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2014年03月09日

第194回:“To be, or not to be, ― that is the question.”−「生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ」(ハムレット)

こんにちは! ジム佐伯です。
英語の名言・格言やちょっといい言葉、日常会話でよく使う表現などをご紹介しています。

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Pedro Américo, 1893 [Public domain], via Wikimedia Commons

第194回の今日はこの言葉です。
“To be, or not to be, ― that is the question.”
「生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ」
という意味です。
イングランドの劇作家ウィリアム・シェイクスピア(William Shakespeare, 1564-1616)の4大悲劇の一つ『ハムレット(Hamlet)』(1600-1602年頃)に出てくる言葉です。
昨日ご紹介した『ロミオとジュリエット(Romeo and Juliet)』に出てくる
“O Romeo, Romeo! wherefore art thou Romeo?”
「おおロミオ、ロミオ!あなたはどうしてロミオなの?」
というセリフと共に、誰もが知っているシェイクスピア作品の超有名なセリフです。
どちらも後世のさまざまな演劇や映画にパロディ的に引用されるセリフでもあります。

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ウィリアム・シェイクスピア(William Shakespeare, 1564-1616)
By louis leonard, National Portrait Gallery London. Photo by Unknown, [Public domain], via Wikimedia Commons

シェイクスピアの作品は、洋の東西を問わず世界全体の古今の文学作品の中でも最も優れた作品として評価されています。『ハムレット』はその中で最も長く、シェイクスピアの代表作の一つとされる作品です。
この作品はシェイクスピアのほかの作品と同様に、彼のオリジナル作品ではありません。『ハムレット』は北欧伝説にもとづいた作品です。中世デンマークの歴史家サクソ・グラマティクス(Saxo Grammaticus, 1150-1220)が編纂した歴史書『デンマーク人の事績(Deeds of the Danes, ラテン語原題:Gesta Danorum)』には「アムレート(Amleth)」というデンマークの王子が登場して活躍しますが、『ハムレット』はこの物語をもとにしています。タイトルの『ハムレット(Hamlet)』も「アムレート(Amleth)」の文字を並べ換えたアナグラム(anagram)となっています。

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アメリカの俳優エドウィン・ブース(Edwin Booth, 1833-1893)が演じるハムレット(1870年頃撮影)
By J. Gurney & Son, N.Y. (19th century photograph), circa 1870 [Public domain], via Wikimedia Commons

舞台は中世のデンマーク。主人公のハムレット(Hamlet)はデンマークの王子です。ハムレットの父であるデンマーク王が急死し、ハムレットの母である王妃ガートルード(Gertrude)は王の弟でハムレットの叔父にあたるクローディアス(Claudius)と再婚、クローディアスは新たなデンマーク王の座につきます。
正当な王位継承者だったハムレットは衝撃をうけます。母であるガートルードが父の死後2ヶ月もしないうちに父とは似ても似つかぬ下品な男であるクローディアスと再婚したからです。

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ノルウェーの俳優インゴルフ・シャンケ(Ingolf Findregaard Schanche, 1877-1954)が演じるハムレット(1920年)
Anders Beer Wilse, 18 April 1920 [Public domain], via Wikimedia Commons

ハムレットは母親を次のように表現します。とても有名なセリフです。

“Frailty, thy name is woman.”

“thy”(サイ)は“your”の古語です。あの坪内逍遥(Shoyo Tsubouchi, 1859-1935)は次のように訳しています。

「弱き者よ、なんじの名は女」

この言葉は物語から離れて一人歩きして、か弱い女性は守るべきというレディーファーストの精神の文脈で語られたりします。しかしもともとの意味はぜんぜん違います。ハムレットが母親の節操のなさを明らかに非難した言葉です。

坪内逍遥は後にこれをもろき者よ」と修正したりしています。
新潮文庫の『ハムレット』にある福田恆存(Tsuneari Fukuda, 1912-1994)の訳では次のようになっています。

「たわいのない、それが女というものか!」

女性差別的なのが気になりますが、物語の舞台である中世ヨーロッパではそうだったのかもしれません。

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フランスの女優サラ・ベルナール(Sarah Bernhardt, 1844-1923)が演じるハムレット(1880-1885年)
By Lafayette Photo, London, 1880-1885 [Public domain], via Wikimedia Commons

ある日ハムレットは、夜な夜な城壁にあらわれると噂になっていた亡父の亡霊に会い、実は父王の死はクローディアスが毒殺したものだと告げられます。
復讐を誓ったハムレットは狂気を装います。このあたりがハムレットの回りくどいところですが、現王クローディアスに警戒されて殺される恐れがあることからも、仕方ないところだと思います。

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父の亡霊(右)に会うハムレット(中央)(第1幕第4場)
スイスの画家ハインリッヒ・フュースリー(Henry Fuseli, ドイツ語:Heinrich Füssli, 1741-1825)画
Henry Fuseli, 1789 [Public domain], via Wikimedia Commons

ハムレットには美しい恋人がいます。王国の侍従長で王の片腕である宰相ポローニアス(Polonius)の娘、オフィーリア(Ophelia)です。
現王と王妃とポローニアスは、ハムレットの異変は恋愛の悩みだと考えます。そしてポローニアスは娘オフィーリアを通してさぐりを入れることにします。
こうしてオフィーリアがハムレットのもとを訪ねた時に、ハムレットが自問していたのが今日の言葉です。

“To be, or not to be, ― that is the question.”
「生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ。」

英語の原文も日本語訳もとても有名なセリフですよね。原文も古語がまじっていないのでわかりやすいです。

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ドイツの俳優グスタフ・グリュートゲンス(Gustaf Gründgens, 1899-1963)が演じるハムレット(1936年)
Bundesarchiv, Bild 183-S01144, 21 January 1936 [CC-BY-SA-3.0-de], via Wikimedia Commons

僕が大好きな坪内逍遥の訳では次のようになっています。

「世にある、世にあらぬ、それが疑問ぢゃ」

福田恆存の訳は次の通りです。

「生か、死か、それが疑問だ、...」

ハムレットは自殺を考えるほど深く悩んでいたのです。この作品を通して、ハムレットは必要以上に悩んでいます。ネットでは「中二病」などと揶揄されたりもしていますが、状況や彼の立場を考えるとまあ仕方ないところだと思います。

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イギリス出身の俳優ジョン・ネヴィル(John Neville, CM, OBE, 1925-2011)が演じるハムレット(1959年)
By CBS Television (ebay front back), February 6, 1959 [Public domain], via Wikimedia Commons

オフィーリアはハムレットに事情をたずねます。ハムレットはオフィーリアを深く愛していましたが、本心を悟られないためにわざと邪険な態度をとり、ひどい言葉を投げつけます。オフィーリアは驚き悲しみますが それでもハムレットの愛を疑いません。
やがてハムレットは、現王クローディアスが父を暗殺したという確かな証拠をつかみます。しかしハムレットはオフィーリアの父である侍従長のポローニアスが物陰で盗み聞きをしているところを、現王クローディアスだと間違えて殺してしまいます。
父の死を知らされたオフィーリアは正気を失い、花を抱えて宮廷や野原をさまよった末、川で溺れて亡くなります。
悲劇の少女オフィーリアの物語は画家たちの心を動かし、オフィーリアを題材とする絵画が数多く描かれます。

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イギリスの画家ジョン・エヴァレット・ミレー(Sir John Everett Millais, 1829-1896)が描いた『オフィーリア(Ophelia)』(1852年)
John Everett Millais, 1852 [Public domain], via Wikimedia Commons

“To be, or not to be, ― that is the question.”
生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ。

とつぜん父王を失い、王位も母も叔父に奪われて苦悩するハムレット。
叔父の犯行を知り、復讐を誓いながらもなかなか実行できないハムレット。
狂気を装いながらも自ら正気と狂気の狭間に悩み、最愛の恋人すら失ってしまったハムレット。
はたして彼は亡き父のかたきを討つことができるのでしょうか。
それは作品をご覧になって下さい。

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舞台とされるデンマーク・ヘルシンゲル(Helsingør)のクロンボー城(Kronborg Castle)
By Artico2 (Own work), 2007 [CC-BY-SA-3.0 or GFDL], via Wikimedia Commons

それでは今日はこのへんで。
またお会いしましょう! ジム佐伯でした。

【関連記事】第193回:“O Romeo, Romeo! wherefore art thou Romeo?”−「おおロミオ、ロミオ!あなたはどうしてロミオなの?」(ジュリエット), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2014年03月08日
【関連記事】第40回:“Make haste slowly.”―「ゆっくり急げ」(オクタヴィアヌス), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2013年06月16日
【関連記事】第19回:“Mothers are all slightly insane.”―「母親はみんな少しイカレてる」(サリンジャー), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2013年05月11日
【関連記事】第43回:“Rome wasn't built in a day.”―「ローマは一日にしてならず」(ことわざ), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2013年06月22日

【参考】Wikipedia(日本語版英語版
【参考】“「ああ、ロミオ・・・」あの有名なセリフを英語で紹介 たまにはシェークスピアもいかが”, by 森 弘之, All About, ビジネス・学習, 日常英会話/日常英会話アーカイブ, 2004年10月25日
【参考】“『ハムレット』, Hamlet”, by Hiroyuki Todokoro, シェイクスピア戸所研究室, シェイクスピア作品解説

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posted by ジム佐伯 at 07:00 | Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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