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2014年03月01日

第189回:“I’m first? Oh my God!”−「僕が1位?すごい!」(羽生結弦)

こんにちは! ジム佐伯です。
英語の名言・格言やちょっといい言葉、日常会話でよく使う表現などをご紹介しています。

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By Ivanaivanova (Own work), 15 February 2014, cropped by Jim Saeki on 1 March 2013 [CC-BY-SA-3.0], via Wikimedia Commons

第189回の今日はこの言葉です。
“I’m first? Oh my God!”
「僕が1位? すごい!」
といったところでしょうか。
これはソチオリンピックのフィギュアスケート男子で見事金メダルを獲得した羽生結弦(Yuzuru Hanyu, 1994-)の言葉です。金メダルが決まった瞬間、羽生が自ら英語で口にした言葉です。

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羽生結弦(Yuzuru Hanyu, 1994-)
By Luu (Own work) [CC-BY-SA-3.0], via Wikimedia Commons

“Oh my God!”は非常に強い驚きや喜び、あるいは悲しみを表す間投詞です。メールやSNSなどでは“OMG!”とも略されます。
“God”と大文字で始まっているので、抽象的な概念としての一般名詞の「神」でなく、キリスト教の信仰の対象である「天にましますわれらの父(Our Father in heaven)」そのものを表す固有名詞です。
同様に固有名詞としての「神」を表す“Lord”を使った
“Oh, Lord!”
や、「神の子イエス・キリスト」の名前“Jesus Christ”(ーザス・クイストと発音)を使った
“Oh, Jesus!”
にも同じような意味があります。
よく「おぉ、神よ!」と直訳されますが、これではちょっと大げさになってしまいます。
羽生ぐらいの若者が使っているので、「マジかよ!」「すごい!」「ヤバい!」とでも訳しましょうか。
ちょっと品がないように感じられるかもしれませんが、もともと安易に神の名を口にしている言葉です。神への冒涜といったら大げさですが、英語でもあまり上品な表現ではありません。
ここでは羽生のイメージがこわれないように、下品になりすぎない無難な「すごい!」を日本語訳として使ってみました。

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By Jiel Beaumadier (Own work), 31 March 2012 [CC-BY-SA-3.0], via Wikimedia Commons

羽生は宮城県の仙台市に生まれ、4歳でスケートを始めます。
同じリンクで練習していた先輩に、2006年のトリノ五輪で金メダルを獲得した荒川静香(Shizuka Arakawa, 1981-)がいます。
羽生は東北高校と現在在学する早稲田大学でも荒川とは先輩・後輩の関係で、荒川が得意とした上体を大きく反らす大技「イナバウアー(Ina Bauer)」を羽生も演技に取り入れています。
荒川は自身の著書で羽生のことを「チャンスを確実にものにすることができるメンタルの強さ」を持っており、「これまでの日本男子にはいないタイプ」と書いています。

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荒川静香(Shizuka Arakawa, 1981-)
By Top on ice (Own work), 24 April 2009 [GFDL or CC-BY-SA-3.0], via Wikimedia Commons

羽生は7歳の時、2002年のソルトレイク五輪をテレビ観戦し、ロシアのエフゲニー・プルシェンコ(Evgeni Viktorovich Plushenko, ロシア語:Евгений Викторович Плющенко, 1982-)の演技に感動します。それ以来羽生はプルシェンコを心から尊敬し、プルシェンコを目標に練習を重ねます。
髪型をマッシュルームカットにしたのもプルシェンコの真似、ビールマンスピン(Biellmann spin)を演技に取り入れたのもプルシェンコの影響なのだそうです。
一方プルシェンコも、2009年のアイスショーで羽生と初対面した時に、
「僕を倒したら君の時代だよ」
と声をかけます。羽生はこの言葉に感動して、とても励まされたそうです。
プルシェンコは、その後急速に力を伸ばしてきた羽生を高く評価するようになります。
ソチ五輪ではプルシェンコは団体戦でショートプログラム2位、フリー1位の強さを見せてロシア代表チームとして金メダルを獲得します。しかし個人のショートプログラム直前の練習で腰を痛め、残念ながら棄権となり、その後競技から引退することを発表します。
羽生が金メダルをとったことについてインタビューされたプルシェンコはこう語ります。
「私は彼のヒーローだったかもしれないが、今は彼が私のヒーローだ。」

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エフゲニー・プルシェンコ(Evgeni Plushenko, 1982-)
By David W. Carmichael, 29 January 2012 [CC-BY-SA-3.0], via Wikimedia Commons

羽生は喘息(ぜんそく)の持病があり、体力的にはほかの選手にやや劣ると言われています。しかし、手足が長く柔軟で、ジャンプも得意なのが強みです。何よりも荒川静香が指摘しているようにメンタル面でも非常に強いのが特徴です。
2010年の世界ジュニア選手権(ISU World Junior Figure Skating Championships 2010)で、羽生は自己ベストを大きく更新して優勝します。
さらにシニアに上がった翌シーズンの2010年NHK杯で、羽生は4回転トウループを成功させて4位に入ります。初出場した2011年四大陸選手権でも自己ベストを更新して銀メダルを獲得。男子選手として四大陸選手権史上最年少のメダリストになります。

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By deerstop (Own work), 25 November 2011 [CC0], via Wikimedia Commons

そんな矢先でした。2011年3月11日に東日本大震災が発生。地元仙台は大地震と巨大津波に襲われ、大きな被害を受けます。
スケートの練習をしていた羽生はスケート靴を履いたままリンクの外へ避難します。家族やコーチ、スケート仲間は無事でしたが、スケートリンクは被災して営業を停止。羽生自身も避難所生活を送ります。
羽生は一時期、スケートを続けてよいものか悩みます。しかし春のセンバツ甲子園で頑張る東北高校の仲間たちの姿や男子フィギュアスケートの先輩である高橋大輔(Daisuke Takahashi, 1986-)らの励ましにより意欲を取り戻します。

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高橋大輔(Daisuke Takahashi, 1986-)
By David W. Carmichael (http://davecskatingphoto.com/photos_2012_wtt.html), 13 May 2012 [CC-BY-SA-3.0], via Wikimedia Commons

復活した羽生は数々の国際大会に出場し、2011年の4月から練習拠点をカナダのトロントに移します。
トーループとサルコウという2種類の4回転ジャンプを武器に、羽生は大きな大会で次々に高得点や好成績を残します。一時期ケガもしましたが、ほぼ万全の態勢でソチ五輪に臨みます。
ソチオリンピックの男子個人ショートプログラムで、羽生はすばらしい演技を見せます。羽生は4回転トーループやトリプルアクセル、トリプルルッツからトリプルトーループへの3回転-3回転コンビネーションなどを完璧に決め、演技終了後は右拳を高々と突き上げてフィニッシュします。まさに会心の演技です。
そして得点はなんと驚きの100点超え。史上最高得点となる101.45点をマークします。
得点が出た瞬間、羽生は両手のこぶしでガッツポーズをとり、「よっしゃー」と叫びます。

試合後のインタビューで羽生は次のように語ります。

「ホントにうれしいです。」
“I’m over the moon.”
“over the moon”という英訳は、あまりにうれしくて、跳び上がって月を越えるほどだという意味の表現です。

「100点超えはあまり考えていませんでした。」
“I wasn’t trying to clear 100 points.”
とも言います。まさに無欲の勝利です。

Sportivaソチ五輪総集編 (週刊プレイボーイ増刊)
Sportivaソチ五輪総集編 (週刊プレイボーイ増刊)

そして迎えた男子フリー。総合得点でも世界最高が期待されます。
冒頭で羽生は4回転サルコウに失敗して転倒します。日本中が「あーっ!」とがっかりした瞬間です。直後の4回転トーループは成功しますが、3回転フリップで再び転倒。羽生はあきらめずに難易度の高いジャンプや美しいスピンでポイントを重ねますが、誰もが「だめか」と思ったのではないでしょうか。


【動画】“Yuzuru Hanyu's Gold Medal Winning Performance - Men's Figure Skating | Sochi 2014 Winter Olympics (羽生結弦の金メダル獲得演技 - 男子フィギュアスケート | ソチ2014冬季オリンピック)”, by Olympics, YouTube, 2014/03/03

しかしショートプログラムで2位につけていたカナダ代表のパトリック・チャン(Patrick Chan, 1990-)もミスを連発して調子が出ません。
結果として、羽生は見事に金メダルを獲得します。
メダルが決まった瞬間、羽生は驚きの顔でコーチに確認します。

“I’m First? I’m first?”
「僕が1位? 僕が1位?」

“the”が抜けているようにも聞こえますが、細かいことはいいんです。
1位で間違いないことが分かると、羽生は、

“Oh my God! Oh my God! ...”

と何度も繰り返します。
金メダルをとれないと思っていたため、とっさにこの言葉しか出てこなかったのでしょうね。
日本中がこの快挙を喜び、新しい王者となった羽生を祝福します。


【動画】“羽生結弦「勝った!」金メダル確定を確認した瞬間”, by NV06119, YouTube, 2014/02/15

羽生は試合後のインタビューで次のように語ります。

「とても緊張して、とても疲れました」
“I was so nervous and I was so tired.”
「勝って驚きました。うれしいという感情はありません。自分の演技が悔しかったので。」
“I was surprised to win. I was not happy with my program.”

なかなか謙虚な羽生に聞こえます。
でもそれが本当の気持ちだったのでしょう。それだけ高いレベルを目指していたのです。すなわちショートに続いてフリーでも世界最高得点を叩き出し、総合の世界最高得点で優勝することです。

フィギュアスケート日本男子応援ブック2 感動をありがとう!
フィギュアスケート日本男子応援ブック2 感動をありがとう!

羽生は別のインタビューにこうも答えています。

「オリンピックの金メダリストとして、僕は災害復興に何か貢献できると思います。」
“As an Olympic gold medallist … I think I can do something for the recovery from the disaster.”
「これがそのためのスタートなのです。」
“This is the beginning of the goal.”

羽生が東日本大震災の被災者であることは海外でも有名なようです。

サンデー毎日増刊 ソチ冬季オリンピック全記録
サンデー毎日増刊 ソチ冬季オリンピック全記録

“I’m the first? Oh my God!”
僕が1位? すごい!

会心の演技を見せたショートでは素直に喜びを爆発させた羽生ですが、フリーでは納得の演技ができなかったこともあり、金が決まってもどこか信じられないといった表情でした。
しかしプレッシャーを乗り越えて見事に金メダルに輝いたのは素晴らしい成果です。
被災地の方々もどんなに勇気づけられたことでしょう。
この金メダルが本格的な復興の始まりなのです。

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By Ivanaivanova (Own work), 15 February 2014, cropped by Jim Saeki on 1 March 2013 [CC-BY-SA-3.0], via Wikimedia Commons

ソチ五輪熱戦速報号 おめでとう羽生結弦金メダル (NIKKAN SPORTS GRAPH)
ソチ五輪熱戦速報号 おめでとう羽生結弦金メダル

それでは今日はこのへんで。
またお会いしましょう! ジム佐伯でした。

【関連記事】第177回:“Hot. Cool. Yours.” ―「熱く。クールに。みんなの大会。」(ソチオリンピック), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2014年02月10日
【関連記事】第168回:“No one shall sleep.”―「誰も寝てはならぬ」(プッチーニ), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2014年01月26日
【関連記事】第100回:“I dare hope that our paths will cross again.”―「また皆さんとお会いできることを望みます」(高円宮妃久子さま), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2013年09月29日
【関連記事】第78回:“The important thing is to take part.”―「参加することに意義がある」(クーベルタン男爵), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2013年08月22日

【参考】Wikipedia(日本語版英語版
【参考】“Yuzuru Hanyu Breaks 100-Point Mark With Historic Olympics Figure Skating Score (羽生結弦がオリンピック・フィギュアスケートで歴代最高の100点超え)”, by BARRY WILNER, The Huffington Post, 02/13/2014
【参考】“Japan's Yuzuru Hanyu: "I'm over the moon" (日本の羽生結弦「ホントにうれしいです」)”, by Subhankar Mondal, Sports MOLE, February 14, 2014
【参考】“Hanyu halfway to Olympic gold (羽生がオリンピック金メダルへ中間地点)”, by JACK GALLAGHER, The Japan Times, FEB 14, 2014
【参考】“Yuzuru Hanyu of Japan Wins Men’s Figure Skating Gold (日本の羽生結弦が男子フィギュア―スケートで金メダルを獲得)”, By JER? LONGMANFEB, The New York Times, FEB. 14, 2014
【参考】“Japanese earthquake survivors celebrate Yuzuru Hanyu’s figure skating gold (日本の地震の被災者が羽生結弦のフィギュアスケート金メダルを祝福)”, Agence France-Presse, InterAksyon.com, February 15, 2014
【参考】“「oh my God」の意味と使い方”, 英語 with Luke, Luke's スラング辞典, 2011年05月20日

【動画】“Yuzuru Hanyu's Gold Medal Winning Performance - Men's Figure Skating | Sochi 2014 Winter Olympics (羽生結弦の金メダル獲得演技 - 男子フィギュアスケート | ソチ2014冬季オリンピック)”, by Olympics, YouTube, 2014/03/03
【動画】“羽生結弦「勝った!」金メダル確定を確認した瞬間”, by NV06119, YouTube, 2014/02/15



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posted by ジム佐伯 at 07:00 | Comment(0) | スポーツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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