence Agency)の元局員でNSA(国家安全保障局, National Security Agency)の契約職員だったエドワード・スノーデン(Edward Joseph Snowden, 1983-)容疑者の言葉です。
この言葉はスノーデンがつい先日開設したツイッターのアカウント“@Snowden”で本人が最初につぶやいた言葉です。

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エドワード・スノーデン(Edward Joseph Snowden, 1983-)
Laura Poitras / Praxis Films [CC BY 3.0], via Wikimedia Commons

スノーデンは2013年6月上旬に香港でNSAの機密文書を大量に公開し、NSAによる大規模な通信傍受を暴露しました。NSAが電話やメール、ネット使用履歴など世界中のあらゆる通信を、個人や組織、政府機関を問わずに傍受、解析しているというのです。そのこと自体は誰もが予想でき、驚くべきことではありませんが、実際にNSAの仕事をしていた本人からの機密情報の暴露ということで、世界に衝撃が走りました。当ブログでもご紹介しましたね。
その後スノーデンはどうなったのでしょうか。

【関連記事】第59回:“Truth is coming, and it cannot be stopped.”―「事実は明るみに出た。もう止められない」(エドワード・スノーデン), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2013年07月20日

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ガーディアン紙(The Guardian)の記事
【参考】“Edward Snowden: the whistleblower behind the NSA surveillance revelations”, Glenn Greenwald, Ewen MacAskill and Laura Poitras in Hong Kong, The Guardian, Monday 10 June 2013

6月21日、アメリカ司法当局はスノーデンに逮捕命令を出します。2日後の23日、スノーデンは香港からロシアに渡航します。
アメリカ政府はスノーデンのパスポートを無効にする手続きを取りますが、香港政府は手続きに不備があるとしてスノーデンのモスクワ行きを止めませんでした。
スノーデンはロシアのシェレメーチエヴォ国際空港(Sheremetyevo International Airport)に到着し、国際線の乗り換え区画(transit zone)に滞在しながら第三国への亡命をはかります。

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スノーデン到着時にシェレメーチエヴォ国際空港に押しかけた報道陣と野次馬
By Dmitry Rozhkov (Own work) [CC BY-SA 3.0], via Wikimedia Commons

ちょうどロシアを訪問していたボリビアのエボ・モラレス大統領(Juan Evo Morales Aima, 1959-)は、亡命受け入れを示唆する発言をします。そのせいか7月1日にモラレス大統領が帰国する際、航路上にあるフランス、イタリア、スペインの三国が大統領の乗った飛行機の領空通過を拒否します。同機はしかたなく給油のためオーストリアのウィーンに着陸します。

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ボリビア大統領搭乗機の領空通過を拒否したフランス、イタリア、スペイン(赤)と、緊急着陸したオーストリア(黄)
By HectorMoffet (Own work) [CC BY-SA 3.0], via Wikimedia Commons

領空通過の拒否は「技術的問題」と説明されます。しかし明らかにスノーデンの同乗を疑ったアメリカの要請によるものです。大統領機が強制着陸させられたようなものですから、モラレス大統領は国際法違反だと抗議します。スノーデンの亡命を阻止するためには外交問題になることも辞さないというアメリカの強い意志がうかがえます。
結局スノーデンはモスクワの空港を出ておらず、13時間後に大統領搭乗機は帰国の途につきます。

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ボリビアのエボ・モラレス大統領(Juan Evo Morales Aima, 1959-)
By Roberto Stuckert Filho/PR [CC BY-SA 2.0], via Wikimedia Commons

この事件を知ったスノーデンは、ロシアからの出国が困難であることを痛感します。
7月12日にスノーデンは空港内で会見を開き、ロシアへの亡命希望を表明します。
8月1日、ロシア連邦政府はスノーデンに1年間の期限付きで亡命を許可します。スノーデンは5週間以上滞在していた空港を離れます。
現在スノーデンがどこで何をしているかは明らかにされていません。
しかし時々ネットを通してイベントにテレビ会議で登場したり、新聞、雑誌やWebメディアの取材を受けたりしています。彼の弁護士によるとロシア国内を旅行をしたりもしているそうです。
翌2014年7月、滞在許可は3年間に延長されます。

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ネット中継でイベントに参加するスノーデン
By Gage Skidmore [CC BY-SA 2.0], via Wikimedia Commons

ネット上の意見は比較的スノーデンへ好意的、同情的なものが多いです。中には彼をヒーロー視したり、監視社会への抗議の象徴として持ち上げようする動きもあります。
政府や企業や宗教などに関する機密情報を匿名で公開するウェブサイト「ウィキリークス(WikiLeaks)」を設立し、自らも2012年からロンドンのエクアドル大使館に逃亡しているジュリアン・アサンジ(Julian Paul Assange, 1971-)も、スノーデンへの支持と支援を表明しています。

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ジュリアン・アサンジ(Julian Paul Assange, 1971-)
By David G Silvers. [CC BY-SA 2.0], via Wikimedia Commons

2014年1月、スノーデンはこの年のノーベル平和賞の候補に推薦されます。ノルウェーの左派社会党議員が推薦したものです。「現代の監視活動の性質や技術力を明らかにした」というのが推薦の理由です。結局この年のノーベル平和賞は、パキスタン人の少女マララ・ユサフザイ(Malala Yousafzai, 1997-)らが受賞します。

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マララ・ユサフザイ(Malala Yousafzai, 1997-)
By Russell Watkins/Department for International Development. (https://www.flickr.com/photos/dfid/14714344864/) [OGL or CC BY 2.0], via Wikimedia Commons

同2月、スノーデンはイギリス北部のスコットランドにあるグラスゴー大学(The University of Glasgow)の名誉学長に選出されます。500年以上の歴史を誇る名門大学です。名誉学長は学生の投票で選ばれ、任期は3年。大学当局の会議に学生代表として出席できるそうです。

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グラスゴー大学の建物
0404343m at the English language Wikipedia [GFDL, CC-BY-SA-3.0], via Wikimedia Commons

今や世界各地でポスターやTシャツ、冷蔵庫用のマグネットや街角のアート、ラップの歌詞などにスノーデンが登場しています。
2015年4月にはニューヨーク・ブルックリンの公園にアーティスト集団がスノーデンの胸像を設置し、即日撤去されます。
またイタリアの芸術家がスノーデンの全身像を設置します。こちらはウィキリークス創始者のジュリアン・アサンジとウィキリークスに機密文書を提供した米陸軍兵チェルシー・マニングの銅像と3人並べた力作です。5月にベルリンのアレクサンダー・プラッツに置かれ、9月にはスイス・ジュネーブの国連欧州本部前に置かれます。

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ベルリンのアレクサンダー・プラッツに置かれたスノーデンの銅像
(向かって右にアサンジとマニングの像が並ぶ)
By Davide Dormino, cropped by Jim Saeki on 3 October 2015 [CC BY-SA 4.0], via Wikimedia Commons

スノーデンの事件は映画にもなります。
ドキュメンタリー作家のローラ・ポイトラス(Laura Poitras, 1964-)が監督したドキュメンタリー映画『シチズンフォー(Citizenfour)』 (2014年アメリカ・ドイツ)です。
このローラ・ポイトラスという女性、ジャーナリストのグレン・グリーンウォルド(Glenn Edward Greenwald, 1967-)とともに、スノーデンが香港で情報を暴露した直接の相手の一人です。
タイトルの“Citizen Four”とは、スノーデンがポイトラスに接触をはかった最初の電子メールでスノーデンが名乗った名です。
この映画は2014年度のアカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞を受賞しました。


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【動画】“Citizenfour Official Trailer 1 (2014) - Edward Snowden Documentary HD(『シチズンフォー』公式予告編1(2014) - エドワード・スノーデン実録 [高画質])”, by Movieclips Film Festivals & Indie Films, YouTube, 2014/10/10

また、社会派映画の大御所オリバー・ストーン(William Oliver Stone, 1946-)もスノーデンを題材にした映画を製作中です。
その名もズバリ、『スノーデン(Snowden)』
製作が遅れており年内の公開が延期になったと伝えられていますが、どんな映画になるか今から楽しみです。


【動画】“『スノーデン』 - 公式予告編 #1 (2016年公開)ジョゼフ・ゴードン=レヴィット主演の伝記スリラー映画”, by CBR Trailers, YouTube, 2015/06/30

そして2015年9月29日、エドワード・スノーデンはツイッターのアカウント“@Snowden”を開設します。プロフィール欄にスノーデンは、
“I used to work for the government. Now I work for the public.”
「かつては政府のために働いていました。今は市民のために働いています。」
と書いています。そして最初に彼は、
“Can you hear me now?”
「聞こえてる?」
とツイートしました。


“Can you hear me now?”
聞こえてる?

今のところロシアから外に出る見通しが立っていないスノーデン。
ついにツイッターで情報発信を始めたスノーデン。
スノーデンのアカウントは、開設後わずか1時間で17万以上がフォローしました。
開設4日後の10月3日現在、フォロワーは130万人を超えました。
彼の声は世界中に届いたのです。とどろきわたったと言ってもいいでしょう。
今後の彼の情報発信が注目されます。

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【参考】“Can you hear me now?(聞こえてる?)”, by Edward Snowden, @Snowden, twitter, 2015年9月29日

それでは今日はこのへんで。
またお会いしましょう! ジム佐伯でした。

【関連記事】第59回:“Truth is coming, and it cannot be stopped.”―「事実は明るみに出た。もう止められない」(エドワード・スノーデン), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2013年07月21日
【関連記事】第60回:“You have to start with the truth.”―「まず事実から始めなければならない」(ジュリアン・アサンジ), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2013年07月21日

【参考】Wikipedia(日本語版英語版
【参考】“あのエドワード・スノーデンが「@Snowden」のTwitterアカウントを開設”, by Cat Zakrzewski, TechCrunch Japan, 2015年9月30日
【参考】“Edward Snowden: the whistleblower behind the NSA surveillance revelations”, Glenn Greenwald, Ewen MacAskill and Laura Poitras in Hong Kong, The Guardian, Monday 10 June 2013
【参考】“エボ・モラレス搭乗機、ウィーンに緊急着陸(7月2日)”, by ウラさん, ラテンアメリカの政治経済, 2013-07-04
【参考】“米監視活動暴露のスノーデン容疑者、ノーベル平和賞候補に”, AFP BB NEWS, 2014年01月30日
【参考】“NYの公園に「スノーデン像」、アーティスト集団が設置”, by, AFP BB NEWS, 2015年04月07日
【参考】“国連欧州本部前にスノーデン氏ら内部告発者の像、伊芸術家が制作”, REUTERS, 2015年09月15日
【参考】“アカデミー受賞の「スノーデン映画」、さらに2作が制作中”, Text by Megan Geuss,
Translation by Minori Yagura, Hiroko Gohara/Galileo, ARS TECHNICA (US), WIRED, 2015.2.24
【参考】“「アカデミー賞を受賞したスノーデンだけど何か質問ある?」と本人が降臨して読者からの質問に答えまくり”, GIGAZINE, 2015年02月25日
【参考】“オリバー・ストーン監督作品「スノーデン」予告編が公開”, by そうこ, ギズモード・ジャパン, 2015/07/01(by Matt Novak, gizmodo, 6/30/15)
【参考】“Can you hear me now?(聞こえてる?)”, by Edward Snowden, @Snowden, twitter, 2015年9月29日

【動画】“Citizenfour Official Trailer 1 (2014) - Edward Snowden Documentary HD(『シチズンフォー』公式予告編1(2014) - エドワード・スノーデン実録 [高画質])”, by Movieclips Film Festivals & Indie Films, YouTube, 2014/10/10
【動画】“『スノーデン』 - 公式予告編 #1 (2016年公開)ジョゼフ・ゴードン=レヴィット主演の伝記スリラー映画”, by CBR Trailers, YouTube, 2015/06/30



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posted by ジム佐伯 at 07:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 情報社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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