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2013年12月08日

第139回:“The queen of all colors was black.”―「すべての色の女王は黒だった」(ルノワール)

こんにちは! ジム佐伯です。
英語の名言・格言やちょっといい言葉をご紹介しています。

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Pierre-Auguste Renoir, 1874 [Public domain], via Wikimedia Commons

第139回の今日はこの言葉です。
“The queen of all colors was black.”
「すべての色の女王は黒だった。」
これは、フランスの画家ピエール=オーギュスト・ルノワール(Pierre-Auguste Renoir, 1841-1919)の言葉です。
元の言葉はもっと長くて、
“I've been 40 years discovering that the queen of all colors was black.”
「私は40年かけて、すべての色の女王は黒だということを発見し続けてきた。」
となります。
“have been 40 years discovering”は、「40年かけてやっとわかった」ではなく、「40年の間、いつも発見し続けてきた」「思い知らされてきた」というような意味になります。

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ピエール=オーギュスト・ルノワール(Pierre-Auguste Renoir, 1841-1919)
Photo by Unknown, circa 1875 [Public domain], via Wikimedia Commons

ルノワールは昨日もご紹介した印象派(impressionist)の画家として有名です。
パリの画塾でクロード・モネ(Claude Monet, 1840-1926)と知り合い、1874年にモネと仲間の画家たちが私的に開催した展覧会にルノワールも『桟敷』など7点の作品を出品します。この展覧会は後に「第1回印象派展」と呼ばれ、写実主義が主流だった西洋絵画に革命を引き起こす引き金になります。
印象派は、世界を色彩だけの輝きでとらえることを目指し、自然にある虹の七色をあまり混ぜずに筆跡がわかるような筆致で並べるのが特徴です。黒を色彩ではないと考え、パレットから黒を追放した画家も多かったそうです。
しかしルノワールは黒をむしろ積極的に使って、明るい色彩とのコントラストを際立たせる手法をよく使いました。「第1回印象派展」に出展した『桟敷』がそうです。その意味では、ルノワールは印象派がスタートした記念すべき第1回展から既にほかの印象派の作家たちと一線を画していたのです。

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『桟敷』(1874年)ロンドン/コートールド・ギャラリー蔵
Pierre-Auguste Renoir, 1874 [Public domain], via Wikimedia Commons

1876年の第2回印象派展にルノワールは15点を出品します。この時の出品作の一つである『陽光を浴びる裸婦』は今ではルノワールの代表作と言われています。しかし、裸婦の身体の陰影を青や紫の色点で表した印象派的な手法は当時の人々にはまったく理解されず、「腐った肉のようだ」などと酷評されました。

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『陽光を浴びる裸婦』(1875-76年)パリ/オルセー美術館蔵
Pierre-Auguste Renoir, 1875-1876 [Public domain], via Wikimedia Commons

翌1877年の第3回印象派展には22点を出品します。
大作『ムーラン・ド・ラ・ギャレット』にも黒が効果的に使われています。
しかし第4回〜第6回と第8回の印象派展には、ルノワールは出品しませんでした。
光の効果におぼれて形態を見失った印象派の技法に対して、徐々に疑問を持ち始めるのです。作風も色彩だけでなく形態をも重視するものに変わっていきます。
ここからゴッホやゴーギャン、セザンヌやマティスなどと同様に、ポスト印象派の画家として分類されることもまれにあります。
ポスト印象派は、厳密な形態の復活、原始的な題材や激しい色彩の導入などの独自の特徴を生み出し、20世紀美術の先駆けとなりました。

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『ムーラン・ド・ラ・ギャレット』(1876年)パリ/オルセー美術館蔵
Pierre-Auguste Renoir, 1876 [Public domain], via Wikimedia Commons

ルノワールの作品の特徴は3点あると僕は思います。
黒の効果的な使用、暖かく鮮やかな色彩、そして可愛らしい女性たちです。
ルノワールの作品に描かれる女性たちは色が白く、頬が赤く、常にほほ笑みをたたえています。目は黒眼が大きく、ハイライトが入れられてきらきら輝いていることもあります。
印象派からポスト印象派に作風が変化しても、これらの親しみやすい作風は変わりませんでした。
ルノワールの言葉にこういうものがあります。

“To my mind, a picture should be something pleasant, cheerful, and pretty, yes pretty!
 There are too many unpleasant things in life as it is without creating still more of them.”

「私の考えでは、絵は愉快で、元気よく、可愛らしいものであるべきだ。そう、可愛らしく!
 人生には不愉快なものがあまりにも多すぎる。わざわざ造り出して増やすまでもない。」

なるほど。確かにその通りですね。
ルノワールはこうも言っています。

“Why shouldn't art be pretty?
 There are enough unpleasant things in the world.”

「芸術は可愛らしくあるべきでないか。
 世の中には気色悪いものが多すぎる。」

共感共感。多すぎる多すぎる。せめて絵画の中の世界では美しいものを見たいですよね。
でもどちらも同じことを言っていますね。もしかしたら同じフランス語が別々に英訳されたものかもしれません。

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『舟遊びの人々の昼食』(1880-81年)ワシントンD.C./フィリップス・コレクション蔵
Pierre-Auguste Renoir, 1880-81 [Public domain], via Wikimedia Commons

“Color is my day-long obsession.”
色は私に一日中とりついて離れないものだ。

常に色彩の考えが頭から離れなかったモネ。モネは黒をパレットから追放しました。

一方、鮮やかな色彩を肯定しながらも黒の重要性は譲らなかったルノワール。

“The queen of all colors was black.”
すべての色の女王は黒だった。

この言葉に彼の色彩観が凝縮されています。
どちらが正しいということではありませんが、個性がはっきりしていて面白いですね。
まさにルノワールは黒、フランス語で「ノワール(Noir)」の作家なのです。

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『二人の姉妹(テラスにて)』(1881年)シカゴ美術館蔵
Pierre-Auguste Renoir, 1881 [Public domain], via Wikimedia Commons

それでは今日はこのへんで。
またお会いしましょう! ジム佐伯でした。


【動画】“Renoir TRAILER 1 (2013) - French Painter Pierre-Auguste Renoir Movie HD(ルノワール 公式予告編1 (2013) - フランスの画家ピエール・オーギュスト・ルノワール 映画 HD)”, MOVIES Coming Soon, YouTube, 2013/02/04

【関連記事】第138回:“Color is my day-long obsession.”―「私は色に一日中とりつかれている」(クロード・モネ), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2013年12月07日
【関連記事】第126回:“Where do we come from?”―「われわれはどこから来たのか?」(ポール・ゴーギャン), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2013年11月14日
【関連記事】第127回:“I dream my painting and I paint my dream.”―「絵を夢に見て、夢を絵に描く」(ゴッホ), ジム佐伯のEnglish Maxims, 2013年11月16日

【参考】Wikipedia(日本語版英語版

【動画】“Renoir TRAILER 1 (2013) - French Painter Pierre-Auguste Renoir Movie HD(ルノワール 公式予告編1 (2013) - フランスの画家ピエール・オーギュスト・ルノワール 映画 HD)”, MOVIES Coming Soon, YouTube, 2013/02/04

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posted by ジム佐伯 at 07:00 | 美術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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