スポンサーリンク / Sponsored Link


2014年03月11日

第195回:“Do be do be do.”−「ドゥビ・ドゥビ・ドゥー」(フランク・シナトラ)

こんにちは! ジム佐伯です。
英語の名言・格言やちょっといい言葉、日常会話でよく使う表現などをご紹介しています。

0195-frank_sinatra_pal_joey_1957.jpg
映画『夜の豹(Pal Joey)』(1957年)より
By Columbia Pictures Corporation, 1957 [Public domain], via Wikimedia Commons

第195回の今日はこの言葉です。
“Do be do be do.”
何でしょう、これ。深い意味がありそうですね。いったいどういう意味でしょう。
「行動して、存在せよ」でしょうか。「生きて、すべきことをせよ」でしょうか。
いえいえ。意味などありません。
「ドゥビ・ドゥビ・ドゥー」
という、単なる歌声です。格言でも、ちょっといい言葉でもありません。
これはアメリカの歌手フランク・シナトラ(Francis Albert "Frank" Sinatra, 1915-1998)の言葉です。
前回シェイクスピアの悲劇『ハムレット(Hamlet)』の名セリフ、
“To be, or not to be, ― that is the question.”
「生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ」
をご紹介しましたが、僕はまっさきにこのシナトラの歌声を思い出しました。

0195-frank_sinatra_laughing_1960.jpg
フランク・シナトラ(Francis Albert "Frank" Sinatra, 1915-1998)
By Unknown, 12 March 1960 [Public domain], via Wikimedia Commons

フランク・シナトラは1915年にニューヨークにほど近いニュージャージー州のホーボーケン(Hoboken)に生まれます。両親はイタリア系アメリカ人で、父親はボクサーでした。フランクは当時ラジオで人気だったビング・クロスビー(Bing Crosby, 1903-1977)の歌声にあこがれて歌手をこころざし、楽譜を読むことができないためすべて耳から音楽を学びます。8歳の頃から地元のナイトクラブで歌うようになり、最初はチップ稼ぎ程度でしたが10代のうちに歌で収入を得られるようになります。
1939年にバーのラウンジで歌っていたのを見いだされてプロデビュー。24歳の頃です。シナトラは10代の女性を中心に大人気となります。世界で最初にマイクロフォンをマイクスタンドから取り外して歌ったのもシナトラだと言われています。

0195-frank_sinatra_by_gottlieb_c1947.jpg
William P. Gottlieb, c. 1947 [Public domain], via Wikimedia Commons

第二次大戦時には、シナトラは出生時に鼓膜が破れていたため兵役不合格となり、アメリカ軍ラジオサービスAFRS(American Forces Radio Service)の慰問部隊の歌手として軍務につきます。若者たちのほとんどが戦場へ行ったこの時代、ラジオから流れるシナトラの若々しい歌声は若い女性の心をとらえ、アイドル的な人気となります。
シナトラはMGM映画で製作した数多くのミュージカル映画にも出演し、後にスタンダード・ナンバーとして記憶される曲を多く歌います。

0195-frank_sinatra_in_till_the_clouds_roll_by.jpg
映画『雲流るるはてに(Till The Clouds Roll By)』(1946年)より
By Trailer screenshot (Till The Clouds Roll By trailer), 1946 [Public domain], via Wikiquote

一時期人気が低迷し、喉の病気で声が出なくなるなどのトラブルもあってスランプにおちいりますが、フレッド・ジンネマン(Fred Zinnemann, 1907-1997)が監督した文芸映画『地上ここより永遠とわに(From Here to Eternity)』(1953年アメリカ)で脇役として出演した演技が高い評価を受け、アカデミー賞助演男優賞を獲得し、再び人気が高まります。
歌手としての経験を積み円熟の度を重ねたシナトラは、1950年代後半にジャズ的センスに富んだ質の高いアルバムを多く送り出します。またこの頃エルヴィス・プレスリー(Elvis Presley, 1935-1977)などの出現でロックンロールの人気が高まりますが、シナトラはロックンロールに見向きもせず、大人になったかつてのファンのために音楽指向を変えずに音楽の質を高めることによって高い人気を維持します。

0195-on_the_town.jpg
映画『踊る大紐育ニューヨーク(On the Town)』(1949年)より
左からシナトラ、ジュールス・マンシン(Jules Munshin)、ジーン・ケリー(Gene Kelly)
By Trailer screenshot (On the Town trailer), 1949 [Public domain], via Wikimedia Commons


【動画】“On The Town trailer(『踊る大紐育』予告編)”, by Paul Waters, YouTube, 2011/06/10

その後シナトラは民主党の若手上院議員だったジョン・F・ケネディ(John Fitzgerald Kennedy, 1917-1963)と親しくなり、選挙資金調達パーティーに出演したり女優のマリリン・モンロー(Marilyn Monroe, 1926-1962)をケネディに紹介したりします。しかし、当時タブーとされていたシナトラとイタリアン・マフィアとの深い関係がマスコミや国民に悪い印象を与えることを恐れた側近の忠告をうけ、ケネディはシナトラから距離を置きます。シナトラは激怒し、二人の関係は決裂します。1963年にケネディ大統領が暗殺された時、シナトラとイタリアン・マフィアが暗殺に関与したのではないかと疑われたこともあります。

0195-grace_kelly_and_frank_sinatra.jpg
グレース・ケリー(Grace Patricia Kelly, 1929-1982)と共演するシナトラ
映画『上流社会(High Society)』(1956年)より
By Trailer screenshot (w:en:High Society trailer), 1956 [Public domain], via Wikimedia Commons

そして1966年に発売した『夜のストレンジャー(Strangers in the Night)』はビルボードのホット100( Billboard Hot 100)や全英シングルチャートの1位となり、1967年グラミー賞(Grammy Awards)の3部門を受賞し、シナトラ健在を世界中に示します。同名のアルバムはもっとも売れたシナトラのアルバムになります。
この『夜のストレンジャー(Strangers in the Night)』のエンディングで曲がフェードアウトするところでシナトラがメロディーにあわせて即興的に歌ったスキャットが、
“Do be do be do.”
「ドゥビ・ドゥビ・ドゥー」
です。
“Doo-be-doo-be-doo.”
とも表記されます。
皮肉にもこの部分がこの曲の最も有名なパートになってしまいます。2008年に出されたコンピレーション・アルバム『シナトラ、ザ・ベスト!(Nothing but the Best)』ではエンディングのこの部分をフェードアウトせずに聞かせる10秒長い録音が使われています。

シナトラ、ザ・ベスト!
シナトラ、ザ・ベスト!, フランク・シナトラ [CD]


【動画】“Frank Sinatra - Strangers in the Night(フランク・シナトラ - 『夜のストレンジャー』)”, by Musica Mais Bonita do Mundo, YouTube, 2012/05/14

リュック・ベッソン(Luc Besson, 1959-)が若い頃に監督した映画『サブウェイ(Subway)』(1985年フランス)の冒頭に、実はこの言葉が出てくるのです。冒頭に示される字幕は以下のとおりです。

“To be is to do - Socrates
 To do is to be - Sartre
 Do Be Do Be Do - Sinatra”


「存在は行動なり。     ―ソクラテス
 行動は存在である。    ―サルトル
 ドゥビ・ドゥビ・ドゥー。 ―シナトラ」

いわゆる三段オチというやつですね。ホップ・ステップ・ジャンプのジャンプで飛ばずにズコッと落ちるパターンです。
古代ギリシアの哲学者ソクラテス(Socrates, 469 BC 頃 - 399 BC)と20世紀のフランスの哲学者ジャン=ポール・サルトル(Jean-Paul Charles Aymard Sartre, 1905-1980)がいかにも言いそうな言葉ですが、本当にこう言ったかどうかはわかりません。
しかしシナトラの「ドゥビ・ドゥビ・ドゥー」は確実にシナトラの言葉、いや歌声で、レコードにも収録されています。
「いろいろ難しく悩んで生きなくても、『ドゥビ・ドゥビ・ドゥー』と鼻歌でも歌いながら楽しく生きようよ」
というような気持ちがこめられているのかもしれません。
僕はとても共感できます。映画も万人受けはしませんがなかなか不思議な雰囲気の映画です。興味のある方はご覧になってみて下さい。

サブウェイ ―デジタル・レストア・バージョン― [DVD]
サブウェイ ―デジタル・レストア・バージョン― [DVD]


【動画】“Subway - Bande annonce(『サブウェイ』予告編)”, by Gaumont, YouTube, 2013/07/22

映画にはこの三段オチの引用自体は誰の言葉か書いていませんが、これはアメリカの作家カート・ヴォネガット(Kurt Vonnegut, 1922-2007)の言葉とされています。
『デッドアイ・ディック(Deadeye Dick)』(1982年)という小説で、公衆トイレの壁のタイルに書かれている落書きとして登場します。
なかなか含蓄のある落書きですね。
そしてそれを引用した映画『サブウェイ』もなかなか含蓄のある映画です。
このネタは同様の落書きがアメリカのカリフォルニア大学バークレー校のトイレの壁にあるだとか、ソクラテスじゃなくてカントだとか、ルソーだとか、いろいろバリエーションがあります。なんだか都市伝説の様相を呈しています。しかし、前半の哲学問答は単なる前フリで、誰が本当に言ったかはあまり関係ありません。どれもオチの「ドゥビ・ドゥビ・ドゥー」を生かすための前フリとして「行動」だの「存在」だのを小難しく言っているだけなのです。


デッドアイ・ディック (ハヤカワ文庫SF), カート ヴォネガット (著), 浅倉 久志 (翻訳)

“Do be do be do.”
ドゥビ・ドゥビ・ドゥー。

歌に生き、映画に生きたフランク・シナトラ。
1969年に発売された『マイ・ウェイ(My Way)』は、全英シングル・チャート75位以内に124週にわたって留まるというとてつもない大ロングヒットとなります。これも誰もが知っているいい歌ですよね。
1985年にはその長年の活動が認められ、ロナルド・レーガン大統領(Ronald Reagan, 1911-2004)から大統領自由勲章(Presidential Medal of Freedom)を授与されます。
1998年にシナトラはビバリーヒルズの自宅で心臓発作を起こして倒れ、病院へ運ばれてそのまま永眠します。82歳でした。

0195-sinatra_reagan.jpg
ロナルド・レーガン夫妻と談笑するシナトラ
Photo by Unknown, 3 June 1981 [Public domain], via Wikimedia Commons

それでは今日はこのへんで。
またお会いしましょう! ジム佐伯でした。


【動画】“Frank Sinatra My Way Live in London 1971)(フランク・シナトラ - 『マイ・ウェイ』1971年ロンドン・ライブにて)”, by Bluegrilla, 2015/01/02

【関連記事】第131回:“Ask what you can do for your country.”―「君たちが国のために何ができるのかを問うて欲しい」(ケネディ大統領), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2013年11月24日
【関連記事】第172回:“Five drops of Chanel No. 5.”―「シャネルの5番を5滴よ」(マリリン・モンロー), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2014年02月02日
【関連記事】第190回:“Everyone talks about rock these days; the problem is they forget about the roll.”−「ロックロックって、ロールはどうしちまったんだよ?」(キース・リチャーズ), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2014年03月02日
【関連記事】第180回:“Let it snow ! Let it snow ! Let it snow !”―「雪よ降れ!雪よ降れ!雪よ降れ!」(ヴォーン・モンロー), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2014年02月14日
【関連記事】第2回:“April showers bring May flowers.”―「四月の雨が五月の花をもたらす」(ことわざ), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2013年04月24日

【参考】Wikipedia(日本語版英語版

【動画】“On The Town trailer(『踊る大紐育』予告編)”, by Paul Waters, YouTube, 2011/06/10
【動画】“Frank Sinatra - Strangers in the Night(フランク・シナトラ - 『夜のストレンジャー』)”, by Musica Mais Bonita do Mundo, YouTube, 2012/05/14
【動画】“Subway - Bande annonce(『サブウェイ』予告編)”, by Gaumont, YouTube, 2013/07/22
【動画】“Frank Sinatra My Way Live in London 1971)(フランク・シナトラ - 『マイ・ウェイ』1971年ロンドン・ライブにて)”, by Bluegrilla, 2015/01/02

このエントリーをはてなブックマークに追加
posted by ジム佐伯 at 12:00 | Comment(0) | 音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

スポンサーリンク / Sponsored Link

ブログパーツ