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2013年06月18日

第41回:“I will have my vengeance, in this life or the next.”―「復讐はこの世かあの世で必ず果たす」(グラディエーター)

(本文5143文字、読み終わるまでの目安:12分51秒)


こんにちは! ジム佐伯です。
英語の名言・格言やちょっといい言葉をご紹介しています。

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By Diliff (Own work), 30 April 2007 [CC-BY-SA-2.5], via Wikimedia Commons

第41回の今日はこの言葉です。
“I will have my vengeance, in this life or the next.”
「復讐はこの世かあの世で必ず果たす。」

これはリドリー・スコット(Sir Ridley Scott, 1937-)が監督した映画『グラディエーター(Gladiator)』(2000年アメリカ)で、ラッセル・クロウ(Russell Crowe, 1964-)演じる剣闘士(グラディエーター)マキシマスが口にする言葉です。マキシマスは、実はローマ軍の将軍マキシマス・デシムス・メレディウス(Maximus Decimus Meridius)でした。どうして将軍が奴隷の身分である剣闘士になってしまったのでしょうか。


グラディエーター [Blu-ray],ジェネオン・ユニバーサル( 2012/04/13)

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ラッセル・クロウ(Russell Crowe, 1964-)
Caroline Bonarde Ucci, October 2005 [GFDL or CC-BY-3.0], via Wikimedia Commons

時代は帝政ローマの中期、五賢帝の最後の皇帝とされる第16代ローマ皇帝マルクス・アウレリウス(Marcus Aurelius Antoninus, 121-180)の治世でした。マルクス・アウレリウスは蛮族への予防戦争として今のドイツにあたるゲルマニア(Germania)に遠征します。映画の冒頭で描かれるマルコマンニ戦争(Marcomannic Wars, 166-180)です。
皇帝の腹心の部下である将軍マキシマスは、自ら騎兵部隊を率いて蛮族を背後から強襲して敵将を討ち取り、勝利を得ました。
記録によるとマルコマンニ戦争は長期戦となり、ローマは国力を疲弊させ、皇帝マルクス・アウレリウス自らも陣中で没しました。

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第16代ローマ皇帝マルクス・アウレリウス・アントニヌス(Marcus Aurelius Antoninus, 121-180)
Bust of Marcus Aurelius in Glyptothek, Munich. Photograph by Bibi Saint-Pol, own work, 2007-02-08 [Public domain], via Wikimedia Commons

皇帝マルクス・アウレリウスの長男である皇太子コモドゥス(Lucius Aurelius Commodus Antoninus, 161-192)は暗愚な人物でした。映画ではホアキン・フェニックス(Joaquin Rafael Phoenix, 1974-)がコモドゥスを見事に演じています。
皇帝は帝国の将来を考え、皇太子コモドゥスではなく、信頼厚いマキシマスに帝位を譲ることを決意します。それを知ったコモドゥスは父親であるマルクス・アウレリウスを暗殺します。このあたり史実とは違いますが、映画ではドラマチックに描かれています。
はからずもコモドゥスの政敵になってしまったマキシマスは捕われ、妻と息子は処刑されました。なんとか脱出したマキシマスですが逃走中に意識を失い、奴隷市場で売られて剣闘士(グラディエーター)になってしまいます。

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第17代ローマ皇帝コモドゥス・アントニヌス(Lucius Aurelius Commodus Antoninus, 161-192)
Roman artwork, Photo by Marie-Lan Nguyen 2006, from Capitoline Museums [Public domain], via Wikimedia Commons

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ホアキン・フェニックス(Joaquin Rafael Phoenix, 1974-)
By Tony Shek, 2005 (http://www.flickr.com/photos/tonyshek/234365579/) [CC-BY-2.0 (http://creativecommons.org/licenses/by/2.0)], via Wikimedia Commons

第17代ローマ皇帝となったコモドゥスは民衆の心をつかむため、禁じられていたローマのコロッセウム(Colosseum, 現代イタリア語でコロッセオ, Colosseo)での剣闘士の剣闘を再会させます。

今でもローマの市内に遺跡が残るコロッセオは紀元75年に建築がはじまり、紀元80年から使用されました。現代の競技場とほぼ同じような構造の観客席と地下構造を持ち、4万5000人の観客を収容できたそうです。東京ドームの収容観客数は公称5万5000人ですが、プロ野球開催時の実数は4万7000人程度といいますから、東京ドームとほぼ同規模のイベント開催能力を持っていたようです。
初期にはローマ水道の水をアリーナに満たして模擬海戦も開催されたらしいです。その後「迫(せり)」という現代の劇場と同じような舞台装置が設置され、地下から猛獣がせり上がってくるという演出もされました。剣闘士の入場のための人力エレベーターなどもあったようです。

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ローマのコロッセオのスタンドとアリーナ
(床面が取り去られているため地下構造が見えている)
By Bjarki Sigursveinsson (Self-photographed), 11 July 2003 [Public domain], via Wikimedia Commons

剣闘士となったマキシマスは持ち前の勇気と頭脳と戦闘能力で連戦連勝、ついにローマのコロッセウムにつれてこられ、皇帝の前で剣闘を行うことになります。かつて共和政ローマと北アフリカの宿敵カルタゴ(Carthage)が戦った第二次ポエニ戦争(Second Punic Wars)におけるザマの戦い(Battle of Zama)の再現です。史実ではローマの若き司令官スキピオ(Publius Cornelius Scipio Africanus Major, 236-183 BC)率いる4万のローマ軍が、カルタゴの名将ハンニバル(Hannibal Barca, 247-183 BC)率いる6万のカルタゴ軍を包囲殲滅してローマ側の勝利となった戦いです。
マキシマスは敗戦側であるカルタゴ軍の役となりますが、演じるといっても負けた場合は死が待っています。マキシマスは味方をよく統率して、ローマ軍を演じた奴隷の戦車騎馬隊を壊滅させます。番狂わせの結果でしたが、観客はマキシマスの見事な戦いぶりに熱狂し、喝采を送ります。


【動画】“>"Gladiator" Trailer (『グラディエーター』予告編”, by Jimmy Pethrus, YouTube, 2010/04/26

それを見ていた皇帝コモドゥスは、直々にマキシマスに声をかけ、名前をたずねます。
“Do you have a name?”
「名はあるか?」
マキシマスは顔まで覆った鉄兜をかぶったまま答えます。
“My name is Gladiator.”
「剣闘士です。」
立ち去ろうとするマキシマスを皇帝コモドゥスは、なおも呼び止めます。
“You will remove your helmet and tell me your name.”
「兜をはずして名を名乗れ。」

マキシマスはついに意を決して兜をとり、振り返って答えるのです。
“My name is Maximus Decimus Meridius,
 commander of the Armies of the North,
 general of the Felix Legions,
 loyal servant to the true emperor, Marcus Aurelius.”

「我が名はマキシマス・デシムス・メレディウス。
 北軍の総指令官。
 フェリキス軍団の将軍。
 真の皇帝マルクス・アウレリアスの忠実なる僕(しもべ)。」

皇帝コモドゥスは驚き動揺しますが、剣闘士マキシマスはさらに続けます。

“Father to a murdered son,
 husband to a murdered wife. 
 And I will have my vengeance...
 in this life or the next.”
「殺されし子の父。
 殺されし妻の夫。
 この復讐は必ず果たす。
 この世か、あるいはあの世で。」

いやー、燃えますね。この映画で一番熱いシーンだと思います。

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Image Copyright Nejron Photo, Used under license from Links Co., Ltd.

“vengeance”とは報復とかあだ討ちという意味もありますが、罰するという意味もあります。

“Heaven's vengeance is slow but sure.”
ということわざにも使われています。
「天罰は遅くとも必ず下る。」
という意味です。
「天網恢恢(てんもうかいかい)疎にして漏らさず。」
という似た意味のことわざもありますね。
これはもともと中国の『魏書』の
「天网恢恢、疏而不漏 (ンワンフイフイ、シューアーーロウ)」
にあった言葉です。
また、『老子』にも、
「天网恢恢、疏而不失 (ンワンフイフイ、シューアーブーシー)」
という言葉があります。結びが「疎にして失わず」になっていますね。意味はほとんど同じです。
発音はいつもながらいいかげんに書いてますのでご了承ください。

話しは変わりますが、英語で7月をあらわす“July”は、ユリウス・カエサルの「ユリウス(Iulius)」が語源です。
また、8月の“August”は、初代ローマ皇帝の尊称「アウグストゥス(Augustus)」から来ています。
それぞれ、カエサルとアウグストゥスが権力の座にあった時に自分の名前をつけたのです。
一方、9月は“September”ですが、“septem”とはラテン語で「7」をあらわす言葉です。
また、10月の“October”“octo”は「8」をあらわす言葉です。8本足の“octopus”はこれが語源です。
同様に、11月の“November”“novem”は「9」をあらわし、12月の“December”“decem”は「10」をあらわします。
9月以降の月の呼び名が語源と2ヶ月ずれていると思いませんか?

僕は、カエサルとアウグストゥス(オクタウィアヌス)が強引に自分の名前の月を割り込ませたため、あとの月が2ヶ月分あとに押しやられたのかと思っていました。しかし真相はちょっと違います。
もともと当時の暦(こよみ)では、一年は今の3月から始まっていたそうなのです。
ですから今の9月は「7番目の月」と呼ばれていたのです。
一年を今の1月から始まるように変えたのが、ほかならぬカエサルなのだそうです。
紀元前45年1月1日から実施されたユリウス暦(Julian calendar)です。ユリウス暦は1,500年以上も使われました。現在使われているのは1582年にユリウス暦を改良して作られたグレゴリオ暦(Gregorian calendar)です。こちらの方はまだ500年も使われていないんですよね。

それにしても月の呼び名に自分の名前つけてしまうとは、すごい権力ですね。

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By Stuart Miles, published on 26 August 2011, FreeDigitalPhotos.net

実はその後も、月の呼び名に自分の名前をつけようとした皇帝がいました。
第5代皇帝のネロ(Nero Claudius Caesar Augustus Germanicus, 37-68)は4月を“Neroneus”(ネロネウス)と名付けました。さすが暴君ネロ。
ネロは戦車競争(chariot racing)が好きだったといいます。
彼は在位中にクーデターにあい、元老院から「国家の敵」決議を受けて逃亡し、自殺しました。

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第5代皇帝ネロ(Nero Claudius Caesar Augustus Germanicus, 37-68)
By shakko (Own work), November 2007 [CC-BY-SA-3.0 (http://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0)], via Wikimedia Commons

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戦車競走の再現(2004年)
By Roland Zumbühl (Picswiss), Arlesheim, 8 August 2004 (Commons:Picswiss project) [GFDL or CC-BY-SA-3.0], via Wikimedia Commons

第11代皇帝ドミティアヌス(Titus Flavius Domitianus, 51-96)は10月を自分の名の“Domitianus”に、11月を“Germanicus”(ゲルマニクス)と名付けました。ゲルマニクスとは第3代皇帝カリグラ(Caligula, 正式名:Gaius Julius Caesar Augustus Germanicus,12-41)のことです。
ドミティアヌスも暴君と言われ、戦車競争や剣闘士競技を愛好したそうです。ローマのコロッセウムは彼の時代に完成しました。あまりの暴虐ぶりに、最後は暗殺されました。なんだかローマの暴君には共通のパターンがあるみたいですね。
また、彼が尊敬したという第3代皇帝カリグラ(Caligula, 正式名:Gaius Julius Caesar Augustus Germanicus,12-41)もまたどうしようもない暴君でした。カリグラは皇帝になってから酒色に耽溺し、常軌を逸した言動をとるようになります。彼も最後は暗殺されました。

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第11代皇帝ドミティアヌス(Titus Flavius Domitianus, 51-96)
Bust of Domitian in Capitoline Museums, Rome. Photograph by Jastrow (2006) [Public domain], via Wikimedia Commons

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第3代皇帝カリグラ(Caligula, 正式名:Gaius Julius Caesar Augustus Germanicus,12-41)
Emperor Caligula, Ny Carlsberg Glyptotek. By Louis le Grand (Own work), March 2007 [GFDL or CC-BY-SA-3.0], via Wikimedia Commons

カリグラもネロもドミティアヌスも、その暴虐ぶりがあまりにひどかったためか、いずれも死後「ダムナティオ・メモリアエ(Damnatio Memoriae)」という処罰を受けています。一切の存在が無かったものとして、あらゆる痕跡を抹消されるのです。「記憶の破壊」「記録抹殺刑」などと言われ、最も厳しい罰則とされたそうです。
記録が抹消されていますから、彼らの支配がどれだけひどかったのかという記録はあまり残っていません。
ただ、彼らが決めた月の呼び名は、決めた皇帝の死後すぐに元に戻されています。当然ですね。

そこで話は第17代皇帝、『グラディエーター』に登場するコモドゥスに戻ります。
コモドゥスはなんと、12ヶ月全部の呼び名を自分の名前や敬称に変えてしまいました。何とも無茶なことをしたものです。
どの月をどう変えたのかはわかりませんが、その頃コモドゥスは「ルキウス・アエリウス・アウレリウス・コモドゥス・アウグストゥス・ヘルクレウス・ロマーヌス・エクスペラトリウス・アマゾニウス・インウィクトクス・フェリクス・ピウス(Lucius Aelius Aurelius Commodus Augustus Herculeus Romanus Exsuperatorius Amazonius Invictus Felix Pius)」という名前を名乗っていたらしいです。何ともウザい名前です。これだけでも12種類あります。“Augustus”が入ってますので、8月はそのままだったのかもしれません。
これだけでもコモドゥスの暴君ぶりがよくわかるエピソードだと思います。
結局コモドゥスは暗殺されました。32歳の時でした。
死後はあの「ダムナティオ・メモリアエ(記録抹殺刑)」が適用され、彼の所業は「無かったこと」にされました。
月の呼び名も当然ながらもとに戻されました。


【動画】“[HD] Gladiator - My name is Maximus Decimus Meridius([高画質]グラディエーター - 我が名はマキシマス・デシムス・メレディウス)”, by stm22, YouTube, 2011/06/16

“I will have my vengeance, in this life or the next.”
復讐はこの世かあの世で必ず果たす。

ひどい皇帝コモドゥスに立ち向かった剣闘士マキシマス。
実在の人物ではないそうですが、何人かモデルはいたようです。
果たして彼は復讐を果たすことができたのでしょうか。
それは映画をご覧になってください。

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By Simon Howden, published on 14 November 2009, FreeDigitalPhotos.net

それでは今日はこのへんで。
またお会いしましょう! ジム佐伯でした。

【関連記事】第39回:“The die is cast.”―「賽は投げられた」, ジム佐伯のEnglish Maxims, 2013年06月15日
【関連記事】第40回:“Make haste slowly.”―「ゆっくり急げ」, ジム佐伯のEnglish Maxims, 2013年06月16日

【参考】Wikipedia(日本語版英語版

【動画】“>"Gladiator" Trailer (『グラディエーター』予告編”, by Jimmy Pethrus, YouTube, 2010/04/26
【動画】“[HD] Gladiator - My name is Maximus Decimus Meridius([高画質]グラディエーター - 我が名はマキシマス・デシムス・メレディウス)”, by stm22, YouTube, 2011/06/16

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posted by ジム佐伯 at 12:00 | Comment(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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