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2013年06月27日

第46回:“A winner is a dreamer who never gives up.”―「勝者とは決して夢を諦めない人のことだ」(ネルソン・マンデラ)

(本文4107文字、読み終わるまでの目安:10分16秒)


こんにちは! ジム佐伯です。
英語の名言・格言やちょっといい言葉をご紹介しています。

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By White House Photograph Office, Clinton Administration, From the "Public Papers of the Presidents of the United States", 4 July 1993 [Public domain], via Wikimedia Commons

第46回の今日はこの言葉です。
“A winner is a dreamer who never gives up.”
「勝者とは決して諦めない夢想家のことだ。」
というのが直訳ですが、
「勝者とは決して夢を諦めない人のことだ。」
とも言えますね。

これはかつて南アフリカ共和国の大統領だったネルソン・マンデラ(Nelson Mandela, 1918-)の言葉です。
彼は多くの名言を残していますが、僕は希望に満ちあふれたこの言葉が大好きです。
はたして彼はどんな夢を諦めなかったのでしょうか。


『Long Walk to Freedom』, Nelson Mandela, Little, Brown and Company (2008/6/2)

彼は1918年に、南アフリカでも最貧地区のひとつであるトランスカイ(Transkei)にあるムベゾ(Mvezo)村で、テンブ人の首長の子として生まれました。名前はホリシャシャ・マンデラ(Rolihlahla Mandela)でした。「ネルソン」は学校の教師に名付けてもらった英語名だそうです。

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ネルソン・ホリシャシャ・マンデラ(Nelson Rolihlahla Mandela, 1918-)
Attribution: South Africa The Good News , 2008, licensed under the Creative Commons Attribution 2.0 Generic license, via Wikimedia Commons

かつて南アフリカでは政府がアパルトヘイト(Apartheid)と呼ばれる人種隔離政策をとっていました。黒人は白人の下で低賃金で働かされ、強制的に不毛の地に移住させられました。十分な教育も受けられなくなり、選挙権すら剥奪されました。

黒人たちはこれに反発しました。ヨハネスブルクにある大学の法学部に在学していたネルソン・マンデラも1944年にアフリカ民族会議(ANC : African National Congress)に入党します。マンデラはANCの青年同盟(ANC Youth League)を創設して反アパルトヘイト運動に取り組み、5年後にANCの執行部に選ばれ運動を指導します。
また、1952年には黒人として初めて弁護士事務所を開設します。

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若き日のネルソン・マンデラ
Photograph by Unknown, 1937 [Public domain], via Wikimedia Commons

政府は弾圧を強化します。1960年には集会で集まった5,000人を超える群衆に軍が発砲し、69人が死亡し180人が負傷するという悲劇も起こります。(シャープヴィル虐殺事件, Sharpeville massacre, 21 March 1960)

マンデラは1961年に「ウムコント・ウェ・シズウェ(Umkhonto we Sizwe, 民族の槍, 英語ではSpear of the Nation)」という軍事組織を作り、最初の司令官になります。マンデラは弁護士というインテリのエリートでありながら、政府施設に対する爆弾テロも辞さないバリバリの武闘派の闘士だったのです。
この活動でマンデラは1962年に逮捕され、1964年に国家反逆罪として終身刑となります。

この時の裁判での陳述で、マンデラは次のように語ります。

“I have fought against white domination,
 and I have fought against black domination.”

「私は白人による支配に対して闘ってきました。
 また黒人による支配に対しても闘ってきました。」

“I have cherished the ideal of a democratic and free society in which all persons live together in harmony and with equal opportunities.”
「すべての人々が仲良く一緒に平等な機会の下で暮らす、
 民主的で自由な社会という理想を、私は大切にしてきました。」

そして最後にこう締めくくるのです。

“It is an ideal which I hope to live for and to achieve.
 But if needs be, it is an ideal for which I am prepared to die.”

「この理想のために私は生きたいですし、ぜひ達成したいです。
 もし必要ならば、この理想のためなら死ぬ覚悟ができています。」

この瞬間からマンデラは南アフリカの反アパルトヘイト活動の象徴となり、世界中の人種差別反対運動や人権活動の象徴となったのです。
それ以来、彼は27年間を獄中で過ごすことになります。

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ネルソン・マンデラが収監されたロベン島(Robben Island)の監獄
By Paul Mannix, 3 June 2007, originally posted to Flickr.com, licensed under the Creative Commons Attribution-Share Alike 2.0 Generic license, via Wikimedia Commons

国際社会も南アフリカを非難します。国連は1952年以降毎年非難決議を繰り返します。旧宗主国のイギリスも非難を強めたため、南アフリカは大英帝国の旧植民地からなるイギリス連邦(Commonwealth of Nations)から離脱します。
多くの国が経済制裁を加えますが、日本は資源豊かな南アフリカの最大の貿易相手国となります。南アフリカ国内では、有色人種の中で日本人は例外的に「名誉白人(Honorary Whites)」として白人に準じる扱いを受けました。高度成長期で経済最優先だったとはいえ、私たちが忘れてはならない歴史の事実です。

1980年代に入ると、国内各地でますます反対運動が激化していきます。国外でも人種差別非難の声が高まります。しかし当時はまだアメリカのロナルド・レーガン大統領やイギリスのマーガレット・サッチャー首相などの西側諸国の指導者たちにとって、マンデラは単なる反政府テロリストの一人にすぎませんでした。

そこでイギリスのコンサート・オーガナイザーであるトニー・ホリングスワース氏(Tony Hollingsworth)は一計を案じます。マンデラ氏の70歳の誕生日の機会に、彼をテロリストという「犯罪者」ではなく、黒人指導者という「英雄」としてプロデュースしたのです。

1988年6月11日にロンドンのウェンブリー・スタジアム(Wembley Stadium)で開かれた記念コンサートは、スティング(Sting)、ジョージ・マイケル(George Michael)、ユーリズミックス(Eurythmics)、エリック・クラプトン(Eric Clapton)、ホイットニー・ヒューストン(Whitney Houston)、スティービー・ワンダー(Stevie Wonder)などの大スターを含む83人のアーティストが参加します。
このコンサートは11時間以上もテレビ放映され、世界約70か国で5億人以上が視聴します。


【動画】Mandela concert at Wembley 1988 , by Jeff Howarth, YouTube, Feb 17, 2014
ネルソン・マンデラ70歳誕生日コンサート(ロンドン・ウェンブリー・スタジアム、1988年6月11日)にて

これによりマンデラは世界的な英雄となります。完全に風向きが変わったのです。歌にもなった「フリー・ネルソン・マンデラ(Free Nelson Mandela)」というスローガンはいろんな場所で叫ばれます。
南アフリカ政府も、テロリストとしては決して釈放はできませんが、黒人指導者としてならば釈放しやすくなったのです。

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1986年にドイツのベルリンで開催された「フリー・ネルソン・マンデラ」のキャンペーン集会
By Bundesarchiv_Bild_183-1986-0920-016,_Berlin,_Weltgewerkschaftskongress,_Probe_des_Festprogramms.jpg: Senft, Gabriele derivative work: Crisco 1492 [CC-BY-SA-3.0-de (http://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/de/deed.en)], via Wikimedia Commons

1989年に大統領に就任したフレデリック・デクラーク(Frederik Willem de Klerk, 1936-)はこれまでの政府の方針を転換し、獄中のマンデラと対話を持ちます。1990年、政府はANCなどの団体を合法化し、ネルソン・マンデラを釈放します。さらに1991年には国会開会演説でアパルトヘイト政策の廃止を宣言します。

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フレデリック・デクラーク大統領と会談するネルソン・マンデラ(1992年1月)
Copyright World Economic Forum (www.weforum.org), January 1992, licensed under the Creative Commons Attribution-Share Alike 2.0 Generic license, via Wikimedia Commons

1994年4月に全ての人種の国民が参加した総選挙が初めて行われます。そしてANCは歴史的な勝利をおさめ、ネルソン・マンデラが大統領に就任します。憲法が制定され、アパルトヘイトはついに撤廃されます。

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1994年の選挙で投票するネルソン・マンデラ(1994年4月)
By Paul Weinberg (direct donation from Author) [CC-BY-SA-3.0 (http://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0) or GFDL (http://www.gnu.org/copyleft/fdl.html)], via Wikimedia Commons

ネルソン・マンデラはこうも言っています。
“It always seems impossible until it's done.”
「達成するまでそれはいつも不可能に見える。」
彼は不可能に見えたアパルトヘイトの廃止を可能にしたのです。
彼のたどった苦難の道を思うと、私たちが不可能と思っていることも決して不可能ではないでしょう。
そのためには、決して夢を諦めないことが大切なのです。

“Dreamer”というと、ジョン・レノン(John Winston Ono Lennon, MBE, 1940-1980)の『イマジン(Imagine)』(1971)を思い出す方も多いと思います。

“You may say I'm a dreamer
 But I'm not the only one
 I hope someday you'll join us
 And the world will be as one”

「君は僕を夢想家だと言うかもしれない
 でも僕は一人じゃない
 いつか君も僕らと仲間になって
 きっと世界はひとつになる」


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ジョン・レノン(John Lennon, 1940-1980)
By Lennons_by_Jack_Mitchell.jpg: Jack Mitchell derivative work: TheCuriousGnome (Lennons_by_Jack_Mitchell.jpg) [CC-BY-SA-3.0-2.5-2.0-1.0 (http://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0)], via Wikimedia Commons


『イマジン [Limited Edition][CD]』,ジョン・レノン,EMIミュージック・ジャパン(2010/10/6)


【動画】“Imagine - John Lennon (イマジン - ジョン・レノン)”, by NAO7035 , YouTube, 2009/12/05

ネルソン・マンデラを題材とした映画で最も有名なのはクリント・イーストウッド(Clint Eastwood, 1930-)が監督した『インビクタス / 負けざる者たち(Invictus)』(2009年アメリカ)ですね。大統領時代のマンデラと、ラグビー南アフリカ代表チームの奇跡を描いた映画です。この映画ではモーガン・フリーマン(Morgan Freeman, 1937-)がマンデラを演じています。


【動画】"Invictus" - Official Trailer [HD] (『インビクタス / 負けざる者たち』- 公式予告編), by ENTRTNMNT, YouTube, 2009/11/11

また『マンデラの名もなき看守(GOODBYE BAFANA)』(2007年フランス・ドイツ・ベルギー・南アフリカ)では、収監時代のマンデラと白人看守の間に生まれた友情が描かれています。


【動画】Goodbye Bafana Trailer(『マンデラの名もなき看守』- 予告編), by J Barimah, YouTube, 2013/01/18

テレビ映画の『マンデラとデクラーク(Mandela and de Klerk)』(1997年アメリカ)では、マンデラとデクラークの苦悩と希望に満ちた生涯が丁寧に描かれています。シドニー・ポワチエ(Sir Sidney Poitier, 1927-)がマンデラを、マイケル・ケイン(Sir Michael Caine, CBE, 1933-)がデクラークを演じており、二人の名優の共演が見ものです。


【動画】Mandela And Deklerk Trailer 1997(『マンデラとデクラーク』- 予告編), by Video Detective, YouTube, Nov 17, 2014

また、リチャード・アッテンボロー(Richard Samuel Attenborough CBE, 1923-)が監督した『遠い夜明け(Cry Freedom)』(1987年イギリス)では、マンデラと同じようにアパルトヘイトと闘った黒人解放活動家スティーヴ・ビコ(Stephen Bantu "Steve" Biko, 1946-1977)が描かれています。
4本のいずれも、一見に値する作品だと思います。


【動画】CRY FREEDOM (Trailer)(『遠い夜明け』予告編), by eataylan, YouTube, 2008/10/25

“A winner is a dreamer who never gives up.”
勝者とは決して夢を諦めない人のことだ。

彼の人生を考えると、とても重みのある言葉ですね。
僕も決して夢を諦めない人になりたいものです。

1993年、デクラークとマンデラの2人はノーベル平和賞(Nobel Peace Prize)を受賞しました。

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アメリカのバラク・オバマ上院議員(当時)(Barack Hussein Obama, Jr., 1961-)とネルソン・マンデラ(2005年3月)
By David Lee Katz, Special Assistant to Senator Barack Obama (numerous), May 17, 2005 [Public domain], via Wikimedia Commons


【動画】THE STORY OF NELSON MANDELA - BBC NEWS (ネルソン・マンデラの物語 - BBCニュース), by BBC News, YouTube, 2013/12/05

それでは今日はこのへんで。
またお会いしましょう! ジム佐伯でした。

【関連記事】第6回:“Anything one man can imagine, other men can make real.”―「人が想像できることは、必ず人が実現できる」, ジム佐伯のEnglish Maxims, 2013年04月28日
【関連記事】第7回:“If you can dream it, you can do it.”―「夢があればそれは叶う」, ジム佐伯のEnglish Maxims, 2013年04月29日

【参考】Wikipedia(日本語版英語版
【参考】The History Place (TM), Great Speeches Collection
【参考】マンデラ氏をテロリストから英雄に、88年の英コンサート, AFPBB News(2013年06月12日)
【参考】テレビドラマ『Mandela and DeKlerk』(マンデラとデクラーク)でアフリカ英語, ETCマンツーマン英会話

【動画】Mandela concert at Wembley 1988 , by Jeff Howarth, YouTube, Feb 17, 2014
【動画】“Imagine - John Lennon (イマジン - ジョン・レノン)”, by NAO7035 , YouTube, 2009/12/05
【動画】"Invictus" - Official Trailer [HD] (『インビクタス / 負けざる者たち』- 公式予告編), by ENTRTNMNT, YouTube, 2009/11/11
【動画】Goodbye Bafana Trailer(『マンデラの名もなき看守』- 予告編), by J Barimah, YouTube, 2013/01/18
【動画】Mandela And Deklerk Trailer 1997(『マンデラとデクラーク』- 予告編), by Video Detective, YouTube, Nov 17, 2014
【動画】CRY FREEDOM (Trailer)(『遠い夜明け』予告編), by eataylan, YouTube, 2008/10/25
【動画】THE STORY OF NELSON MANDELA - BBC NEWS (ネルソン・マンデラの物語 - BBCニュース), by BBC News, YouTube, 2013/12/05

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posted by ジム佐伯 at 12:00 | Comment(2) | 政治家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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この記事へのコメント
ETCマンツーマン英会話さん、ジム佐伯です。コメントありがとうございます。マンデラ氏の言葉からは知性と勇気が伝わってきますね。彼の不屈の闘争あってこその重みのある言葉だと思います。リンク先の下記記事も拝見しました。僕の記事の参考サイトに追加させていただきます。
コメントとても励みになります。これからもよろしくお願い致します。
http://aoki.com/etc/recommend/post_7964.html
テレビドラマ『Mandela and DeKlerk』(マンデラとデクラーク)でアフリカ英語
Posted by ジム佐伯 at 2014年04月09日 04:52
南アフリカの歴史を勉強中です。マンデラ氏はとても簡潔な言葉で、人の心をつかむ力強いメッセージを発せられるのですね。やはり偉大なリーダーとなるべき方は、言葉の使い方にも長けていらっしゃるのですね。
Posted by ETCマンツーマン英会話 at 2014年04月07日 20:10
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